『少年蛍』 第一章【夕闇のしずく】。

話題:自作小説

『少年蛍』

第一章【夕闇のしずく】




「16年ぶり‥かな」

故郷である山あいの小さな村で辛うじて一軒だけ今も営業を続ける旅館【月水荘】から少し離れた川縁(かわべり)の小道で私が歩を止める。

つい十五分程前まで美しい琥珀色に染まっていた夕景のカンバスを、いつしか舞い降りて来た夜のしなやかな指先が、その見えない絵筆で、深い青色へと塗り替え始めていた。


「16年前って事は‥透くんは15歳?」

並んで歩く加賀村美雪も私に倣う形で自然と立ち止まる。彼女は私の婚約者で、私達は来年の春先に結婚する事になっていた。

「うん。父親の仕事の関係で、中学を卒業するのとほぼ同時ぐらいに此処を離れたんだ…。それはそうと、その“透くん”て云うの止めてくれないかな」

苦笑いする私に、彼女は涼しい顔で「だって“透くん”って感じなんだもん」と云うと、あっけらかんとした笑顔を見せた。

「全く‥美雪さんにはかなわないな」

他愛なく笑う私達を見下ろすように鬱蒼と立ち並ぶ林の木々からは、もう夜が始まろうかと云う時分であるのに、未だ夏蝉たちの鳴く声が降り注いでいる。

それはまるで、日の終わりを惜しむかのような、或いは、夏の一日が無情に過ぎ去ろうとするのを必死で食い止めようと、小さな虫たちが儚い抵抗を試みているような‥そんな切々とした響きを持っていているように思えた。

「じゃあ‥それから一度も戻って来てないんだね」

「ああ、一度もない。戻って来たところで家も無いし、見ての通り絵に描いたような田舎だから特にやるような事もないし‥」

「でも、寂しくならなかった?」

「なったよ。離れてすぐの頃はね。でも、新しい生活に慣れる事に精一杯で‥時が経つにつれ、自然と此処の事はあんまり考えなくなったな」

「‥そうだよね。私も転校した事あるから判る。ちょっと寂しい気もするけど、そういうものなのよね」

確かに、彼女の云う通りかも知れない。私は此の美しい自然に囲まれた故郷を愛していたし、忘れた事もなかったけれど、目の前の日々を生きる内に、いつしかそれは心の奧深い場所にしまわれていったのだろう。

「透くんは‥どんな子供だったのかな?」

「えっ?」

思ってもいない質問に私は思わず声を出していた。自分がどんな子供だったのか‥それを自らの口から話すのはちょっと照れ臭い。大人になった自分が時間を越えて子供の自分を眺めているような、何だか今ここに二人の自分が存在しているような‥そんな不思議な感覚に陥ってしまう。

それでも、何とか気を取り直して答える。

「どんな子供って‥そうだな‥多分、口数の少ない大人しい子供だったと思う。クラスメート達は木登りをしたり山肌の斜面を駆け回ったり、真夏なんかは半ズボンのまま川に入ったりして遊んでたけど、私はそういうのよりも、木陰で鳥の鳴き声に耳を済ましたり花を見ながら散歩したりとか、そういう方が好きだった。だから、正直友達もあんまり居なかった」

妙に気恥ずかしくて、少し俯き加減になっている私の顔を、下から覗き込むようにして彼女が云った。

「ふぅん‥なんか、あまりにも想像してた通りでちょっと可笑しいかも」


私はそんなに判りやすい人間なのかな。

「でも、ホッとした。透くんは、子供の頃から今と同じ優しい透くんだったんだなあ‥って思うとなんか嬉しい」

「そう云われると照れ臭いけど‥ありがとう」

彼女が口に手を当てて小さく笑う。

「えっ、何か可笑しい事云ったかな?」


「ううん。そういう素直とこが好きだなあ〜って」

「‥素直なのかな?」

「素直素直。まるで素直な子供を見てるみたい。あ、だから“透くん”って呼びたくなるのかも」


私はそれに対して何と返して良いのか判らず、おもむろに足下の小石を拾うと目の前を流れる川に投げ入れた。

トポン。

すると、まさかそれが合図になった訳でも無いだろうが、川縁の草むらのあちこちで夜の虫たちが鳴き始めた。

日はいつの間にか、闇の匂いのする深い藍色へと変わっていて、道のところどころに立つ古びた水銀灯の薄ぼんやりとした灯りが夜の始まりを照らし出していた‥。
more...

予告は木を切る(ヘイヘイホー)。

話題:お知らせ


譲二、小金沢、そして皆様…今晩わ♪


「なんも言えねぇ」

「超気持ちいい」


‥でお馴染み、演歌界の五輸全メダリストの北島≡郎です。




    切







余白は木を切る‥

ヘイヘイホーー♪

ヘイヘイホー)

ヘイヘイホーー♪

√平方根♪)


とまあ‥

そのような訳でありまして、本日は軽く【予告】などを。

えーと‥

【覚悟は】今夜より長編をアップしたいと思います【よござんすか?】

本編四章とエピローグの全五章。

これを二日か三日に分けて掲載していこうかなと。

しっとりと落ち着いた内容の話なので、出来れば夜、ベッドの中で読んで頂きたいと考え、記事のアップも夕方から夜にかけて行おうと思っております。

まあコメント等は特に気にせず、気軽にヘイヘイホー♪と楽しんで頂ければ幸いで御座います…。


W浅野登場


Y浅野「取り敢えず読むだしょ?だしょだしょだしょ?」
A浅野「ウゲッ!」

Y浅野「ま、気楽に読んでみそ♪みそみそみそ♪」

A浅野「グハッ!」


W浅野退場



…さあて、困った。

この告知記事はどう締めたら良いんだ?


…仕方ない。こういう時は誰か格言でもパクって終わるか…。

と云う事で格言…


☆☆☆☆☆

『オロナミンCは小さな巨人軍です♪』

☆☆☆☆☆


それ…格言じゃ無いだろ!!( ̄・・ ̄)



それでは…今夜は【第一章】を掲載したいと思います。(*^o^*)
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