三強でパラレルの人形シリーズ。
サイトの「ひとりごと」にちょこっと書いてた3つの文をここにまとめて置いておきます。
いいオチがつけられなかったので単品UPはしません^^;
うまく書き直せたらUPするかもしれません。
主に真田(人間になった人形、シンデレラの王子様)と柳(古本屋。真田人形を預かる)の話。
最後の話だけ幸村(人形屋で真田人形の持ち主だった)も登場。 ギャグ寄り。
あとの2つはシリアスめです。
[人形と古本屋の初めての夜]
俺が一人暮らしを始めてから、初めて二人で過ごす夜だ。
人形から人間になった真田弦一郎を、書斎のベッドで寝させることにした。仮眠用に追加したベッドがここで役に立つとは思わなかった。
俺は寝室から布団を持ってきて、床で寝ることに。
「申し訳ないな…ここはお前の家なのだろう?」
「王子に固い所で眠らせるのも気が引けるのでな。それに、座れた方が立ち上がりやすいだろう。これもリハビリの一環だ。お前には早く歩けるようになってもらいたい」
「りは…?よくわからんが、気を遣ってくれてるのはよくわかった。遠慮なく使わせてもらうぞ」
「そうしてくれ。俺の方は床で寝るのも嫌いじゃないので心配するな。本棚は倒れないようにしているから本が落ちてくることもないだろう」
この店は古民家をリフォームしてもらったものだが、近年心配されている地震への対策もできている。
家具や本棚も簡単には動かせないようにしている。少々掃除がしづらいのが難点だが。
「…怖いことを言わないでくれ」
本棚が倒れて下敷きになる様子を想像したらしい弦一郎は、渋い顔をしながら布団に入った。余計なことを言ってしまったな。
「おやすみ、弦一郎」
「…おやすみ、蓮二」
おやすみ、と言ったら同じように返してくれる。
こんな日が来るとは、誰が想像できただろうか。
・・・・
[初めての書道]
真田王子に書道教えることにした古本屋の柳。漢字を教える一環ということで。
さすがに全部の漢字教えるのは時間がかかりすぎるので、王子に必要そうな漢字だけ教えることに。
まずはお互いの名前。
次に「王子」「人形」「本」「金」「計算」「確率」
色々書いてきた王子だったが、一番重要な言葉の書き方を教えてもらっていなかった。
「蓮二…“記憶”とはどのように書くのだ?」
古本屋はぴたりと手を止める。筆からはぽたりぽたりと、半紙に雫が垂れていき、じわじわと滲んでいった。
「……それはお前に必要な言葉か?」
「当然だ。俺にとっては最も重要なものだ。お前も俺の記憶がないと調べるのに困るだろう」
「いや、とくに困ってないが」
「そんなはずはないだろう!」
「弦一郎…それほど取り戻したいものなのか。しかし、残念ながら今の俺には教えられない」
「なぜだ!?」
「書きすぎて手が疲れてきたから、かな。ほら、震えているだろう」
「……蓮二」
「今日はここまで。さて、片づけようか」
「蓮二。いつか教えてくれるか?」
「お前が“それ”を取り戻すまでには、教えるつもりだ」
「そうか……すまんな」
・・・・
[猫耳王子と古本屋と人形屋]
欧米の図書館ではネズミ退治のために猫を飼うと聞いて…商品の本を守るためのネズミ退治という名目で弦一郎に猫耳着けて書庫掃除させる蓮二。
「蓮二…俺を何だと思ってるんだ」
「?人間として扱ってるつもりだが」
「矛盾しているではないか。なぜ掃除の際は猫に扮する必要がある」
「大丈夫だ、その姿ならネズミが逃げる確率100%だ」
「…そういうものなのか?」
「そういうものだ」
簡単に騙される真田…そして遊びに来た幸村に見つかって爆笑される。
「真田…君そんな趣味あったの!?面白すぎるよ!」
「趣味とはどういうことだ。これは仕事のためだ」
「あははは!まあ、君がいいならいいけどさ!あー面白い!かわいい!でもあまり人に見せない方がいいね。お店に変な評判立っちゃうから」
「そうなのか…俺もあまり目立ちたくない身なので、そのつもりでいるが」
なぜ幸村はこんなに笑っているんだろうか、と首を傾げる猫耳王子でありましたとさ。
「ちょっと柳、あれはどういうこと?」
「ネズミ退治のためだ。データを採るためでもある」
「……今度、真田貸してよ。猫耳も一緒に。一泊二日で」
「それは…」
「うちも人手が欲しかったところなんだよ…こっちもバイト代出すからさ。もちろん、真田にはちゃんと人間らしい生活させるし。ちょっかいは出さないと約束するよ」
「ふむ…そういうことならば、仕方あるまい」
「やった!あ、君にも後でちゃんとお礼するから!」
「ただし、弦一郎がいいと言ってからだ。前みたいに、無理矢理は無しで頼むぞ」
「うん…もうしないよ」
・・・・
前の2つは第八話の少し後、最後の話は番外編「真実の心」「人形の夢」より後です。
前の2つは第九話をどうしようか考えてたら浮かびました。個人的に第九話以降は“第二章”にしたいと思ってるので、少し時期を開けて始めてもいいかなと。3つめの話みたいに一人で動けるようになった頃から書いていきたいと思ってます。