話題:びっくりしたこと


子供の頃は薬指よりも人指し指の方が長かった。

これは何度も確かめているので間違いない。

ところが、大人になった或る時、何の気なしに指を眺めていたら、薬指の方が人指し指より長くなっている事に気づいた。

いったい何時の間に、薬指は人指し指よりも長くなったのだろう。

薬指の長さが人指し指の長さを追い抜いた瞬間が必ずあるはずだ。

それは何歳の時なのか。春なのか夏なのか秋なのか冬なのか。昼間なのか夜中なのか。

思い出そうといくら頑張っても、まるで判らない。何となくそれは、夜眠っている間の出来事のように思えるが、確信はまったく無い。「薬指が人指し指を追い抜いた感覚」は恐らく人にはもたらされない類のものなのだろう。


かつて、人指し指は薬指よりも長かった。

そして現在、薬指は人指し指よりと長い。

後に残されたものは、そんな事実だけである。


目に見えぬところで…或いは感知しないうちに…物事が変容を遂げている。考えてみれば少し怖いような気もする。


聞いた話に拠ると、薬指が人指し指より長くなるのは女性よりも男性に多く見られる現象らしい。但し、その信憑性は不明である。


もしかしたら、人指し指が薬指を再逆転する日がやって来るかも知れない。そう思って、時々、二つの指の長さを比べたりするが…今のところ、そういう気配は特に無い。