『少年蛍』 最終章【月光に溶けゆくもの】。

話題:自作小説



『少年蛍』

最終章【月光に溶けゆくもの】



【国破レテ、山河アリ】

先ほど書かれた詩の一節に続けて新たにホタルの手で書き足された一節、それは次のようなものであった。


【山河破レテ、心アリ】



書き終えたホタルが口を開く‥

「杜甫は国が滅んでも山や河は残ると云った。でも、彼は其処で終わってしまった。‥僕からしたら、それではまだ不十分なんだ。足りていない…云ってる意味、判るかな?」

「ごめん‥よく解らない」

私は正直に答えた。

しかしホタルは、特に失望した様子もなく話を続けた。

「彼は山や河は残り続けると思っていたみたいだけど…山や河だって、いつかは滅びるんだ。いやそれどころか…星ですら、いつかは寿命を迎えて滅びてしまう事を彼は見逃していた」

私はようやく、少しずつではあるが、ホタルの云わんとする事を理解し始めていた。

「確かに。だけど…杜甫の時代では、星にも寿命があるなんて誰も考え付かなかったと思うな」

私の言葉に、ホタルが小さく頷く。

「判ってる。何も僕は杜甫を責めている訳じゃないんだ。ただ、僕にとって重要だったのは“星が滅んだ後でさえ残り続ける物”で‥僕はそれをずっと探して求めていた。そして‥やはり、それは“心”だと結論したんだ」


「君が云いたいのは“魂”って事なのかな?」

私が尋ねると、ホタルは少し困ったような顔で答えた。

「まあ、そうなるのだろうけど…“魂”って云い方は何だか、やけに大袈裟で自尊心が目に立つ気がして、僕はあまり好まない。それよりは、“心”と云った方が、和らかい感じで僕は好きだ」

「そうかな‥」

「いや、感覚の問題。君が気にする必要はないよ」

ホタルは息を一つ吐いて言葉を続けた。

「正直、僕は…文明や国家なんか、どうなったって構いやしない。まるで興味がない。僕が欲しいのは金輪際そんな物じゃないんだ」

‥なるほど。ホタルが云いたい事は判る。でも‥私は少し違うかも知れない。

「でも…僕らはいま、確かに目の前の文明の中に居て、多くの人たちがその中で必死に生きている。だから‥例え、それが人間が勝手に作り上げた幻想の枠組みで、いつかは消えて無くなる物だとしても‥其処に生きる人たちが、例え刹那の時間であろうとも幸せを感じられる世界であって欲しい‥僕はそんなふうに思う」

云いながらも、私の言葉はきっとホタルをがっかりさせるに違いないと感じていた。しかし、ホタルは逆に微かな笑顔で云った。

「君はそう云うと思っていた」

「えっ?」

「…いや、君ならそう云ってくれるだろうと信じていた」

正直、私は戸惑っていた。

それは、どういう意味なのだろう?

「実はね…」

そう云うホタルの表情は、何時の間にか寂しげなものに変わっていた。

「実はね…僕は生まれつき重い胸の病を抱えていて…幼い頃から、自分が長くは生きられない事を知っていた。少なくとも、大人にはなれないだろう事を。だから、いつしか自然と現実に対する興味を失って行ったのだろうと思う…。目の前にある世界など僕にとって所詮は泡沫。‥僕は、永遠だけを求めていた」

それは、初めてホタルの口から直接語られた彼の真実だった。

恐らく彼の心は、私の考えなど遥か及ばぬところに存在するのだろう。

私は知ったふうな口を利いてしまった事を、少々悔やんでいた。

しかし、ホタルが次に語った言葉は、そんな私の後悔をいともあっさりと引っ繰り返した。

「僕が独りで景色を眺める時‥それはいつも醒めた色をしていた。でも、君が一緒だと‥この虚ろな現実の世界が途端に輝いて鮮やかな色に染まり始める。僕は君と居て初めてこの世界の本当の色や匂い、鼓動を知る事が出来たんだ」

ホタルがそんな事を思っていたなんて、私は全く知らなかった。

「それはたぶん君が、目の前に在る世界を有りの侭に受け入れ、愛していたからなんだと思う‥勿論、僕の事も含めてね。だから、僕にとって君は“今と云う時間を自分が確かに生きている”事を実感させてくれる、とても大切で唯一無二の存在だったんだ…」

