部室の引っ越し作業したりポケモンやってたり落乱(忍たまの原作漫画)読み始めたりと色々ありましたが、ようやく更新!
というより今のうちにやっとかないとまた途切れそうなので…(^^;)
もうすぐ卒業の高校生河合君とお魚先生の話。
もちろん曽芭前提です。松尾先生出て来ないけど!
「竹中さん、フィッシュ竹中さん。僕です。河合曽良です」
誰もいない池の前で目を閉じて、何度か唱えた呪文。
目を開ければ、おなじみの古い小屋。
本人は「寺だ」と言い張っているがどう見ても小屋にしか見えない。
何度も入ったこの小屋ともお別れか…
見た目はともかく、ここで飲むお茶は…僕は嫌いじゃなかった。
[何も聞かない]
コンコンコン
がらり
「久しぶり、曽良。さあ、どうぞ」
「こんにちは、竹中さん。お邪魔します」
このフィッシュ竹中さんという人(?)は、僕が来ることに対して驚いたことは一度もない。
まるで来ることが分かっているかのように。
「今日は良いものがある。居間で座って待っててくれ」
「…?わかりました」
ここで出てくるお茶受けは、海の臭いがするものが多くて正直あまり美味しくはない。お茶は美味しいのに。
が、たまに「良いもの」を持ってくることがあり、それがなかなか美味しかったりする。
「待たせたな、曽良。租茶と…これだ」
「頂きます…これは、もしかして」
小皿に載せて出されたのは、ピンクと白の丸いもの。
「紅白饅頭、ですか」
「ああ、そうだ。多分美味しいと思うぞ。餡子は大丈夫か?」
「餡子は好きです」
「それならよかった。さあ、召し上がれ」
竹中さんは後頭部の魚の尾を揺らせながら、キラキラとした目で微笑んでいた。
まさか卒業式前に紅白饅頭を食べることになるとは思わなかった。
彼なりの卒業祝い…なんだろうか。
甘い饅頭は好きなので、遠慮なく頂くことにした。
「…美味しいですね。先生からのもらいものですか?」
「いや、この高校じゃない。これは友人が持ってきてくれたものなんだ。仕事先で何十箱ももらって食べきれない、と言ってきてな。味は良いが、さすがに毎日は飽きるだろう?」
「太子先輩ですか…あの人、どういう仕事してるんですか?教師?」
「さあ。私も詳しいことは聞いてない」
「…友達でも、知らないことがあるんですね」
「仲が良いからと言って、全てを知る必要はない…と私は思っているよ」
「そういうものですか?」
「曽良は、全てを知りたいと思うか?」
「僕は…気になることは知りたいと思いますが、それ以外は別にどうでもいいです」
「ははは…お前らしいな」
「……」
仲が良いからと言って…か。
そういえば僕は、この人のことをよく知らないが、普通に話している。
魚の尾は本物なのか
どうしてここに住んでいるのか
なぜこの小屋は、普段は誰にも見えないのか
一体何歳なのか
気になっていたことはあったが、結局今日も聞けなかった。
知らなくても話をするのに支障はないし、もしかしたら知らない方がいいのかもしれないと思ったから。
…それなら、芭蕉さんのことは?
「竹中さん、最後に…相談したいことがありますが、いいですか」
「…もちろん、構わない」
「それじゃ…」
「好きな人のことをよく知りたいと思うのは、いけないことなのでしょうか?」
「…これは、難しい相談だな。今までで、一番」
「無理しなくてもいいですよ。答えがほしいわけじゃないので」
「いや、答えられなくはない。少しまとめてから答えさせてほしい。日が暮れるまでには、答えを出そう。それまでは、饅頭でも食べてゆっくりしていくといい。まだたくさんあるから」
「ありがとうございます」
・
・
・
初めて相談した内容は、「生きていくにはどうすればいいのか」ということだった。
この人はすぐに答えた。
『難しいこと、細かいことを考えなくても生きていける、何年でも、何十年でも。だが、それじゃつまらないし飽きるだろう。何か生き甲斐を見つければいい』
『あなたにはあるんですか?』
『…楽しかった思い出と、大好きな人間達を見守ること。話をすること、かな』
竹中さんの答えは分かりやすいようで、実際は難しい。
・
・
・
日が暮れて、もうそろそろ帰ろうと思ったとき。
この人はちゃんと答えをくれたものの、
「 」
やはりそれは実践するには難しいもので。
「相変わらず…難しいことを言いますね」
「すまないな、私にはこれが限界だ。あとは自分で解釈して、答えを見つけるといい」
「…わかりました。ありがとうございます。ごちそうさまでした」
「こちらこそ、来てくれてありがとう。ああ、そうだ」
「なんですか?」
「卒業おめでとう…河合曽良。また遊びに来てくれると、嬉しい」
「…ありがとう、ございます。お世話になりました」
「その言葉、松尾先生には言ったか?一番お世話になった人だろう」
「心配しなくても、これから言いますよ。では、お邪魔しました」
「素直でよろしい。じゃ、またいつか」
「また、いつか」
目を開ければ、そこは現実。
誰もいない池は、暗いオレンジ色を映す。
僕は振り返ることなく、いつもの道を歩いていった。
end.
・・・・
秘密の多い人たちの話。
もうすぐ卒業の河合君。他の人との話も書きたいですね。
3月中に卒業話を書き切りたいです。遅刻したらすみません><