話題:創作小説
人海戦術による24時間体制での入力作業がカレーの中の世界で始まった頃、
もう片方の世界であるカレーの外側では、母親がなかなかの奮闘ぶりをみせていた。
僕が溶け込んでいるカレーの皿にラップをかけて、そこに[中にケンちゃんが入っているので、絶対に食べないで下さい♪]と書いた付箋紙を貼り、外敵からライスカレーの皿を守ろうとしたのだ。
夕方、部活から帰宅した兄は、僕がカレーに食べられてしまった事を知ると、姿こそ見えないものの恐らくは腹を抱えて笑い転げながら、『これで、お前のパーマンは全巻、俺のものだ!』と、訳の判らない事を言った。
くっ、兄貴め。
戻ったらコブラツイストでギャフンと云わせてやる。インドだけにコブラだ。
とまあ、そんな感じで少々腹立たしい展開ではあったが、声だけでも通じていると云うのは非常に心強かった。
スリランカへ単身赴任中の父親からは電話で『まあ、ぼちぼち頑張れや』と、殆どやる気の感じられない応援メッセージが寄せられていた。
そんな、空気の読めない父や兄とは逆に、母親の気配りはかなりのものだった。
母は、授業についていけなくなるのを心配して、毎朝、僕(カレー皿)を 学校まで送り届けてくれたのだ。
ちなみに、帰りは級友たちが僕(カレー皿)を家まで運んでくれた。
カレーとして過ごす学校生活も意外なほど快適で、流石に登校初日こそ、てんやわんやの騒ぎとなったが、そこは子供の順応力、一週間もすると、ほぼ今まで通りの落ち着いた状態に戻っていた。
一応、先生方や他の生徒たちには校長先生を通じて、僕らが現在行っている脱出計画を知らせていたが、そこはエネルギッシュな子供たちの事、密かに或る一つの計画が水面下で進行していたのである。
そして或る日、生徒会長の提案により急きょ開かれた全校集会において、【ヨガの扉作戦】とは別に、外側からの救出作戦も行おうと云う提案が飛び出し、校長先生とフォンドボー閣下が話し合いをした結果、カレー皿の内外でそれぞれの作戦をそれぞれ別個に同時進行してゆく運びとなったのだった。
外側からの作戦は、名づけて【蜘蛛の糸作戦】。これは、カレーに上からロープを垂らして僕を引き上げると云うものである。
作戦はすぐさま実行に移され、まず最初のロープにはスパゲティナポリタンが選ばれた。
カレー鍾乳洞の天井からスルスルと一本のスパゲティ麺が降りてくるのを見た時、正直僕は、助かった!と思った。ジャガイモやニンジンも『これなら、いけるかも知れない!』と興奮気味に声を上げていた。
しかし、残念ながらこれは失敗に終わる。ナポリタンのケチャップが滑って上手く掴めなかったのだ。
次に降りてきたロープは、カルボナーラだったが、これは更に滑り具合が増し、全くお話にならなかった。
どうやらスパゲティの麺では厳しいらしい。そこで用意されたのが“にうめん”だった。
が、これは何とか掴めはするものの、何本試してもすぐにプツンと切れてしまい、やはり駄目なようだった。
ならば、ピアノ線など強靭な物を使えば?
皆さんの中には、そう思う方もいるだろう。だが、残念ながらカレーの世界に入れるのは食べ物のみなのだ。
ロープ状にして、相応の強度を持つ食べ物…そこで最終的に選ばれたのが冷麺だった。
これは上手くいった。
冷麺に掴まった僕は瞬く間に引き上げられ、瞬く間にカレー鍾乳洞の天井へと達した。この時にはもう誰もが作戦の成功を確信していた…フォンドボー閣下を除いては。
そう、作戦は最後の最後で失敗に終わったのだった。冷麺は天井を通り抜けられるが、僕は通り抜けられなかったのだ。
《続きは追記からどうぞ♪》
鍾乳洞の天井に頭をぶつけた僕は衝撃で手を冷麺から離してしまい、地面に向かって物凄い速度で落下して行った…
カレーの内外から上がる悲鳴。このままでは、僕は硬い地面に打ち付けられて…
ところが!