私はすっかり言葉を失っていた。

そしてホタルも、それ以上語ろうとはしなかった。

無言の教室に、壁掛け時計の音だけが響き続ける…。

そうしたまま、どれくらいの時が過ぎただろうか…

私は、兼ねてから気になっていた事を思い切って訊ねてみようと思い立った。

「ねぇ、ホタル…一つ訊ねてもいいかな?」

「何だい?」

しかしそれは、どうにも訊ね辛いものだった。それでも自ら賽を投げた手前、ここでやめる訳にはいかない。

「ホタル…君はもう、亡くなってしまったのかい?」

するとホタルは逆に聞き返してきた。

「君は、どう思うんだい?」

私は正直に答えた。「判らない…だから、聞いてるんだ」

しかしホタルは、首を何度も横に振りながら、こんな事を云った。

「そうじゃない、そういう事じゃないんだ。僕が云いたかったのは…“君の中で僕と云う存在はもう消えてしまったのかい?”って…そういう意味なんだ」

窓から差し込む月の光に、僕らの影がゆらゆらと揺れている。

考えて見れば、おかしな質問だった。目の前に居る相手に、亡くなっているかどうかを尋ねるなんて‥。

ホタルは、私が答えるのを待っている。

私はホタルの目を真っ直ぐに見ながら云った。

「そんな訳ないじゃないか。僕の中で君は、ずっと生き続けているよ」

するとホタルは少し頬を崩しながらも、はっきりとした口調で云った。




「なら‥きっと、それが答えなんだ」




それ以上、聞く必要はなかった。

私もホタルと同じく、答えはそれで十分だと感じていた。

「そんな事より‥」

云いながら、ホタルは何故か教室の時計をちらりと見た。
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『少年蛍』 第三章【廃校の教室】。

話題:自作小説


『少年蛍』

第三章【廃校の教室】




水銀灯のぼんやりとした灯りに浮かぶ夜の山道を私は独り歩き始めた。

右手を流れる雫川の仄暗い揺らめきと、外界を遮断するように聳える山林の木立の他に見えるのは、遥か頭上の夜天幕に散りばめられた色とりどりの星々と、その中で一際大きく輝く夏の満月のみである。

やがて、山道の緩やかな登り勾配が途切れた所で左手の雑木林がぽっかりと口を開けた。

その場所こそ、かつて私が通っていた【深月野(みつきの)中学】だった。

校門の前で一つ大きく息を吐いた私は、緊張と懐かしさを胸に学校の敷地内へと静かに足を踏み入れてゆく‥。

校門は、都会の学校で見られるような車輪の付いたレール式の鉄門では無く、誰でも簡単に通り抜けが出来るようになっている。

不用心と云えば不用心だが、時代と場所を考えれば、それはごく自然な形で其処に存在していた。


校門の先には一棟の校舎があり、その向こう側がグランドとなっている。その【深月野中学】唯一の学舎は、私が小学生時分にはまだ木造りの建物だったが、中学に上がる少し前にコンクリートに改築されていた。

16年ぶりに訪れる母校は流石に当時より古びてはいたが、建物の佇まいなどは昔の面影そのままに残っているよう私には思えた。

建物の何処かが特に破損している様子もなく、廃墟のような重苦しく澱んだ空気は微塵も感じられない。むしろ、つい今し方まで生徒たちの元気な姿で賑わってでもいたかのような穏やかな温もりが未だ其処彼処(そこかしこ)に残っているかのよう感じられる。

とても此処が、一年近く前に廃校になった場所とは思えなかった。

校舎の玄関口まで歩を進めた私が、ちらりと腕時計に目をやると‥長短二つの針は現在の時刻が午後七時半を少し回った事を教えていた。

実は道中、私は懐中電灯を持って来なかった事を後悔していたが…いざ、こうして校舎の前に立つと、思いのほか周囲が明るい事が判り、思わずホッと胸を撫で下ろした。


廃校にも関わらず、何故か校舎や敷地内の電灯は未だ煌々とした光を放っていて、その灯りが【深月野中学】全体を夜の闇から静かに浮き立たせている。
もしかすると、学校としては使われなくなった後も、校舎やグランドは何らかの形で利用されているのかも知れない。

兎にも角にも、この明るさは私にとって大きな救いであった。そして、校舎全面に降り注いぐ満月の光が場の明るさを更に増している事も、大きく私を勇気づけていた。

思いの他の明るさに背中を押されて、ゆっくりと玄関の硝子扉を押すと‥どうやら鍵は掛かっていないらしく、四角い鉄枠に縁取られた重い硝子の扉は、私に押されるままギィーと奥側に開いた。


