スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

図書室に閉じ籠る

今年最初の休みをもらう。
でものんびり寝ている暇はなく、習い事の練習初めにむかう。

暗い雨が朝から降っていた。


到着したとたん、懐かしい顔にすれ違う。小学生の頃から知っている同い年の男の子だ。学校や教室は違えど昔から同じ習い事をしていて、大会でもよく会っていた。いわば小さい頃のライバルだ。
最後に会ったのが三年前。そのときのことはよく覚えている。とても。


練習は楽しかった。めんどくさいときもあるけど結局好きなんだと実感する。
午前で終わるからそのあとは適当に汗を洗い流して遅い初詣にでも行こうかなと考えていたが、先生に声をかけてもらってご飯をご一緒することになる。その子もふくめて。

久しぶりに会うのではじめはぎこちなく敬語まじりで会話していたけど段々(努めて)普通に話す。ついでに尋ねてみた。
「前会ったときに話したこと覚えてる?」
「覚えてるよ」
「話したことは覚えてるんだけど、どういう内容を話したかは思い出せない」
「けっこー衝撃的だったよ」
そうなのか。
「だから香川には帰ってこないかと思ってたし、驚いてる」
それを聞いてこっちがびっくりする。そんなふうに思ってたの。
「帰ってきたよ」

何を話したの?と先生に聞かれる。
「告白したとか?」
ちがいますよ、と笑ってしまった。
そんなことじゃないのだ。
恋愛とかではない。もう少しシリアスなことだった。
けど、とりあえず
「じゃあそういうことで」と流される。
そういうかわしかたもできるのね、きみは。と複雑な感心をした。

その席で、お世話になっていた別の先生が亡くなっていたことを知る。一年以上、私は何も知らなかった。


昼食後、わけあってそのメンバーである高校の図書室にお邪魔する。初めて入る学校だったけどやっぱり図書室というものはとてもいい場所だと思う。

その子と色々と話をした。彼の恋人のことを聞いたり、結婚の話にもなって、結婚の話なんかする歳になったとはと二人でしばし感慨にふけった。初めて会ったの小学生だしね。

「彼氏は?」
「………いません(……何で二日連続で彼氏の有無を答えなくてはいけないのだろう………)……」

この歳だとやっぱり本来はいるべきかな、とぼやく。
「いいんじゃない。そのうちできるよ」
「そうかな」

ベストの回答ではあるけど、そう言われたらそうかなと思える。ほっとするというか。

その子は途中で帰ったけど私は居残りをして結局日が暮れるまで図書室に閉じ籠っていた。少しも苦にならない。泊まっていきたいほど居心地がよかった。


図書館と本屋は違うし、
図書館と図書室もまた違う。
たぶん私は図書館よりは図書室が好きでそれと同じくらい本屋も好きなんだと思う。


こちらに帰ってきた理由はいろいろあるけどうまくまとめられたら、今度その子に話してみたい。



帰り道、亡くなっていた先生のことを思う。
どうしてそんな大切なことを私は知らなかったのだろう。


楽しかったことは楽しいし、
悲しいと思ったことはそのまま悲しい。
悲しいから楽しかったことがなくなるわけではないしその逆もない。
気持ちにそんな簡単に折り合いはつけられないんだと考えながら帰宅した。




図書室でものを口にするのはとてもいけないことのような気がする。けど、誘惑はある。
前の記事へ 次の記事へ