玄関のチャイムが鳴ったので出てみると、宅配便のお兄さんが立っていた。
年の頃は二十歳そこそこに見える。見慣れない制服、そして初めて見る顔だ。
お兄さんは被っている帽子に軽く手をあてながら言った。
『お届け物です。判子かサインお願いしま〜す』
ああ…判子ね。
我が家は、対宅配業者用に常に玄関の靴箱の上に印鑑を置く事にしているので、この時も「はいはい」と軽く受け流しながら、いつもの様に荷物を受け取ろうとしたのだが……
『アイタタタタタ!…』
急に、お兄さんが自分の左肩を押さえながら苦しみ出したので、吃驚して思わず判子を落としてしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
私が落とした判子を拾いながら声を掛けると、お兄さんは変わらず苦しそうな表情ながらも気丈に、
『大丈夫です、いつもの事です』
そう言いながら、私に届け物を渡そうと腕を伸ばした。が、またしても…
『アイタタタタタ!これは完全にキマシタ!』
そう言うお兄さんの顔は、苦悶の表情の中に何処か満足感のようなものが浮かんでいる。
「ど、どうしたんですか?ちょっと、本当に大丈夫ですか?」
心配して声を掛ける。どう見ても大丈夫そうには見えない。
『どうやら肩がハズれちゃったみたいです』
それは大変だ!
「えっ!‥救急車呼びましょうか?」
ところがお兄さんは、ポケットから携帯を取り出そうとする私を、歌舞伎の《暫》(しばらく)に出てくる有名なポーズで遮るとこう言った。
『いや、いつもの事なんです。うちの会社は皆、荷物を届ける時にはこうなるんです。‥だから辞められない!この感触‥好きなんです!』
このお兄さんは、いったい何を言ってるのだろう?肩がハズれて何が嬉しいと云うのだ。
私は顔をひきつらせながら、ぷるぷる震えるお兄さんの腕の中にある届け物を受け取った。
「では此処に判子かサイ…アイタタタタタっ!」
見ている私まで体の節々が痛くなってきた‥。
お兄さんの額からは脂汗が流れ出している。
『右肩もハズれました』
伝票を持つ右腕がダラリと下がった。
「あ、あの‥本当に救急車呼んだ方が‥」
しかし、お兄さんは気丈過ぎるほど気丈であった。
『いえ‥これがイイんです』
いったい、この状態の何処がイイと云うのだ?
それでも当の本人が『良い』と言っている以上、その意志を無碍にする事も出来ないので、何とも割り切れない気持ちではあったが、私はダラリと下がった腕の先にある配達伝票に印鑑を押した。
その時、私は見たのであった‥伝票に書かれた、この宅配業者の社名を。
肩のハズれた猫と思しき生物のロゴマークの横に、何処かで聞いた事があるような名前が書かれていた…
《
苦路ネコやまとの
脱臼便》
『ありがとうございました〜♪』
脱臼便のお兄さんは、帰って行った。
まあ…“いつもの事”と言っていたから…ハズれた肩は自分でちゃんとハメられるのだろう。
あまり心配してもしょうがない‥世の中には色々な趣味趣向の人がいる訳だから。
私が自身の動揺を抑えるべく、そんな事を考えていると…再びチャイムが鳴った。
ドアを開けると、またしても其処には宅配便のお兄さんの姿があった。
但し、先ほど配達に来たお兄さんとは、また別のお兄さんである。
今度のお兄さんは、げっそりとやつれた顔をしてして【生ける屍】と呼ぶに相応しい人物であった。そしてこれまた初めて見る顔である。
そのお兄さんは、今にも消え入りそうな力の無い“か細い声”で私に言った‥
『お届け物…判子…インをお願…ます』
人間が耳で聴き取れる可聴域ぎりぎりの音量である。
「あの…具合悪そうですけど大丈夫ですか?」
またもや心配になった私が声を掛ける。するとお兄さんは‥
『ここ3日間ほとんど何も食べていないのです…一昨日の朝、山崎の銀チョコロールを一口かじって以来何も‥何せ給料が安くて』
それは大変だ!
「残り物のパエリアで良ければ‥」
ところが、お兄さんは弱々しい声ながらも断固とした口調でこう言ったのである。
『いえ‥この“ひもじい感じ”がイイんです。これがあるからまた明日から頑張れる‥だから私は、この会社の【時給62円】が好きなんです』
や、安い!
私は、配達伝票に書かれているこの会社の名前を恐る恐る確認する…
《
苦労ネコやまとの
薄給便》
なるほど。それにしても時給62円は流石に薄給過ぎるとも思ったが…世の中には色々な趣味趣向の…って…あれ? つい先ほどもこんな事を思ったような‥。
といっている側から三たびチャイムが鳴る。
ドアを開けるとやはり宅配便の人が居た。但し今度はお姉さんである。
そしてお姉さんの手には届け物の他に
卓球のラケットがあった。
私は言った…
「あの…もう、オチが判っちゃったんで帰って貰えますか?」
それに対し、お姉さんは耳をつんざく様なかん高い声で一言だけ叫ぶと、意味不明なガッツポーズを決めた。
『サ―――ッ!!』
いやいや…
世の中にはまだまだ、私の知らない変なものがたくさんあるのだな。私は今日1日を振り返りながら、そんな事を改めて強く感じていた。
それはそうと…
“サー―”っていったい、どういう意味なのだろう?