玄関を入って直ぐの所に立ち並ぶ靴入れ箱の小ロッカーを懐かしく横目に見ながら、いよいよ私は校舎の中へと静かに足を踏み入れたのであった…。

コツ‥

コツコツ‥

リノリウムの廊下を踏む冷たく硬い足音が夜の校舎に響き渡り、反響した己の足音が再び自身の耳にフィードバックされるたび、平衡感覚に乱れが生じ、ややもすると自分の足元すら覚束なくなってくる‥。

それにしても、校内の天井灯までもが灯っているのは意外であった。

とは云え、有り難い事は間違いない。

昼間ほどでは無いにしろ、懐中電灯なしでも何とか躓かずに歩ける程度の明るさがあるのは助かる。そのせいか、不思議と怖さはあまり感じないまま進んで行くとやがて左側に階段が現れたので、私は慎重に足元を確かめながらゆっくりと、二階へと続くその階段を上り始めた。

【深月野中学】の校舎は基本的に一階が一年生の教室、二階が二年生、三階が三年生になっていて、それぞれが四つのクラスに分かれている。勿論、その他にも校長室や保健室など各種の特務室がある。

私が向かう先は三階で、その南端には私とホタルが最後に過ごした三年四組の教室があった。

婚約者の加賀村美雪とホタルの話をした時から、何故だか私は、自分は今夜この三年四組の教室に来なければならない、そんな気持ちになっていたのだった。

やがて三階に出た私は、そのまま廊下を右に進んで行く‥

[3ー1]‥

教室の番号が書かれた札を眺めながら、更に先へと向かう。

[3ー2]‥

天井が少し低く感じる他、は全てが昔のまま何も変わらず在るかのようだ。

[3−3]‥

そして‥

私とホタルが過ごした教室‥[3ー4]。

その扉は固く閉ざされていた。

それまでは朧気でしかなかった自分の中の予感が、此処に来て、はっきりとした輪郭を象り始める。

何故なら、いま通って来た他のクラスの扉は全て開け放しになっていたからだ。
この三年四組の扉は私に開けられるのを待っている‥16年ぶりに、再び。

私にはそんな気がしてならなかった。

しかし、此処まで来ていながら私は扉の前で躊躇っていた。

このまま扉を開けずに帰ると云う選択肢も、私には残されている。

すると、天井の蛍光灯が今にも切れそうな感じでチカチカチカと震えるように小刻みな点滅を繰り返し始めた。

扉を開けるのか、それとも引き返すのか…決断の猶予は、もうあまり残されてはいない…チカチカと震える蛍光灯を見ながら、何となく私はそんなふうに感じていた。

やがて、心を決めた私は‥

16年ぶりに三年四組の扉に手を掛けると、あの頃よりは幾らかぎこちない手つきでゆっくりと横に押し開けたのだった…。
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『少年蛍』 第二章【夏の終わりの転校生】。

話題:自作小説


『少年蛍』

第二章【夏の終わりの転校生】。




夕闇の降りて来た川べりの小道で私は思い出したように云った。

「一人だけ‥いたかも知れない」

すると彼女は、不敵な笑みを浮かべて私の腕をポンと軽く叩いた。

「ほらね。私の云った通りでしょう」

「昔の事だからすっかり忘れてた。‥美雪さんに云われて思い出したんだ」

そんなふうに私は、如何にも“たった今それを思い出した”かのような口ぶりで答えたが…それは単なるごまかしで、実は故郷を離れた後もずっと、あの少年の事は心の中に残っていたのだった。


