話題:恥ずかしい話
本当はこの話、かの有名な科学誌【ネイチャー】に寄稿する予定だったのですが…
寝呆けていたせいか、ついうっかりと【アートネイチャー】の方に原稿を送ってしまいまして…
そうしたら、「フサフサな方はご遠慮ください」と即効で突き返されたので、仕方なくブログの方に投稿しようと思います。
なに、そんな堅苦しい話ではありません…
私が小学校五年生だった時、“図書室の大移動”という極めて大規模な校内改装がありまして、一年から六年までの選らばれた生徒達が、“全蔵書の移し変え”という…恐らくは人生初の【懲役刑】に従事する事になったのです。
もちろん私は、本に触れるのが大好きでありましたから、自ら進んで【懲役】に志願したのでありますが…いやはや、これが思ったより大変でなかなか移しかえの作業が終わらない。
それで、一度に運ぶ冊数を増やそうという事になったのですが…
この年代というのは、詰まらぬ事に燃えるもので、(アイツが10冊運ぶなら俺は11冊運んでやろう)などと、いつしか運ぶ本の高さを競い合うようになって行ったのでした。中でも、私を含む数名の“下らぬ事に限って負けず嫌いなやつ”達の競争はどんどんエスカレートして行ったのです。
その後も高さ競争は止まる事を知らず、それはあたかも、バベルの塔の逸話を示唆した黙示録的光景であるかのようでした。
そんな最中、私が“わんこ蕎麦のチャンピオンが重ねた茶碗”の如き高さの本を運んでいると、突如として何やら嫌な感触に襲われたのです。
見れば積み重ねた本がグラッと傾き、今にも崩れそうになっているではありませんか!
折しも運悪く、目の前には一年生達がいます。ここは上級生として恥ずかしい姿を見せる訳にはいきません!
幸い、崩れそうになっているのは最上部の二冊のみ。
これなら、一瞬、片方の手を離してササッと元に戻せば何とかなるでしょう。そうなれば、その素早い対応に、逆に一年生達の尊敬を得られるかもしれません!
(うわぁ!僕らも五年生になったら、こんな“夢想流居合い術”みたいな事が出来るようになるんだ〜!)
ピンチこそ最大のチャンスなり!
私はスカイフィッシュ並みの素早さをもって、崩れそうな最上部に手を伸ばしました。
しかし…
私は間違えていたのです。
この状態を静止画として考えるならば、確かに私の方法でも通用していたでしょう。
ところが、この世の事象は刻一刻と変化しています。私はその事を忘れていたのです。
崩れそうになっているという事は、目には見えなくとも、内部的に“崩れる方向に向かっての力作用”が働いている事になります。
つまり、ここは【仕事算】ではなく【ニュートン算】で考えるべきだったのです。
静止状態なら【仕事算】でも良かった。
しかし…