話題:妄想話



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貴方は、明け方にかかってきた謎の電話が鳴らす、けたたましいベルの音で目を覚まします。

ベルの音だけで“謎の電話”と呼ばれるくらいですから、これはもう相当に謎めいています。

クライムサスペンスな一日の始まりは、そんな風に理不尽な時間に理不尽な形で訪れるのがベストだと考えられます。

半分寝ぼけ眼で受話器を取った貴方は「…Hello」と、うっかり英語で電話に出てしまいます。

貴方が寝泊まりしている部屋はパリの裏通りにある小汚ない下宿屋の二階ですが、貴方自身はアメリカ人です。ですが、訳あって現在は表向きフランス人という事になっています。

ここで貴方は、迂闊にも母国語である英語で電話に出てしまった事を軽く後悔して下さい。

ですが、こういう迂闊なミスが無いとクライムサスペンスは上手く話が展開して行かないので、むしろ、貴方はこの時“良い仕事”をしたと云えます。

終盤での迂闊なミスは明らかに命取りですが、序盤のミスは逆に吉兆と捉える事も可能です。

何故なら、クライムサスペンスの基本原則は先手必勝ではなく、先手必敗。最初に攻め込まれた方が最終的に勝利を収めるケースが多いからです。

しかし、それは製作者サイドからの観点なので、当事者である貴方は、自然体で自分の迂闊さを悔やんでいて下さい。


《続きは追記からどうぞ♪》


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