ああ…
貴女はどうして…
自分の顔に、テフロン加工を施そうとするのでしょう?
綺麗な肌が汚れるのが怖いから?
ザッツ乙女心?
でも…
私は思うのです。
汚れたのなら、洗えばいいと。
しかし‥
貴女は云いました。
塵も積もれば山になるの。私の顔に大きなお山が出来てしまうのよ。
アナタは顔に山がある女性の事なんか、好きになれないでしょう?
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第1話:歯 磨けよ!
朝、仕事場の洗面所で、どうやら徹夜残業明けらしい友人が歯を磨いていた。
私「おはようさん」
友人「もはよふぅ‥ごふぁいふぁっ」
こら、歯ブラシを口から抜いて喋りなさい。
しかし友人は、充血した目でゴシゴシと必死に歯を磨き続けていた(注‥目で歯を磨いていた訳ではない)。
歯ブラシを握りしめる手を、これでもかと云うぐらいに強く激しく動かし続ける男の姿は[芸能人は歯が命]そんな古いキャッチコピーを思い出させる。
秋雨に濡れた若草色のジャケットをハンケチで拭いながら私は思った‥
『電動歯ブラシは手を動かさなくても良いんだよ』‥と。
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第2話:パグ。
この前、郊外の道でパグ犬を4頭も連れて散歩しているオバサマに出くわした。
人なつこいパグ犬は、私の姿を見つけると空かさず嬉しそうな顔で寄って来たので、代わる代わるに小さな頭を撫でてやると、どうやら飼い主のオバサマも人好きのする方らしく、色々と私に話しかけてきた。
話自体は全く他愛のない物だったのだが、オバサマの顔は非常に他愛がある…
と云うのは‥オバサマの顔が余りにもパグ犬に似ているのだ。
連れている4頭のパグ犬と見分けが付かない、何処からどう見ても完璧なパグ顔‥いや、もしかしたら此のオバサマは‥人間の言葉を話す二足歩行のパグ犬なのかも知れない。
それぐらいそっくりだったのだ。
危うく私は、4頭のパグ犬を指差しながら「貴女のお子さんですか?」とオバサマに尋ねそうになってしまったが‥‥何とか思い止まった。
やがて、パグ犬親子の去りゆく背中を見送る私に、小さな雨粒が落ち始める。
心地よい冷たさ。
そして、秋雨に濡れながら私は思った…
『余計な事を言わなくて本当に良かった』‥と。
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第3話:水戸黄門が復活する日。
少し前の話題になるが、長年に渡って人々に愛され続けた時代劇[水戸黄門]が、ついにその歴史に幕を閉じる事となった。
確かに時代劇は、制作費も掛かるし、撮影時間も長くなりがちなので、敬遠されてしまうのも仕方ないと云えば仕方ないのかも知れない。
しかし、衣装やセット、時代考証など、時代劇制作のノウハウを失う事は、文化的にも大きな損失で御座ろう‥と、無理やり時代劇口調にしてみるも‥何となく、水戸黄門は、いずれまた復活しそうな気がしてならぬのじゃ。
―花魁登場―
お、其処におるのは菖蒲太夫ではごさらぬか。
何か申したい事があるなら申してみせい。
太夫「では‥失礼して喋らせておくんなんし。五年後、十年後‥はたまた五十年になるやも知れませぬが‥水戸様はいつか必ず戻っておいでなんす。わっちは‥そう信じているのでありんす」
秋雨に打たれながら拙者は思うた…
『五十年後の光圀公を演ずるは“えなりかずき”で間違いなかろう』‥と。
秋の雨に濡れながら、わっちも思ったんでありんす…
『格さんは、R2D2で間違いねぇでありんしょう』‥と。
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ならば、私も云いましょう。
お造りなさい。顔の上に大きな山を造りなさい。
例えそれが富士山より高い塵の山だとしても、私はそれをホッピングで登りましょう。
そして頂上についたなら、胸に手を当て、こう呟くのです…
『毎度お馴染み流浪の番組、タモリ倶楽部でござい‥ます』
【終わり】
ふむ‥
どうやら今日は、早く寝た方が良さそうだ。