話題:小説風日記
【場所】
家電量販店の空気清浄機コーナーと体重計コーナー。
【登場人物】
[私]…西暦3674年の地球からやって来た好青年。未来の地球は荒廃し、人間は殆んど残っていない。
[どうでもいい男]…同じく西暦3674年の青年。私の友人。
[店員]…どういう訳か髪の毛が後ろから前に向かって伸びている二十代後半の家電量販店男性店員。細身の体躯に黒縁メガネ。
[客の爺さん]…近くの農家の爺さん。カーキ色のジャンパーとズボン。七十代後半。
[ハエ]…蠅。種類、血液型、星座、座右の銘、等いずれも不明。
―――――――
幕が上がると、照明が完全に落とされた真っ暗な舞台。舞台の奥一面に大きな白いスクリーンが張られている。
フィルム映写機が回転する音がして、スクリーンに荒廃した未来の地球がチカチカと光るノイズと共に映し出される。
未来の地球の風景。ごつごつした岩があちらこちらに転がる荒れ果てた地面。空はくすんだ黄色と赤紫色をした暗い雲に覆い尽くされて、太陽の姿はない。吹き続ける強い風が砂嵐となり地面に転がる小石や砂を巻き上げている。
吹き上がる砂塵の中、ボロに身を纏った二人の青年が腰を折るように前屈みで歩いている。一人は私。もう一人はどうでもいい男。
どうでもいい男が突然、地面の一点を指差して言う。
ど男『…これだ!』
二人が立ち止まる。どうでもいい男が指差した場所に焦げ茶色をした革張りのリクライニングチェア(椅子)がポツンと一つ置かれている。
私『…この椅子が過去の地球へと繋がる時空転送機なのか?』
ど男『ああ、間違いない』
私『そうか』
ど男『ああ』
私『じゃ…行って来ます』
ど男『はい。いってらっしゃい』
私が椅子に座り、備え付けられているリモコンのボタンを押す。私の座る椅子が激しく震動しながら発光する。光が強くなりスクリーン全体が白くフラッシュした後、フィルム映写機の回転音が止まり、舞台が暗転する。
《続きは追記からどうぞ♪》
暗転が明けると、舞台は家電量販店の空気清浄機コーナー。隣には体重計コーナーがある。
私は空気清浄機に立ち棚に並んだ空気清浄機を見つめている。胸にはピンマイク。耳にはイヤホンレシーバー。通信相手は西暦3674年に残ったどうでもいい男。私が胸のピンマイクに向かって小声で話し掛ける。
私『…見つけたぞ』
ど男『…本当か!?』
私『間違いない。やはり空気清浄機は過去の地球に実在していたんだ』
イヤホンレシーバーから聴こえるどうでもいい男が涙声で言う。
ど男『これで我々の地球は…』
私『ああ、これを未来に持ち帰れば、すっかり大気が汚染されてしまった我々の地球を、再び元の美しい星へと戻す事が出来る』
ど男『では、どれか一つ調達して戻ってくれ』
棚に並ぶ数々の空気清浄機を値踏みするように見回しながら私が言う。
私『いや、それが…種類が多すぎて迷ってる』
ど男『…なるほど。気持ちは判る。では、慎重に考えて決めてくれ。判断はお前に任せる』
私『了解。もう少し考えて決めようと思う』
そこに、舞台左袖から爺さんがカクシャクとした感じで登場する。爺さんは他には目もくれずに体重計コーナーに向かう。
私と爺さんの視線が一瞬合う。が、二人とも直ぐに視線を逸らす。
ど男『…どうした?』
私『いや…なんか変な爺さんが来た』
ど男『…未来人であるお前の方が存在としては遥かに変だと思うが』
私『議論は後だ。とにかく今は私が未来人だとバレないようにしなければいけない』