やはりやはり
この宅配会社…やはり何かを企んでますよねo(`▽´)o
と云うか…
最後の一文で、有馬温泉に行きたくなって来ました(笑)
脱臼…
まあこれは元請け会社は忍者の育成をしてる企業でしょう(^O^)
時給62円…
明らかに労働基準にふれますな(・_・;)
多分、私なら会社ぶっこわすと思いますよ♪へ(^o^ヘ)(ノ^o^)ノ♪
ダイエットの為でも働きたく無い会社です。σ(^◇^;)。。。
私の小学生時分…
サ−――!ではなく
ヨッシャ!と言ってましたけど…
実はサ―――ではなくシャ−――と猫が相手を威嚇するのと同じ意味で言っているのか…
サだかでは有馬おんせん(^o^)/
(≧∇≦)ワハハ♪
そう!そこですよそこ!
配達員と会社の関係
ドMにドS
需要と供給がちゃんと一致してるのよねぇ
そこに着目して貰えたのは嬉しいな
と云うか…私もこんな会社絶対嫌だけどさ(笑)
荷物届ける度にあちこちの関節 脱臼したり(笑)…1日フルに働いても150円にも満たない給料とか…
で 山崎の銀チョコロール…美味しいよねぇ シンプルなんだけど飽きない味でさ
そう…あのホイップクリームが最高なのさ
出たっ!
必殺3連発っ
やられたっ
ヾ(>∀<)〃
メッチャ可笑しいっ
なんか、働き手の…ドMっぷりも メッチャ可笑しいっ
ヾ(>∀<)〃
会社、メッチャ、ドSだしぃ〜
ヾ(>∀<)〃
…でも、みぃう。だったら、会社側の人間で居たいっ
さすがに、そのドMっぷりにはついていけないぞっ
あっ!山崎の銀…
なつかしすっ
みぃう。牛乳に漬けながら食べるの好きっすっ
真ん中のホイップがねっ
3倍位あっても嬉しいなっ
(≧∇≦)アハハハ♪
今ちょっと伺って読んで来ました(笑)
なんとタイムリーな(笑)\(☆o☆)/
いや しかし…佐川のお兄さん、独特ですよねぇ
なんか前に話しを聞いたところだと…常に笑顔で走っていないと怒られるのだとか(笑)ε=ε=┏( ・_・)┛
\(☆o☆)/キャ――――!!!
もう完璧に読まれまくってますなあ(笑)(泣)
(」゜□゜)」
まあ 『水戸黄門週間』と云う事で(笑)
余裕爵爵
上手いっ
有り難く頂いておきます\(^ー^)/
爵位もう一個つけて余裕爵爵ってのはどうでしょう
(笑)
先程、ヤマトのメール便で起こされたばかりの私にはタイムリー過ぎて思わずマコトちゃん笑いが(泣笑)。
宅急便の配送員にもなかなかにキャラクター豊富で見逃せないものを感じますが、私の地域では佐川に明るすぎる人が目立つのが謎です(笑)。
再び!!!
え!?( ̄∀ ̄)
またまた!!!
ええ!?( ̄∀ ̄)
サー――――ッ!
(/°ロ°)/
両腕ダラリの宅配便…もう 荷物落としまくりで 箱の中身とかメチャクチャになってそう
薄給便も このままデフレ不景気が続けば本当に出てくるかも
卓球は確かそうでしたよね
なんか前にテレビで試合観てたら 選手のほとんど全員がサーサー言ってて 笑ってしまったのでした
やはりそうかあ…
迂闊に手を出すとクロスカウンターを喰らいそうな予感があったのですが…
なんとか判定で勝てて良かったです
サーの称号は既に一つ(伯爵)頂いていますので、今回は別の方に…
おっ!(◎o◎)
今夜はいつにも増してパワフルに気合いが入ってますねぇ(笑)(^◇^)┛
そうです
そういうふうに受け取って貰えると 私としても言外の喜びです
基本的に私は直接には書かない部分が多いので、感じ取って貰えると非常に嬉しいのです
いえいえ…
モーリーさんが、いつも頑張ってる事、私はちゃんと判っておりますので
次男とあの娘をもつ
ママである以上
サアーは
何度となく耳に
したことあります(笑)
女子はサアーと
上がり調子に言ったり
します
しかし意味は
わたしも知りません
(^。^;)(笑)
両肩を脱臼は
考えただけでも
腰抜けになりそうですね
しかしそれほどの
痛みも空腹も経験なく
暮らせることに
感謝しなければ…ねっ
!(b^ー°)(笑)
トキノさん
ひとを思う気持ちを
もつときの喜びは
神様からのご褒美
なんかも知れませんね
ましてトキノさんから
こんなのご褒美まで
いただいて(^w^)
とてもうれしい気分で
眠れそうです。
いつもあたたかな言葉を
ありがとうです
苦路猫やまとにょ脱臼便肩がダラリンちょてぇオチゴトにゃんにゃいミタイれちゅニャリン本当に居たらコワちゅぎマチュピチュ
薄給便これまたコハルちょにょ気持ち良くわかりマチュピチュコハルと良い勝負れちゅニャリンよん
サーッて意味わたちかぁヨシッヤッタァて意味と福原愛ちゃんがれぇ言ってたようにゃ気がちマチュピチュれちゅニャリン
おしい!
サーの称号を貰い損ねましたね
しかし最初の人まさか
両腕ぶらり作戦で来るとは
あしたのジョー読んでたかな