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昴の君に会う

こっちに戻ってきてから、たまに懐かしい人と再会することがある。

今日は仕事中に突然下の名前で呼ばれて、顔をあげると叔母と従姉とその子どもたちがいて驚いた。
いろいろあって私は親戚づきあいをあまりしていないので年が明けてから初めて会う。というか祖母の葬儀以来だから三年ぶりだろうか。
(ちなみに前回のときは十数年ぶりの再会だった)

長く会ってはいないけど、会いたくないと思ったことはない。
母から親戚たちの話を聞くのが小さい頃から楽しくて仕方なかった。

というわけで会えてよかった。
嬉しかった。


その後、またまた懐かしい人が現れた。
あまりにびっくりして、今度は自分から声をかける。高校時代の先生だった。
担任ではないし、受け持ちの教科もなかったのだけど、縁あって当時はお世話になっていた方。

「あの……私、○○高校の卒業生なんです」
「ああ……いた……ような気はするが思い出せない……」
「いいんです、先生はたぶんおぼえてないだろうけど……」
「うーん……」

「先生、『昴』を歌ってくれたんです!」


よりにもよってなぜその思い出を?

もっと他にあったはずだ……そう、

・面接練習に付き合ってもらったとき、本をよく読みます、好きな作家は京極夏彦です。って言ったら「高校生にもなって京極夏彦かよ」って言われて教室で泣いたこととか!
・県外に進学する不安を相談したら、「僕の家は転勤族で、小さいころ転校ばかりしていました。でも、大丈夫ですよ」って励ましてもらったこととか!


それなのにどうして(いや京極の件はちょっとアウトかな)昴のことをまっさきに口にしてしまったのか自分でも疑問だが、でもそれがいちばん思い出深かったのだろう。
この先生こんなことしてくれるんだという衝撃があったから余計に。

「え?」
丸い目がさらにくるんとなっている。
それはそうでしょ。
「そうですか……まあ、そういうことも、あったんでしょう」
「……ありました」

そして昴の君は去っていった。


出会った当初は飄々として冷たそうな印象があったけど、近づいてみれば面白くあたたかい人だった。当時どういう経緯で昴を歌ってくれることになったのかよく思い出せないが、たぶん友達と突撃インタビューのようなものをしたときのことだったように思う。
廊下に美声が響いて、ほんとうにびっくりしたのだ。



京極の件は、当時はものすごく腹が立ったが、いま思えば言わんとするところはわかる。別にその嗜好を馬鹿にされたわけではないということも。

場合によっては好きなものを好きって言えない場面もあるんだな、と高校生なりにわきまえを覚えさせられた事件だった。


覚えているのはどうでもいいかけがえのないことばかり。

先生が私のことを覚えていなくてもかまわない。






私もまた、先生の名前を思い出すことができなかったから。


卒業アルバムを開けばわかるけど、いまもわざと開いていない。


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