ど男『…では、そうしてくれ』
私『そうする』
爺さんは真剣な目付きで体重計を見比べている。私も同様に真剣な表情で空気清浄機を吟味している。
其処へ二十歳台後半ぐらいの眼鏡をかけた男性店員が海底で揺れる昆布のようなユラユラした足取りで登場する。店員の髪は何故か後ろから前に向かって伸びている。
爺さんが店員を呼び止める。店員が立ち止まる。
爺さん『あ、ちょっと訊きたいんだけど…』
店員『はい、何でしょう?』
爺さん『これって…スイカの重さとか量れる?』
店員『……へっ?』
爺さんと店員がプチフリーズする。二人の会話を隣の空気清浄機コーナーで聴いていた私も一緒にプチフリーズする。
そこに、舞台の右袖からブゥ〜〜ンと羽音を立てながらハエが飛んでくる。種類は不明。
ハエが店員の肩に止まる。フリーズの解けた男性店員が手を振ってハエを追い払う。
ハエが爺さんの肩に止まる。爺さんがフリーズを解き、手でハエを追い払う。
ハエが私を目指して飛んでくる。私もフリーズを解いてハエを追い払う。
三人に肩への着陸を拒否されたハエは、何処かへと飛び去る。
爺さん『…で、どうなの?』
店員『…えっと、何でしたっけ?』
爺さん『スイカだよスイカ。この体重計、スイカは量れるの?』
店員が髪をかきながら答える。
店員『…たぶん大丈夫だと思いますけど…試した事ないんで…どうかなあ』
爺さん『かなり大きいんだけどね。はっきり言ってオバケスイカだよ』
店員『えっ、どれくらいなんですか?』
爺さん『えっとね…重さが10・5sあるの』
しばしの沈黙が訪れる。
その会話を受信していたどうでもいい男がイヤホンレシーバーを通して私に話し掛けてくる。
ど男『なあ…10・5sって判ってるんなら、改めて重さを量る必要は無いんジャマイカ?』
家電量販店の電磁場のせいか、レシーバーの調子が悪くなり、聴こえてくる言葉が少し変化している。
私『いや、ここは過去の地球だ。未来の常識で判断するのは軽率だ』
ど男『えっ、警察!?』
私『いや、軽率って言ったの』
ど男『何だ…名刹か』
私『軽率』
爺さんと店員が不審そうな目で私を見る。私が二人に弁解するように言う。
私『いや、違いますよ。私、決して未来人とかじゃないですから』
そこに、またハエが飛んでくる。ハエは着地場所を探すかのように三人の間を飛び回る。
三人が手を振ってハエを追い払う。
ハエが飛び去る。
店員『…で、何でしたっけ?』
爺さん『いや、10・5sのスイカがあるんだけどね…この体重計でそれ計れるかな?と思って』
店員『ああ、そうでした』
爺さん『マニュアルに書いてないの?スイカを計れるかどうか』
店員『マニュアルには…書いてませんねえ〜』
ブゥ〜〜ンというハエの羽音が聴こえてくる。三人が身構える。が、羽音は遠ざかっていく。三人、ホッとする。
爺さん『まあ、見る限りでは計れそうだな。じゃ、これ一つ買うよ』
店員『ありがとうございます。では、レジの方へ…』
爺さんと店員が舞台左袖へ退場する。私が胸のピンマイクに話し掛ける。
私『邪魔者は消えた』
ど男『こちらの世界へ持ち帰る空気清浄機は決まったのか?』
私『ああ。可愛らしいヤツにした』
ど男『グッジョブ。では、その可愛らしいヤツを持って戻って来てくれ』
私『で…こちらの時空転送機は何処にあるんだ?』
ど男『その辺を探してくれ。恐らく焦げ茶色のリクライニングチェアがあるハズだ』
私がその辺をうろつき歩く。