ただ、どうしてもそれを誰かに話す気にはなれなくて‥いや、本当は‥どういう風に話せば良いのか判らなかっただけなのかも知れない。

「‥‥で?」

明らかに彼女は話の続きを聞きたがっていた。

好奇心旺盛なところは間違いなく彼女の大きな魅力の一つだ。そして、一度食い付いたならば容易な事では離れない。

仕方なく私は、記憶の中に佇む古い友人の事を話し始めた。

「友達って云っても…現実、彼と一緒に過ごしたの時間は、僅か一年にも満たないとても短いものだったんだ‥」

「それって、いつ頃の話?」

「中学二年の夏。夏休みが終わって学校が始まった二学期最初の日、彼は私のクラスに転校して来たんだ」

「転校生だったのね‥」


「うん。正直、その時の学校は大変だった」

「え、何で?」

「ほら、此処は見ての通り山の中の小さな村だから‥都会へ出て行く人間は居ても、他から来るなんて滅多にない事だったんだ」

そんな話を続けている内、私達はいつしか雫川に掛かる小さな朱色の橋へと出ていた。

橋には【しずく弁天橋】と書かれている。

雫川を上流に向かって遡った先に【しずく弁財天】と呼ばれる神社があって、恐らくは弁天橋と云う名前も其処から取られた物に違いなかった。

“橋”を“ばし”とは読まずに“はし”と発音するのは、濁点で川の水が濁らないようにと云う、先人たちの洒落っ気も含めた祈りが込められているのが理由であるらしい。

この朱色の【しずく弁天橋】を渡れば、私達の泊まる【月水荘】は、もう目と鼻の先だ。

「なるほど…転校生が来るなんて、此処では大事件だったのね」

「そうなんだ。転校生が来るらしいって噂が朝から学校中に流れてて‥で、妙に興奮してる奴とか逆に冷静なふりして気取り始める奴とか、なんか学校中が変に落ち着きが無い感じで…いま思い出しても本当におかしな空気だった」

苦笑いする私に同調するように、彼女も苦笑いする。

「なんか判る気がする。で、その転校生‥どんな子だったの?」

問題はそこだった。

この話になった時から密かに心の中で考え続けていたのだけれど…やはり、その少年がどういう人間であったかを適切に説明するのは、とても難しい事の様に思えてならなかった。

それでも、ここまで来て何の説明もしない訳にはいかないだろう。

「それを説明するのは凄く難しいんだけど…何て云えば良いのかな…一言で云えば“あんまり人間っぽくない感じの少年”って感じかな」

ああ、我ながら何て下手糞な説明なのだろう。これで納得する人間などいる筈もない。案の定、彼女もと呆気に取られたような顔をしている。

「…何それ?」

彼女の反応はもっともだ。しかし…私は思っていた…どのような説明の仕方をしたとしても“あの少年の本質”からは遥かに遠ざかってしまうに違いないと。いや、遠ざかるだけならば良い。むしろ、自分が拙い言葉で語る事で、あの少年の本質を損ねてしまうのではないかと、私は其れを恐れていたのだった。

そんな想いを知ってか知らずか‥しずく弁天橋の袂で佇む私たちの頬を髪を、夏の終わりの夜風がサァァと優しく撫でて行った‥。

「どう説明したら良いのか判らないけど…透き通るように肌の白い華奢な体躯の少年で、こういう云い方は良くないかも知れないけど、生命力みたいな物をまるで感じさせない子だったんだ」

そう云いながら私は、心の中の彼が少しずつ鮮明な姿で蘇って来るのを感じていた。

「ひょっとして‥何か病気だったとか?」

彼女の言葉は、恐らくは単なる当て図法に違いなかったが…私はそれで、当時、少年に関して或る一つの噂があった事を思い出していた。

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『少年蛍』 第一章【夕闇のしずく】。

話題:自作小説

『少年蛍』

第一章【夕闇のしずく】




「16年ぶり‥かな」

故郷である山あいの小さな村で辛うじて一軒だけ今も営業を続ける旅館【月水荘】から少し離れた川縁(かわべり)の小道で私が歩を止める。

つい十五分程前まで美しい琥珀色に染まっていた夕景のカンバスを、いつしか舞い降りて来た夜のしなやかな指先が、その見えない絵筆で、深い青色へと塗り替え始めていた。


「16年前って事は‥透くんは15歳?」

並んで歩く加賀村美雪も私に倣う形で自然と立ち止まる。彼女は私の婚約者で、私達は来年の春先に結婚する事になっていた。

「うん。父親の仕事の関係で、中学を卒業するのとほぼ同時ぐらいに此処を離れたんだ…。それはそうと、その“透くん”て云うの止めてくれないかな」

苦笑いする私に、彼女は涼しい顔で「だって“透くん”って感じなんだもん」と云うと、あっけらかんとした笑顔を見せた。

「全く‥美雪さんにはかなわないな」

他愛なく笑う私達を見下ろすように鬱蒼と立ち並ぶ林の木々からは、もう夜が始まろうかと云う時分であるのに、未だ夏蝉たちの鳴く声が降り注いでいる。

それはまるで、日の終わりを惜しむかのような、或いは、夏の一日が無情に過ぎ去ろうとするのを必死で食い止めようと、小さな虫たちが儚い抵抗を試みているような‥そんな切々とした響きを持っていているように思えた。