ボヨヨヨ〜〜〜ン。
僕が落下したのは何故かトランポリンの上だったのである。
閣下『うむ、計算通りじゃ』
それはフォンドボー閣下が置いたものだった。
閣下『人間がカレーの壁を内側から通り抜けるのは不可能なのじゃよ。但し、【ヨガの扉】を除いて、だがな』
その口ぶりからすると、どうやら閣下は初めから作戦が失敗する事を知っていたようだ。
ニンジン『ちょっと閣下、それならそうと初めから云ってくれれば良いのに』
ジャガ『そうですよ。初めから失敗すると判ってりゃ、無駄な労力使わずにすんだものを』
ジャガイモの言葉に閣下の瞳がコク深く光る。
閣下『無駄なものか。それに、失敗もしとらん』
冷麺は何とか掴めたが、閣下の言葉はどうにも掴みどころがない。
私『閣下…それはどういう意味なんですか?』
僕はトランポリンで跳ねながら尋ねた。
閣下『ケンちゃんを助けようと皆が力を一つにして頑張った事、その気持ち、それこそがこの【蜘蛛の糸作戦】の本懐であるのだ。むしろ、作戦は大成功したと云えよう』
判るような判らないような閣下の男塾的な話に皆が口をあんぐりと開けていた時、カレーの外側から力強い声が響いてきた。
校長『フォンドボー閣下の云う通りです!』
校長の鶴の一声と共に、カレーの内外でパラパラと拍手が起こり、遂には全住人を上げてのスタンディングオベーションへと発展した。
お陰で、雰囲気だけは何となく大成功したような感じになってはいたが、実際はむしろ、スタンディングダウンに近い状態と云えた。僕は依然としてカレーの世界に閉じ込められたままなのだから。
どうやら、やはり、カレーの外へ出るには【ヨガの扉】を開かねばならないらしい。
それに、よくよく考えてみれば…芥川龍之介の【蜘蛛の糸】でも、結局、主人公が救われる事はなかったのである。もしかすると【蜘蛛の糸作戦】と名付けられた時点で、この作戦は失敗する運命にあったのかも知れない…。
トランポリンからの着地を予想外に美しく決めながら、僕はそんな事を考えていた。
こうなると、残された希望は【ヨガの扉】の八桁暗証の入力成功のみ。
しかし…
2兆8千億通りの組み合わせの中から、正解の1つを探し出すのは予想以上に困難な作業で、何の成果も見られぬまま、カレンダーの日付はどんどん捲られていったのだった…。
とは云え、カレーの具として過ごす学校生活は日を追う毎に快適さを増していた。
心配していた水泳の授業も、クラスきっての泳ぎの達人である河童川流太郎くんが、僕が入っているカレー皿を頭の上に括りつけて、それこそ河童さながらの平泳ぎをみせてくれたお陰で無事にクリアする事が出来たのだった。
と云った感じで極めて順調な純インド式スクールライフではあったが、
ただ一つだけ、どうにも閉口したのは、クラスきってのイタズラっ子である辛子山豪太くんが、隙あらば僕にケチャップをかけ、ライスカレーをハヤシライスに仕立てようとする事だった。
しかし、そんな豪太の悪企みも、隣の席に座る学級委員の三ノ宮祐規子が僕を守ってくれたお陰で、ことごとく失敗に終わったのだった。
三ノ宮祐規子は、家が反対方向にも拘らず、度々、僕を家まで送り届けてくれたりもした。
一方、カレーの中の世界では相変わらず扉を開ける為のキーコード入力が続けられていたが、やはり、簡単にはいかない。何せ、二兆八千億分の一の確率だ。
もういっそ、このままカレーの具として過ごすの悪くないかも知れない…。
諦めや投げやりな気持ちではなく、僕は、半ば本心からそんな風に思い始めていた…。
後編part2終了〜完結編へ続く。
スタンディングダウンとスタンディングオベーション♪
雰囲気と実際の差異♪
この部分は、自分でも『あ、これは面白いな( ̄0 ̄;』と、新鮮な驚きがあって、なかなか気に入っているところだったから、こうして拾って貰えると非常に嬉しい(⌒∇⌒)ノ"
自分以外の目や脳で確認して貰えると、良い裏付けになるから♪♪Ю―(^▽^o) ♪
と同時に、ここに気が止まるのは流石だなあ〜と思った(@^▽゜@)ゞ
トランポリンからの着地も、やっぱり、グリコのポーズで大正解だと思う(爆)ヾ(*T▽T*)
いや、こういうところ、メチャメチャ大事だからヾ(*T▽T*)
本当に(*゜ー゜)ゞ⌒☆
ああ♪(*´∇`*)
そこを感じとって貰えたのは嬉しいなあ〜(~▽~@)♪♪♪
