なんだか久しぶりなこの二人。高校生河合君と松尾先生のシリーズです。
chocolate cosmosの続き。待ってた人がいたらもうしわけないです…><
先生目線でシリアスめです。
では以下よりどうぞ〜
恋はもうしないつもりだった。
私の好きな人はいつも目の前からいなくなるから。
『4月から君の近くには居られない』そう言ってすぐのこと。
目の前の教え子は何も言わずにソファーから立ち上がって一言。
「さようなら、『先生』」
[chocolate cosmos-b]
「待って!待ってよ!」
「……」
叫んでも、彼はどんどん玄関へ歩き出してしまう。
何でだよ。
もっと怒って、問い詰めたらいい。
『なんで今まで黙ってたんだ』って言ったらいいんだ。
それか、時々君がやるように、殴ったりチョップしたり…痛いけど、まだそっちの方がいいよ。
「待って、もう少し話を…」
「もう話すことはないでしょう」
「そんな、」
「…ココアごちそうさまでした。では失礼します、『先生』」
私は『先生』だけど…この少年にそう呼ばれるたび、ビクビクしてた。
なんでだろう?ってずっと思ってたけど、今になってやっと分かった。
私と彼の関係が『先生』と『教え子』でしか無いと、思い知らされるから。
彼の言う『先生』は本心じゃないことを知っているから。
…おかしいな。その関係を保ちたかったのは私の方だったはずなのに。
告白を聞いて彼の想いを知っても素直に答えなかったのもその為だったんだ。
でもね、
『どうか逃げないでください、芭蕉さん』
1年前の茜空の下、君がぶつけてきた言葉。
時々思い出しては、シクシクと痛む。
この言葉で私は、少しずつちゃんと向き合うことに決めたんだ。
だから…敢えてこの言葉を使うことにする。
「逃げるなよ、曽良君!」
「……!」
足を止めることに成功したようだ。
コンマ数秒の隙をついて、
後ろから近づいて、両腕を彼のお腹に回した。
「……」
曽良君がどんな顔をしてるのかはここからは分からない。
少しは驚いたり困ったりしてるのかな、それとも怒ってるのかな。
「私が言うことじゃ、ないかもしれないけど…」
「……何ですか」
多分私は今すごく変な顔になってると思う。
泣きたいけど、なんとか我慢してる。
…抱きしめたのは、彼が1年生の時以来だ。あの時は向き合ってたっけ。
当時は彼を救けようとしてたけど、今は違う。救けたいのは自分自身だ。知ってる。
「行かないで、曽良君。お願い、行くなよ。逃げるなって言ったのは君だろ。ねえ、曽良君」
「芭蕉さん、」
「おかしなこと言ってるのは分かってるよ。今は離れたくないんだよ、行くなよ、曽良君のバカ…チクショー…」
「わかったから、落ち着いてください」
子供みたいに喚く私を、この教え子はどう思ってるんだろう。
それでも好きだって言ってくれる?
とても小さな声で、大きくなった背中に呟く。
「…好きだよ、曽良君。君が好き」
結局我慢できなくて、私はわんわんと泣いてしまった。
・
・
・
男の泣き声に混じる、少年の言葉。
「行こうとするのはそっちじゃないですか…バカジジイ」
相手に届くか届かないか、ギリギリの声量。
「仕方ないから、ここにいてあげますよ」
想い人を手放す気の無い少年は、静かに目を閉じて…男の告白を頭の中で反芻していた。
end.
・・・・
3年目にしてようやく告白。
卒業まで待てなかったのは先生も同じだったようです。
とりあえずこのタイトルの話は終わり。長くなりました…
これが恋なのかどうか分かりませんが、二人は終わらずに済んだようです。
ここから卒業に向けて頑張って書いていきます。
そろそろブログに載せた文整理しようと思います…だいぶたまってきました(^^;)