話題:シュール


と或る、とてもスッとぼけた深夜…とは云っても…スッと、ぼけた深夜ではなく、スッとぼけた深夜の方…です。

「無我夢中…無我夢中…竹脇無我に無我夢中…ガム噛む竹脇無我に無我夢中…ガム噛む竹脇無我に無我夢中のガム噛む竹脇無我に無我夢中…」

そんな言葉を、無我夢中で呪文のように唱えながら歩くスッとぼけた人がいました…とは言っても…スッと、ぼけた人ではなく、スッとぼけた人…の方です。

そんな「竹脇無我に無我夢中」と無我夢中で唱える人を私は無我夢中で眺めていました。

はっ!

視線を感じると、それはそれは大きなスッとぼけたお月様が、私とスッとぼけた人を無我夢中で眺めているのが見えました。

ぬーん。

むーん。

「竹脇無我に無我夢中」と無我夢中で唱えるスッとぼけた人を無我夢中で見る私を無我夢中で眺めるスッとぼけたお月様と、そのお月様を無我夢中で見上げる私‥の事も無我夢中で眺めるスッとぼけたお月様‥を無我夢中で見返す私に「竹脇無我は無我夢中」と無我夢中で唱えるスッとぼけた人の声は、何故かもう聴こえてきません。

いつの間にか、無我夢中の人は居なくなっていたのでした。

どうやら、「竹脇無我に無我夢中」と無我夢中で唱えるスッとぼけた人を無我夢中で見る私を無我夢中で眺めるスッとぼけたお月様と、そのお月様を無我夢中で見上げる私‥の事も無我夢中で眺めるスッとぼけたお月様‥を無我夢中で私が見返している間に「竹脇無我は無我夢中」と無我夢中で唱えていたスッとぼけた人は何処かへスッとぼけ去ってしまったようです…とは云っても今度は逆に…スッとぼけ去ったのではなく…スッと、ぼけ去ったようでした。

(ストレート)ぬーーん!

(スパイラル)むーーん!

そうです。
うそです。
そうです。
うそです。
そうです。
うそです。
かわうそです。
わかそうです。
かわうそです。
わかそうです。
わかそうなかわうそです。
わかそうなかわうそです。
かわいそうなわかそうなかわうそです。
かわいそうなわかそうなかわうそです。
可哀想な若そうなカワウソです。 

私とお月様は、可哀想な若そうなカワウソのように「無我夢中」の持って行き場をすっかり失ってしまってしまってしまってシマシマでシマシマなシマウマのシマシマをシマウマのシマイが姉妹で縞馬の縞々をしまい込んでしまってしまったようでした…。


(エステティック)ぬーーーん!!

(コスメティック)むーーーん!!


仕方なく私は自分の右のお尻にある空気栓を自分で抜き、ヘナヘナプシューと、元のしぼんだ風船人形へと戻りました。

プシュー。

シュルシュル。

しかし!

往生際の悪いスッとぼけたお月様は、それでも、空から落ちないように暗幕のような夜空に無我夢中でしがみ続けていたのでした。

そしてそれが、あの夜、ただ一人だけスッとぼけていなかった私が、無我夢中で見続けていた物の全てなのです……。 


《オワリ》。