マッサージチェアのコーナーで、焦げ茶色の物を見つける。西暦3674年の地球にあった物と瓜二つの形をしている。
私『見つけたぞ』
ど男『よし。では、それに座ってリモコンのボタンを押してくれ。それで未来へ戻れるハズだ』
私『では、そうする』
ど男『そうしてくれ』
私は可愛らしい空気清浄機を抱えたまま焦げ茶色のマッサージチェアに座り、リモコンのボタンを押す。椅子が激しく震動する。
暗転。
舞台の照明は再び完全に落とされている。フィルム映写機が回転する音がしてスクリーンに西暦3674年の地球が映し出される。
しかし、それは荒廃した風景ではなく超高層建築が立ち並ぶ絵に描いたような未来都市の風景となっている。空飛ぶタクシーが空中を飛び回っている。
カメラがズームアップしていき、超高層ビルの最上階の一室を映し出す。
部屋の真ん中に焦げ茶色のリクライニングチェアが置かれていて、私が可愛らしい空気清浄機を抱えたまま座っている。
私がボソリと独白する。
私『…しまった。過去の世界から空気清浄機を持ち帰ってしまったせいで、未来が変わってしまった!私は戻ってきたのはパラレルワールドの未来だ!』
ブゥ〜〜ンという羽音と共にハエが飛んで来て、私の肩に止まる。
スクリーン画面全面に砂嵐ノイズが走る。
画面の砂嵐ノイズが収まると、そこは最初の場面、荒廃した西暦3674年の地球の風景となっている。
強風に舞い上がる砂塵の中、焦げ茶色のリクライニングチェアの横にどうでもいい男が膝を抱えて座っている。
どうでもいい男がボソリと独白する。
ど男『[どうでもいい男]なんて名前を付けられた上に…放置プレイかい』
フィルム映写機の回転音が止まる。
暗転。
【FIN 】
☆☆☆☆☆
因みにこの寸劇は、半分が実話です。
未来の地球のくだり…虚構。
私が空気清浄機を吟味している…実話。
爺さんと店員の間のやり取り…実話。
ハエ…これは、?(ハテナ)としておきましょうか。
西暦3674年の地球が、実話とならない事を祈りつつ…
それでは皆様、御機嫌よう。
この、ハエが絡んでくる場面は実は凄く重要だと思ってるから着目してくれたのはとても嬉しい♪(/▽\)♪
舞台でも映画でもいいんだけど、こういうシーンって、身のこなしとか表情の細かい変化とか、間合いとか、何気に役者の技量が問われるのよね( ☆∀☆) 演じ方、見せ方によって面白くもなれば、完全に無駄なシーンにもなり得る(/▽\)♪ ある意味、無言劇、パントマイムの世界♪
で、海底昆布の店員…実際の見た目も、実はそんな感じだったりする(笑)ヾ(*T▽T*) 体がアンガールズの田中で顔がドランクドラゴンの鈴木(笑)
というか…
Qoo 可愛い過ぎ(笑)ヾ(*T▽T*)
さっきから、あのマスコットキャラがずっと頭の中で「クゥ〜〜っ♪」ってやり続けてるんですけどー(/▽\)♪
いやいや…
久しぶりに、こういうテイスト…というか…造りの物を書いてみたけど、個人的に、やっぱり書いてて楽しかったな(^з^)-☆
今年は、こういう舞台仕立ての物をもっと書いて行こうかなと思ってる♪(* ^ー゜)ノ 長いの短いの問わずに♪
いや、本当に楽しんで貰えたようで私としても非常に嬉しい(/▽\)♪ありがとね
ああ、灯りコーナー♪私も好きだなあ(笑)(//∇//)
海月のアクアリウムっていうのもよく判るわ♪
あの幻想的な美しさは、絶対、何処か別の世界と通じてると思うんだ、実際♪(* ^ー゜)ノ
