合言葉A

 憮然と答える一護に、何か"感づいた"浦原は扇子の陰で、口の端をニヤッと上げた。

「そうスか・・・。それじゃこの[門]、撤去してもよろしいっスね?」

 一護はピタッと動きを止めると、浦原に顔だけ向け

「撤去したら、あんた等だって困るだろ?」

「別に・・・」

「へっ?」

 浦原から返ってきた言葉は、一護が予想もしない言葉だった 。

「いや、だって。それ(門)が無かったら、浦原さん達だって[屍尸界]に
行けないんじゃ・・・」

 焦る一護に浦原は涼し気な顔しながら

「別に行けますけど・・・」

 サラッと応えると、わざとマシメ腐った顔をし

「何か勘違いしているようですが、我々が[屍尸界]に行けなくなったのは藍染サンの"奸計"の為・・・。[無罪放免]となった今、これ(斬魄刀)さえあれば、好きな(場)所から[屍尸界]に行けるんスよ(無くても行けるし)」

 そう言うと[紅姫]をチラッと一護に見せつけた。

「つまり、この[門]は、アタシに言わせれば、黒崎さサンの為たけにあるんですよ!はっきり言って私に言わせると[無用の寵物]でしかないんです!」

 浦原は[門]の柱をベシベシッ叩くと

「今、これ(門)を使(用)ってるのは、黒崎さサンだけ"なんっス! 黒崎サンが使(用)わないんでしたら、 邪魔なので片付けさせてもらいますよ。・・・そうすれば新しい[(研究)施設]が、ここに作れますし・・・、構いませんっスよね、黒崎サン・・・」

 浦原はねぶる様に一護を見た。

「ぐっ・・・」

 一護は言葉に詰まった。

「それでは、サッサと片付け(破壊)させてもらいましょうか・・・」

 浦原は空(天井)を見上げ

「鉄裁さーん!ジン太、雨ーっ!降りて来て少し手伝ってくださーいっ・・・」

「わーっ!!待て、待て・・・」

 慌てて浦原を呼び止めると、浦原はコロッと嬉しそうに

「それでは[ベンチテスト]手伝ってくれまっすか?」

「・・・いや、それは・・・・」

(こんな恥ずかしい台詞(合言葉)、死んでも言えるかーっ!)

 一護は握り潰した書状を更に強く握り潰した。

「そうっスか・・・」

 浦原は冷めた目て一護を見ると、呼ばれて降りてきた三人に向かい、柱をパンパン叩き

「これ(門)撤去しますから、バラバラに(破壊)するの手伝って下さい・・・」

 三人は 戸惑いの表情を浮かべると一護をチラッと一応見た。

「何をしてるんスっか?これ(門)は必要なくなったんっす・・・。サッ、片付けますよ・・・」

合言葉@

 その日一護は、勉強部屋(浦原商店地下)にいた。

「俺に用って・・・、何だよ?俺、一応これでも[受験生]なんだけど・・・]

 一護は面倒臭そうに応えた。

「済ませんね。今、[技術開発局]と合同で(主に阿近と)[穿界門]の強化をはかってまして、それで[屍尸界]に繋ぐ全ての[門]が対象でしてね・・・。勿論この[門]もなんっス・・・」

 浦原は[屍尸界]に"表門"とリンクさせてる門の柱をそっと触れた。

「へーっ。そうなんだ・・・」

 一護は感心するかのように応えた。

「それで・・・?何で俺が呼ばれたんだ・・・」

 浦原の方に向き、不思議そうに訊いた。

「ああっ・・・、まだ[試作]段階なんすっけど、黒崎さんに[ベンチテスト]を手伝ってもらうと思いましてね・・・。よろしいですか?」

「構わなねーよ」

 一護にして見れば、色々と世話になってる(一護にしてみれば、半分は[迷惑]をかけられているので、イーブンだと思ってる)ので 二つ返事で OKをした。

「それで?何が変(化)わったんだ・・・」

[門]を見上げた一護は、差ほど変わってないと思った。

「[音声形式]で、"合言葉"を言わないと[通過]できないようになってます・・・」

「へーっ・・・」

 興味が有るのか無いのか、一護は口先で返事をした。

「それで[ベンチテスト]って、何をすれば?」

「あっ、はい・・・。黒崎サンの[声音]を入力(勝手に)してますンで[合言葉]を言って、彼方(屍尸界)に通過できるかをしてもらえばいいっス・・・」

 一護は「そんな程度か・・・」と安堵した。

「それで?[合言葉]って・・・」

「はい。丁度そのこと(ベンチテスト)を知った朽木サンが、黒崎サンにピッタリな[合言葉]を考えてくれたっす・・・」

「ルキアが・・・?」

 一護の眉根がぐっと深くなった。

「こちらに[合言葉]の書かれた[書状]があります。・・・"本物"ですし、勿論"、中身は(確)認ていません ので・・・」

 予約すれば、すり替えも出来るし確認しようと思えば出来るっていう意味である。
 一護は書状を受けとると
[黒崎一護]と手書きで書かれ、 [十三番隊の隊花]が片隅に印紙され いた。
 文字からは、ルキアの
[僅少霊圧]を感じると眉間の皺は緩み、笑みを溢した。
 一護は書状を開くと、中には"例の如く"「楽しく解読せよ」と書かれた文字と、ヒントのイラストが描かれていた。

(何だよ。この瓢箪みたいな黄色ものは?ヤコロか?それに、この赤いヒラヒラしているの・・・。ハッ! 落ち葉か?・・・ってことは秋ってことか。それじゃ、この黄色瓢箪みたいな
のは・・・、[洋梨]かっ!つまり[よ]と[う]を無しにするってことかーっ・・・)

 一護はじっと見つめると
徐々に文字が浮かび上がってきた瞬間、一護の頭上にドーンッと重たいものが空がら落ちてきたように項垂れた。
 マンガだと縦簾が背景に描かれているはずだ。

「フッ・・・」

 一護は自嘲すると、書状をグシャッと握り締めた。
 透かさず浦原に背中を見せ、サッサッと歩きだし空中から延びている梯子に手をかけた。

「・・・ち、ちょっと・・・!何処に行くんスか・・・?」

 浦原は慌てて一護を呼び止めると

「帰るんだよ。アホらしくて付き合ってられるかっ!」
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2022年11月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30