話題:突発的文章・物語・詩


リンゴをかじると

歯茎から

ゴリラが出たりしませんか?


――はい。ちょうど一昨日の夜に出たところです。

そうですか。で、そのゴリラはどうされました?

――引き取って貰おうと思って動物園に連れて行ったのですが…途中でライチになったので食べてしまいました。

…ああ、やはり。

――と云いますと?

非常に申し上げ難いのですが、貴方の体はだいぶシリトリ化が進んでいるようです。

――シリトリ化ですか?

はい。原因はまだよく解っていないのですが、恐らく貴方が掛かっているのはシリトリ症候群だと思います。

――何ですかそれ?

近頃世界的に流行の兆しを見せているよう奇妙な病…いえ、まだ症候群なので正式に病という認定はされていないのですが…兎に角、体を始めとし身の回りの様々な物がシリトリ状に変化してゆく…ゆく…ゆきゅ…キュルッキュー!

――せ、先生!どうしたんですか!

キュルルルキュキュキューキュルッキュー!


☆☆☆☆☆


私の目の前で医者はヤンバルクイナへと変化した。あろう事か、先生もシリトリ症候群に掛かっていたのだ。

仕方なく私は病院出て帰宅する事にした。ところが、自宅に着くとそこは更地になっていて合唱隊が何かの曲を歌っていた。よく聴くと、それはエーデルワイスだった。なるほど…

家→エーデルワイス。

シリトリ症候群は家屋にも及んでいたのだ。

仕方ない。こうなった以上は、しばらくはエーデルワイスの歌声の中に住むしかないだろう。いずれ、エーデルワイスも“ス”で始まる別の何かにシリトリ変化するだろう。エーデルワイスのエンドレスリピートは正直キツいが、何事も辛抱辛抱。人生とは辛抱の折れ線グラフのようなものだ。

願わくば、“スカイツリー”などの建築物に変化しますように…。

曲がエーデルワイスからスーダラ節に変化した。…また歌かい。


目を閉じた私の中で、モーガン・フリーマンが美味しそうにハッピーターンを食べている。

“ん”で終わるものがちょっとだけ羨ましい…。


【終り】。