去年書いた蓮華
『初夏の花』のパラレル版です。
テーマは同じですが、違う雰囲気になりました。暗いです。
穏やかに過ごせない二人の話。真田目線。
中途半端なところで終わってます^^;
花の形が女のドレスに見える。
そう蓮二に言ったら、無言で腕を引っ張られ、俺は花から離された。
俺達が見ていたのはツツジという花。鮮やかな赤、白、桃色の花々が並んでいた。
「嫉妬か、蓮二?」
からかうように言ってみたが、何も返してこなかった。
引っ張られて、店に戻ってきた。
今日は休みにしていたので、当然誰もいない。
店内に入った後、店主である蓮二は入り口に鍵をかけて、本が並ぶ棚の前に連れていく。
「いつまで掴むつもりだ!」
さすがにずっと掴まれていると痛い…と思ったら、ようやく離してくれた。
しかし。
「…逃がさないつもりか」
俺と似た体格の男が、正面に立ち、俺の後ろの本棚に手を押し付けている。
下を向いている男の表情は、こちらからは伺えず。
お互いに何も言わないまま、時間と気まずい空気だけが通り過ぎていった。
前にもこのようなことがあった。
蓮二に『記憶』の書き方を教わろうとしたときだ。
俺は未だに教わっていない。
蓮二がこのところ毎日読んでいる薄い本のこと。覗きこんでいたら、慌てて閉じられてしまった。
「何を読んでいるんだ?」そう聞いたときも、無言だった。
答えられないのは、俺に関するものだからか?
それならば、俺にも知る権利があるだろう。
…少なくとも、今考えていることくらいは。
「お前は俺に、これ以上あの花を見せたくないと思った…違うか?」
今わかるのは、このくらいだ。理由はわからないが。
綺麗な花には毒がある。前に幸村がそのようなことを言っていた。
柳蓮二にとって、ツツジは猛毒だったのかもしれない…
end.
・・・・
世の中に花というものが無ければ、もっと穏やかに過ごせるだろうに。
このままだと蓮二がひどい男になっちゃうので、できれば柳目線も書きたいです^^;