離人感。この言葉を知ったのは何年前だっただろう。表現できない底のない不安に少しだけ形が見えた、気がした。鏡を見たら、たぶん、わたし、が、映っている。けど、わたし、こんなカタチをしていたかな。物事を考えているとき、わたしには実体がない。スライム状のぷるぷるの脳みそだけが漂って思考している。体は容れ物でしかなくて、その容器がこんな外観だったことに、鏡を見るといつも驚く、のだ。ずいぶんと見映えのいい容器を見繕ってくれたものだ、というように、誰かに語り掛けている。第三者と関係をし合うのもこの容れ物が行ってくれるので、一人になったときに、会話を思い出すと他人事のように感じられる。けれど、この容器は維持費がかかる、ので、少し困っている。物を食べること(特に甘いもの)が、好き。容器の顔、を鏡を見ずに思い出そうとすると感覚がざわざわとなるので、あまり好ましくない。感覚、は容器のものではない、のだろうか。それとも、容器の感覚がざわついているのだろうか。物事を考えているわたし、はゼリー状の何か、である。