話題:びっくりしたこと

シュール掌編週間『ケンちゃんと私』シリーズの途中ではありますが…と、ついこの間も言ったばかりのような気もしますが…ちょいと別のお話をお届けしようと思います。因みに実話ね。


今日の夕方、帰宅するや否や、もはや人生の宿命と言っても過言ではない日課の犬の散歩で或る家の横を通り掛かった時、その家の二階から突然「ワンワン♪」と犬の鳴き声がしたのです。

アレ?

その家は老夫婦の二人暮らしで、顔を合わせれば日常会話ぐらいは交わす程度の知り合いなのですが、確か犬は飼っていなかった筈。しかし、二人が犬好きである事は知っていたので、

新たに飼い始めたのかな?

瞬間的に私はそう思いました。

するとまたもや二階から「ワンワンワン♪」と先程と同じような鳴き声が。声の感じからすると、ヨークシャーテリアとかミニチュアダックスフンドとか藤井フミヤとか、そういった感じの小型犬っぽい雰囲気です。どうやら、声は二階のベランダから聴こえて来ているようです。

そこで、半ば反射的に二階を見上げた私でしたが、そこに犬の姿はありません。その代わりに一羽のカラスがベランダの柵に止まっていました。

犬は部屋の中かな?まさか、このカラスが声の主でないよね?…と、思ったのも束の間、件のカラスはバサバサバサと此方に向かって飛んで来たかと思うと、私たちのすぐ横の塀の上にスタッと降り立ち…「ワンワンワン♪」。

…やはり、君か!

その声は正しく“犬そのもの”でした。そして…

ワンワンワン♪

カラスは私と犬の方を見ながら、何故かついて来ようとしています。

ワンワンワン♪

その様子はまるで、私たちに何かを話し掛けてきている様でした…と言うか、多分、本当に話し掛けてきていたと思います。

しかし…やはり、コミュニケーションって難しいですね。私にはカラスが何を言おうとしているのかサッパリ判りませんでした。

やがて、カラスは諦めたかのように夕陽にその姿を消してしまいました。

確かに、

カラスは、結構器用に色々な声を出す事は知っていたけれども、あそこまで完璧に犬の鳴き声をカヴァーするとは…。

もしかするとこのカラスが新ボーカリストとして、近い将来、徳永英明を超えるカヴァーアルバムを発表する日が訪れるかも知れませんね。

因みに、九官鳥や宮藤官九郎ではありませんでした。


《終わり》。