このパートでは、そういう、多くの人間が集まった時に生まれる不思議な熱気やテンション、息づかいみたいなものを感じて欲しかったから (⌒∇⌒)ノ"
卓球大作戦は高校時代の話だけど、まさしく、根底にある熱は 同じだよね(*≧∀≦*)
実に、小学生っぽい(爆)(*≧∀≦*)
兄弟の関係にしても、『漫画は月に一冊』と云う掟にしても、やっぱりそういうものは私の中に暗に流れていて、それが“パーマン全巻が宝物”とかいう形で登場してくるんだろうなと、コメントを読んで改めて思った(〃^ー^〃)
人海戦術、確かに昭和っぽい言葉だ(笑)( 〃▽〃)
やっぱり、少子化の現代では、何かよっぽどの事が起きないと取れない戦術だろうなあ┐('〜`;)┌
で、ライスカレーの貼り紙…
確かに、うちの母親ならやりそうだ(爆)(*≧∀≦*)
しかも、ピンクの付箋を使いそうな気がするヾ(*T▽T*)
パーマンは、何となく頭に浮かんで、それで使ってみたんだけど…
わりかし、この話の空気感と云うか密度に合ったチョイスだったかなあ〜と 後になってから思ったo(^o^)o
テニプリとかハガレンじゃ、ちょっとオシャレ過ぎるかなと(//∇//)
或る程度の野暮ったさが欲しかったのよねヾ(・◇・)ノ
なんとなく80年代の経済誌のかほりがするなあ〜あの頃は会社に人がいっぱいいたんだよなあ‥
【中にケンちゃんが入っているので、絶対に食べないでください♪】
もはやシュ〜ル通り越してカオスな張り紙(笑)語尾が“!!”でなく“♪”で〆られているところにいい意味でお母さんのオプティミストっぷりを感じます‥ってか様の母上様とカブって見える(爆)
パ-マン全巻(爆)
テニプリやハガレンでないところがイイよなそして漫画の取り合い(笑)懐かしいな‥今のぼっちゃんやお嬢ちゃんはすぐに全巻買ってもらえるんだろうな‥
あの頃は一ヶ月に一冊しか買ってもらえなかった新しい月が来るまで台詞覚えるぐらい読み込んで次の巻を楽しみにして‥このパ-マン全巻はケンちゃんの宝物だあ♪
蜘蛛の糸作戦は様が『緑のタヌキ』とか叫んだりaway作戦を駆使して(笑)優勝した卓球大会の物語を思い出した♪奇面組みたいでメッチャ笑ったし!!
‥様の描く物語には盾フ人間の大勢の息づかいやざわめきが溶け込んでいるような気がする‥その感覚がなんだか、とても懐かしいなあ‥
ケンちゃんの為に全校集会が開かれたのかあ〜みんなケンちゃんが大好きなんだなあ
校長先生『フォンドボ-閣下の云う通りです!!』
いや本当は違うって分かってるんだけどフォンドボ-閣下の太鼓持ちみたい(爆)『ヨッ閣下は日本一』みたいな
雰囲気だけは大成功したような感じになっていたが、実際はむしろ、スタンディングダウンに近い状態と言えた
この文章面白い!!同じ出来事でも集団の気持ちの持ち方が違う場合があるのかあ〜どうせならアゲアゲな気持ちでいた方が根拠は無くても不思議と良い結果にたどり着ける気がする
‥
落ち込んでいる集団って見ていられないもんなあ
トランポリンからの着地を予想外に美しく決めた
全然関係ないけれど昔美少女仮面ポワトリンってあったなあこの時ケンちゃんはグリコのポ-ズだったんだろうなあ‥♪後の大団円を象徴しているみたい♪
河童川流太郎くんは己の名前が持つ宿命に打ち克つために一所懸命に努力したから泳ぎの達人になれたんだろうなあ‥これからも気を抜かずに精進し続けてほしいものであります、オス!!
フォンドボー閣下の奥深さとコク深さには限りないものがあります♪♪ヽ(´▽`)/
と云う事で、ようやく、
ライスカレー物語は無事に完結いたしました♪(^_^)/~~♪(o・ω・)ノ))
いよいよ救出大作戦が始まりまちたニャリン
ちかちフォンドボ閣下にょみがにゃにやら救出大作戦にょ真相をわかってらっちゃりマチュピチュにょようれちゅニャリン
ハテちゃてぇこれからにょ展開わいかに
うえ〜〜ん゜゜(´O`)°゜
ごめんなさ〜〜い┐('〜`;)┌
冷麺…
たまに、ゴムとしか思えないぐらい固いやつありますよね(笑)ヾ(*T▽T*)
この一体感こそがライスカレーの世界♪ヽ(´▽`)/
で…腐っ…
ゲッ! オ、オチが早くもバレて…o(T△T=T△T)o
こらっ
\(`へ’)
食べ物で遊んじゃダメって、いつも言ってるでしょ
笑
それにしても、冷麺とは、
なるほど〜でした
なんという一体感
でも
ライスカレー腐っちゃいませんか?