話題:みじかいの

今日『大沢かのん』という人から手紙をもらった。ピザ屋のちらし以外はめったに飲み込まない僕の家のポストの中に、そのきれいな手紙はひっそりと置かれてあった。レースの模様のついた封筒からはほんのりと桜の花の香りがした。わくわくしながら便箋を開くと丁寧な字で『凄く良い歯磨き粉とトリートメントとボディーシャンプーがあるんですがよかったら使って欲しい 返事を待ってます』と書かれてあった。不思議に思って便箋をひっくり返したり、太陽に透かしてみたり、ちょっとだけ炙ってみたりしたけれど、どうやらそれ以上は何も書かれていないようだった。とにかく返事を書こうと思って隅から隅まで便箋を眺め回したが、大沢かのんさんの住所はどこにも書かれていないのだった。僕は随分途方に暮れて、シャワーを浴びて、缶ビールを一本ぐいぐいと飲み干した。次の日、朝起きると僕はもうすっかり大沢かのんさんの不思議な手紙のことは忘れてしまっているのだった。