話題:みじかいの
竹やぶも思わずふやけてしまうような妙ちくりんな話があります。オムニバス形式の3つのお話。本来ならば3話まとめて上げたいところなのですが、それだと少し長くなってしまうので、約2秒の熟慮熟考の末、1日1話ずつという形でお届けする事に決定致しました。今夜が第1話、明日が第2話、明後日が第3話となります。とまあ、そんな具合ですので、取り敢えずこれより第1話をアップ致しますが、くれぐれも、まだ読まないようお願い致します。明後日の第3話が上がるのを待ってからまとめてお読み下さいませ。
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―第1話「寿司屋では旬のネタを」―
近頃の回転寿司はすごい。特にメニューの豊富さには驚かされる。魚介のみならず、肉類や果物、中には既に一つの独立した料理として成立しているものがネタとしてシャリの上に乗っている事もある。
そういう変わり種は常に回っている訳ではないが、直接、板前さんに注文すれば快く握ってくれる。
客1「あ、すみません、豚カルビマヨネーズ貰えます?」
板前(威勢の良い声で)「豚カルビマヨネーズ、ありがとうございまーす!」
客2「あ、こっち、ピビンパの軍艦巻きを2皿ね」
板前「はいっ、自家製コチュジャンのピビンパ軍艦巻き2皿入りましたー!ありがとうございまーす!」
静かな寿司屋も良いけれど、こういう活気のある賑やかな雰囲気も捨てがたい。注文だけを聴くと、お寿司屋さんとは思えないが、まあ、これも時代なのだろう。
客3「えっと、本マグロの中トロください」
客4「こっち、大トロね」
客5「僕は中トロの炙りで」
板前「はいっはいっはいっ、中トロ大トロ中トロ炙りー!続けて頂きましたー。ありがとうございまーす!」
うむ。変わり種のネタも良いけれど、やはり定番のネタの美味しさがあってこそだ。マグロ、タイ、光りもの、通年の定番ネタは何と言ってもその安心感が嬉しい。出来れば、それにプラスして季節ならではの旬のネタも楽しみたいところだ。脂が乗っているもの、身がキュッと引き締まっているもの……うーむ、美味だ。これぞ至極のひと時……。
と、何だか[孤独のグルメ]の松重(豊)さんのようになってきたところで一際目をひくちょっと派手な軍団が店に入って来た。全員男性だが妙な色気を全身から放っている。女物の服を来ている者もいる。朝になるとヒゲが伸びてくるタイプのお姉さんとか、ゲイ人さんとか、その辺のグループだろう。
軍団1「何食べようかしら」
軍団2「やっぱ旬のネタが美味しいわよね」
板前「さ、言って頂ければ何でも握りますよ!」
軍団3「じゃ、あたし、アニサキス貰おうかな」
板前「はいーっ!アニサキッス入りましたー!」
軍団1「あ、ずるい!あたしもアニサキス!」
軍団4「おいどんも負けじとアニサキスたい!」
軍団2「アニサキス、わたくしは中トロでネ」
軍団5「アニサキスの大トロ、炙りで!」
板前「只今絶好調のアニサキッス!立て続けに頂きましたー!毎度、毎度、毎度ありがとうございまーす!」
アニサキスか、確かに旬のネタだ。しかし、大丈夫なのだろうか。ほら、皆の顔色がみるみるうちに……。
軍団3「あのぅ……」
板前「へい、何でしょう?」
軍団3「救急車……って握って貰えます?」
板前「あっ、大丈夫ですよー。言って頂ければ何でも握りますから。遠慮せずどんどん注文して下さい!」
軍団3「じゃ、救急車の握り、お願いします」
軍団1「…あたしも救急車」
軍団2「…あたしも負けじと救急車」
軍団5「じゃ、ネギ救急車のトロを軍艦巻きで」
軍団4「おいどんはインド救急車の大トロたい!」
板前「はいはいはいっ、救急車の握り5連発で頂きましたー!ありがとうございまーす!」
なるへそ、救急車と来たか。見るからに生命力の強そうな人たちだから、もう心配ないだろう。直に顔色も良くなるはずだ。
そうそう、顔色といえば、以前こんな話を聞いた事がある……。第2話へ続く。
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