★奇想天外倶楽部☆

　

『えっ……仁来さんが？』

『そうだ』

『どうして？』

『そんな事、俺に聞くなよ』

ヒョットコのように口を尖らせる課長に苦笑しながら町村が云う。

『まあ、そりゃそうです』

『俺は“お前を呼んでくれ”って云われただけだから。伝言はちゃんと伝えたからな。じゃ、電報配達人は仕事に戻ります、バイならっ♪』

年齢を感じさせる台詞を云い残して課長は戻っていった。

洗面所に一人残された町村は、今度はタオルでちゃんと顔を拭きながら考えていた。

事件に新しい展開でもあったのだろうか？ それとも容疑者の移送中に何かが起こったとか…。

兎に角、取調室に行けば判る事だ。

町村は、パンパンと二度ほど自分の頬を手で叩いて気合いを入れ直すと、仁来の待つ取調室へと向かったのだった。


少し迷った末、町村は取調室のドアをコンコンと二度ノックした。

『町村です』

『どうぞ』

『課長に云われて来たのですが…』

『まあ、どうぞ。お座りください』

普段は自分がホストとして仕切っている取調室で初めて味わうゲスト感覚は、何とも云えない不思議なものだった。

それでも、町村は仁来に促されるまま彼の向かいの椅子に腰を下ろした。今は彼の言葉に従うより他ない事は明白であった。

『実は…折り入って町村警部にお話したい事があるのです』

『それは連続窃盗事件に関係する話なのでしょうか？』

間違いなく年下であろう仁来に対して、町村は自然と敬語になっていた。それは、仁来の発する静かな威圧感がそうさせたものだ。いや‥威圧感と云うよりは緊張感と云った方が正しいかも知れない。

『ええ…勿論、そうです』

やはり。

『判りました。お聞きします』

無意識に前傾姿勢を取る町村に、人差し指を立てながら仁来が云う。

『その前に…一つ約束して頂きたい』

『はあ…何でしょうか？』

『これから私が話す事は、くれぐれも他言無用でお願いしたいのです』

当然そういう類の話であるだろう事は町村にも判っていた。

『勿論です。あくまでも仁来さんと私の間だけの内密の話としてお聞きします』

『署の同僚や家族に話す事も許されません。もし、話の内容がどんなに突拍子のないものでも、一言たりとも口外してはいけません。それを約束出来ますか？』

取調室に来る僅かな時間の中で、町村は既に腹を決めていた。

『はい。何があろうとも決して口外しません』

『…うん』

仁来はチラリと机の上に置かれたままになっている【ＥＭＭＡ】に目を落としてから、満足げに頷いた。

あっ、

或る事に気付いた町村がハッと顔を上げる。

まさか…

いま、私を【ＥＭＭＡ】に掛けたのか？

そして、町村の勘は見事に当たっていた。

町村からは見えないが、【ＥＭＭＡ】の液晶モニターには、町村の語った言葉が表示されていたのだ。その文字色は白。つまり、町村の“口外はしない”という言葉に嘘はない。

『判りました。町村さんの言葉を信用しましょう…』


-３０分後-


仁来の口から【事態の一部始終】を聞き終えた町村は完全に言葉を失っていた。

まさか。とてもではないが聞いてすぐ信じられるような話ではない。

しかし…

『町村さんには警察に籍を置いたまま、極秘に協力して貰う形になります。宜しいですね？』

『はい』

町村は、この得体の知れない事件の真相に迫れるならば、形などはどうでも良かった。

『では、これをお渡ししておきます』

そう云いながら、仁来は机の上にクレジットカードのような一枚の電子カードを置いた。

『…これは？』

『アクセスキーです。【中央官庁データベース】のレベル４の…』

町村は震える手でレベル４のカードを受け取りながら思っていた。


ここから、本当の捜査が始まるのだ…と。


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何だか…

“終わった”のか“始まった”のか微妙な雰囲気ではありますが(≧∇≦)…取り敢えずの完結でございます♪

焦らしモードにお付き合い下さり、まことに有難うございました(^w^)

『今月残りは全て俳句で短くいきたいと思いますo(｀▽´)o』

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【ＥＭＭＡ】による判定は……真っ赤！(°□°;)