加湿器とか空気清浄機って進化の度合いが凄いよね。年々、確実に機能がアップしてるもの♪ナノレベルのテクノロジーだしさ♪( ☆∀☆)
で!あの雲と空、判ってくれて嬉しい♪(*ToT)
そうそう、まさにソレなのですよ(^〇^)
酸化鉄のような赤味を帯びた色合いから、鉛のような灰色に変わる…なんか近年、こっちでも冬に見かけるようになった(◎-◎;)
前にも『奇妙な色の夜空』の話をアップしたけど、ここ数年、不思議な空の姿を見る事が多くなって、何気に少し心配してたりする(*_*)
マッサージチェアはね〜…(笑)
いや最近、背中とか腰が痛くて、本気で一台買おうかなと思ってるんだけど(照)(/▽\)♪…加湿器とかに負けず劣らずテクノロジーの進化がスゴくてさ!これ…ちょっと弄ったら【タイムマシン】になるんじゃないの?って(爆)(*≧∀≦*)
移動中もゆったり出来そうだし、それで今回こういう破格の扱いになったという(笑)ヾ(*T▽T*)
続く♪
加湿器コ-ナ-と灯りコ-ナ-が好き(´_ゝ`)最近の加湿器、デザインがメッチャ未来的!!Σ(゜Д゜)灯りコ-ナ-は発光海月のアクアリウムみたいだ♪
このハエの座右の銘は電光石火‥かな?なんとなく(笑)
空はくすんだ黄色 赤紫色をした黒い雲
ここ数年の徳島の冬の夕景は灰色と黄色で荒涼としているからタイムリ-だ他の季節は←こんな色なのだけれど‥赤紫色をした黒い雲ああ、知ってる知ってる
酸化鉄みたいに赤々燻っているけど夕陽が沈んでしまうと死んだような灰色になる雲ッスよね冬によく見るなあ〜
過去・現在・未来に遍在するのが時計塔やデロリアンといったシャレオツなやつじゃなくてマッサ-ジチェア(笑)ってんのがすげ-様らしいや♪モチロンいい意味でさ♪
爺さんは真剣な目付きで体重計を見比べている。私も同様に真剣な表情で空気清浄器を吟味している。
ブゥ〜〜〜ンというハエの羽音が聞こえてくる。三人が身構える。
なんか‥サボテンブラザ-ズみたいなユ〜モア感覚♪♪それでいてモッズ系なお洒落感もある場面だなあ♪このシ-ンのポストカ-ドがヴィレッジヴァンガ-ドに売ってあったらかなり欲しい!!(笑)ヽ(≧∇≦)ノ゙
海底で揺れる昆布のようなユラユラした足取り
これ、わかる!!すごい的確な表現!!(笑)体はアンガ-ルズ田中顔はドランクドラゴン鈴木のイメ-ジ゙
ハエのウザカワイイ存在感は異常!!お子様ランチの旗的な(笑)ハエはなんであんなに人間になつくんだろう‥?ハエ-ダトライアングルの中心に居た者はこのハエが生まれたウンコがあった場所に飛ばされてしまうらしい‥
可愛らしい空気清浄器を抱えたまま座っている
この空気清浄器はQooのイメ-ジ♪水色で一ヶ所だけトンガリ∧があってさ♪くぅ〜辛抱たまらんかわゆさヽ(≧∇≦)ノ゙
‥ってかハエ西暦3674年まで付いてきたんかい!!
いやァ〜久々に上質なユ〜モア溢るる舞台を見た♪♪たのしかった〜♪♪d=(^o^)=b
屈指の名場面でした♪(//∇//)
その店員も、ヤボな質問などはせず、ナチュラルに爺さんの世界を受け入れていたのが素晴らしい♪(*´∇`*)
まさしく、「そこに山があるから」的世界でした。因みに、今年の夏頃の話♪(^_^)v
10,5キロとわかっているスイカを量る
なんて素敵な光景
なんのためにとかヤボなこと訊いちゃいけない
なぜならそこに10,5キロのスイカがあるんだから
なぜ山に登るのかと一緒(笑)