話題:突発的文章・物語・詩


人が高く跳躍する為には必ず一度、膝を折り曲げて身を屈める必要があります。それと同じで人生で大きな飛躍を見せる時も、その前には必ず、低く屈み込むような忍耐の時期があるのです。

…と、テレビの人が言っていたので、事あるごとに低く屈み込んでいたら、膝に水が溜まってしまった。

冷水機の水が美味しいと評判の病院で診察を受けた結果、どうやら私は「貯水池の体質」である事が判った。

医者の話では、すぐに手を打たないと大変な事になる可能性があるらしい。

医者はそれをトイレが詰まった状態に例え、その流れで、詰まる可能性の低い昔ながらの“ぼっとんトイレット”が如何に優れ物であったかを懸命に説いていたが、正直それは私の心には響かなかった。

ともあれ、手術は必須のようだ。

私は訊ねた「いつやるか?」

すると「いつでもいいですよ」

普通に答える医者の言葉が、何故かとても新鮮に聴こえた。

翌日。

無事に手術を終えた私の膝には、左右に一つずつ水道の蛇口がついていた。

これで、いつでも膝に溜まった水を体外に排出する事が出来る。

膝に蛇口のある生活。

Life with the faucet on the knee.

それは思っていたよりずっと快適なものだった。

通勤電車の車内や路上で、膝の蛇口から出た水を美味しそうに飲む私。それを羨ましそうに眺める膝に蛇口を持たない人々。

しかし、決して独り占めはしない。喉が渇いている人には、膝の蛇口を捻って惜しみなく水を与えて上げる。中には、私の膝に手を合わせ拝んでから水を飲む信心深い人もいる。

歩くルルドの泉。

そう呼ばれる日も恐らくは近い…。


《続きは追記からどうぞ♪》





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