ってことで、話を一本。




「…う…グッ…」
阿散井恋次は一言呻くとバシッと勢いよく引き戸を閉めた。
そしてスーハーと深呼吸をすると、鼻と口を押さえ再び引き戸をガラッと開けた。
僅かに漏れてくる異臭に眉をしかめた。
そして目の前の光景にうんざりした。
目の前の光景とは、乱雑に散らばるゴミや、隅に山になってる洗濯してない衣類など、異臭の元は下帯(ふんどし)やら、洗い忘れの食べ残しが腐った臭いである。
恋次はハァァァッと深い溜め息を吐いた。
(ヤベェーな…この汚さ…。ここ最近忙しくて、帰れてないからな…)
そう、ここは恋次が借りてる借家なのだが、忙しさにかまけて掃除ができてないのだ。
まあ、何時もこんな感じなのだが、たまに見かねたルキアや恋次をリスペクトしている理吉が掃除をしてくれたりする。
今回はルキアも理吉も忙しいので、見にこれていないようだ。
理吉は
『オレっ恋次さん尊敬してるから、全然掃除するっす…』
と目を輝かせ、嬉々として掃除をしてくれるが、問題はルキアだ。
必ずブツブツと小言を言う。
『もっと兄様を見ならって[整理整頓]をしろ』とか、『一護ですら、部屋は綺麗にしているぞ…』
とか、余計なお世話だと思った。
勿論、六番隊の副隊長室は白哉の手前、綺麗に[整理整頓]はしている。
恋次は、勝手知ったる我が家に、草履も脱がず、土足でドカドカと上がると奥に進んだ。
その途中にある洗濯の山を見ない振りをして
(今日…、早く帰って掃除をしよう…)
と心の中で誓った。
恋次は奥の襖をを開けると、ガクッと項垂れた。
この部屋は、恋次が書斎として使用しているのだが、こちらは更に酷い。