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存在しない本を手に入れる

書店にて
水都あくあ『白い奇跡が舞う夜の 文庫版』を見つける。
表紙はシンプルで、白に銀のラインで描かれたトナカイの角を持つ少女。

これはかつてフラワーコミックスから刊行されていた『ゆめゆめ煌々堂』という作品の文庫版。
文庫版ということで頁数が増えており、単行本未収録の同シリーズ作品も補填されたある種の完全版になっている。
表題作も未収録作品のひとつ。

これはもう
買うしか
ないじゃない!

最初はそこで気がついた。
(あれっ なんか)

でも大丈夫、と気を取り直してレジに向かう。その途中でまた。
(うそうそ まさか)

この喜びの前にそんなことはあってはならない。
でも、やっぱり、これはどう考えても

………夢なのでは?


案の定、そこで目が覚めた。
ひさびさに夢だと知ってがっかりする夢を見てしまった。

そんなこんなも昨日『ゆめゆめ煌々堂』を買ってしまったからなのだろうか。


小学生のころから、好きな作家に水都あくあという人物がいる。
ものすごい作品を描くひとではないし具体的に何がどう好きなのかと言われると困ってしまう(おい)けど好き。

たぶん一番は絵柄で、こるん(ころんではなくこるん)とした瞳の描きかたが好き。
話はわりとどれもパターン化されていて、だいたいの作品が
・天然ポジティブ主人公
・不思議かわいい世界観(とマスコット)
・ミステリアスな中性的脇役
という要素で説明できてしまう。

基本のパターンはあるんだけどそれでずっと描けているのだしその要素がほかと違う独自の魅力を放っていていいと思う。

最近になって(私が)単行本を全部集めようキャンペーンを行っているのだが、めぐりめぐって昨日『ゆめゆめ』を入手するはこびとなった。

上記でパターンについて述べたが、この作品は珍しく趣向を変えたものになっている。
主人公は不思議な商品ばかり扱う店、『煌々堂』のオーナー・凛。
ふだんなら脇役に置かれるような、中性的でミステリアスなキャラとして描かれる。
その雰囲気とあいまってだろうか。作中の世界も明るいなりに、どこかふだんよりも落ち着いた、神秘的な雰囲気を内包している。

話は不思議な店「煌々堂」に訪れる客人たち、つまりゲスト主人公の視点を用いて進められ、凛の思考がつまびらかにされることはほとんどない。
しかも「大切なものと引き換えにどんな願いでも叶う」という重めの設定が基軸にあるため、どの短編も水都作品にしてはわりとシリアスでドラマティックな展開を持つ。

もちろんそこは水都作品であり少女漫画でもあるため重厚とまではいかずに終わるのだが、いつもと違う雰囲気が新鮮でとてもよかった。
こういうのももっと描けばいいのに〜。

作者としては二冊目を出したいのだがまだその機会には恵まれていないようだ。
私としてもぜひ読みたいです

ちなみに水都さんは代表作に『ミルククラウン』シリーズと『ALMIGHTY×10』がある。実際この二作品は作者らしさも面白さも他よりは抜きでていると思う(ふたつともドラマCDになってます)。
『ALMIGHTY×10』が出たとき、これはミルクラ(ミルククラウン)シリーズを越えるのでは!?と思っていたのに急に終わってしまって残念だった。とくに何ヵ所か気になる伏線があったから余計に。
『ミルククラウン』もタイトルの意味という最大の伏線が回収されないまま終わってしまったのだが、のちに『Qティング』という別の漫画(というか姉妹作)でさらりと明かされていて感慨深いものがあった。


たぶんこの『ゆめゆめ煌々堂』も同じくらいの指示はあったはず……はず。なので、いつか二冊目もしくは完全版が読みたいけど……。


水都作品全レビューとかしたいですね


今日けっこう洒落にならない夢ばかり見て一番怖かったのが髪の毛が傷んで白髪の束ができてそれがさらに傷んで緑とピンクになるっていうもの
夢でよかった本当に




夢のなかの本にはオビまでついてました
白い奇跡が舞う夜の、は実際にある短編です。単行本には未収録。

ない本が夢にあらわれるっていうやや不思議な体験ができたのでよいです
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