「じゃあ‥それから一度も戻って来てないんだね」

「ああ、一度もない。戻って来たところで家も無いし、見ての通り絵に描いたような田舎だから特にやるような事もないし‥」

「でも、寂しくならなかった?」

「なったよ。離れてすぐの頃はね。でも、新しい生活に慣れる事に精一杯で‥時が経つにつれ、自然と此処の事はあんまり考えなくなったな」

「‥そうだよね。私も転校した事あるから判る。ちょっと寂しい気もするけど、そういうものなのよね」

確かに、彼女の云う通りかも知れない。私は此の美しい自然に囲まれた故郷を愛していたし、忘れた事もなかったけれど、目の前の日々を生きる内に、いつしかそれは心の奧深い場所にしまわれていったのだろう。

「透くんは‥どんな子供だったのかな?」

「えっ?」

思ってもいない質問に私は思わず声を出していた。自分がどんな子供だったのか‥それを自らの口から話すのはちょっと照れ臭い。大人になった自分が時間を越えて子供の自分を眺めているような、何だか今ここに二人の自分が存在しているような‥そんな不思議な感覚に陥ってしまう。

それでも、何とか気を取り直して答える。

「どんな子供って‥そうだな‥多分、口数の少ない大人しい子供だったと思う。クラスメート達は木登りをしたり山肌の斜面を駆け回ったり、真夏なんかは半ズボンのまま川に入ったりして遊んでたけど、私はそういうのよりも、木陰で鳥の鳴き声に耳を済ましたり花を見ながら散歩したりとか、そういう方が好きだった。だから、正直友達もあんまり居なかった」

妙に気恥ずかしくて、少し俯き加減になっている私の顔を、下から覗き込むようにして彼女が云った。

「ふぅん‥なんか、あまりにも想像してた通りでちょっと可笑しいかも」


私はそんなに判りやすい人間なのかな。

「でも、ホッとした。透くんは、子供の頃から今と同じ優しい透くんだったんだなあ‥って思うとなんか嬉しい」

「そう云われると照れ臭いけど‥ありがとう」

彼女が口に手を当てて小さく笑う。

「えっ、何か可笑しい事云ったかな?」


「ううん。そういう素直とこが好きだなあ〜って」

「‥素直なのかな?」

「素直素直。まるで素直な子供を見てるみたい。あ、だから“透くん”って呼びたくなるのかも」


私はそれに対して何と返して良いのか判らず、おもむろに足下の小石を拾うと目の前を流れる川に投げ入れた。

トポン。

すると、まさかそれが合図になった訳でも無いだろうが、川縁の草むらのあちこちで夜の虫たちが鳴き始めた。

日はいつの間にか、闇の匂いのする深い藍色へと変わっていて、道のところどころに立つ古びた水銀灯の薄ぼんやりとした灯りが夜の始まりを照らし出していた‥。
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予告は木を切る(ヘイヘイホー)。

話題:お知らせ


譲二、小金沢、そして皆様…今晩わ♪


「なんも言えねぇ」

「超気持ちいい」


‥でお馴染み、演歌界の五輸全メダリストの北島≡郎です。




    切







余白は木を切る‥

ヘイヘイホーー♪

ヘイヘイホー)

ヘイヘイホーー♪

√平方根♪)


とまあ‥

そのような訳でありまして、本日は軽く【予告】などを。

えーと‥

【覚悟は】今夜より長編をアップしたいと思います【よござんすか?】

本編四章とエピローグの全五章。

これを二日か三日に分けて掲載していこうかなと。

しっとりと落ち着いた内容の話なので、出来れば夜、ベッドの中で読んで頂きたいと考え、記事のアップも夕方から夜にかけて行おうと思っております。

まあコメント等は特に気にせず、気軽にヘイヘイホー♪と楽しんで頂ければ幸いで御座います…。


W浅野登場


Y浅野「取り敢えず読むだしょ?だしょだしょだしょ?」
A浅野「ウゲッ!」

Y浅野「ま、気楽に読んでみそ♪みそみそみそ♪」

A浅野「グハッ!」


W浅野退場



…さあて、困った。

この告知記事はどう締めたら良いんだ?


…仕方ない。こういう時は誰か格言でもパクって終わるか…。

と云う事で格言…


☆☆☆☆☆

『オロナミンCは小さな巨人軍です♪』

☆☆☆☆☆


それ…格言じゃ無いだろ!!( ̄・・ ̄)



それでは…今夜は【第一章】を掲載したいと思います。(*^o^*)
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