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どこに行っても

喪服を買わなくてはいけないと思った。

先日ある方が亡くなった。とても親交があったわけではないが、小さい頃からお世話になっていた人だった。そこにいてくれるだけでまわりが心強くなるような人だった。だからまだまだいてほしかったけど。
私は喪服を持っていなくて、スーツで参列する他なかった。でもこれからこういうことがどんどん増えていく。それでもその日すぐ喪服を買いにいこうという気分にはなれなかった。


知らない街まで行って、帰りはナビを使わずに帰ろうと思った。雨が降っていて、いつまで降れば気が済むんだろうと思うほどこの春は雨がずっと降り続けている。桜はもうほとんど散ってしまった。
街の看板が色褪せていて、それを直すこともなくて、街もだんだん年を重ねているのだと思った。どれだけがんばってもここには限界が見えている。死んでいく街だから私は安心して暮らすことができているのかもしれない。

帰ってから家族に電話をかける。色々と言っておかなくてはならないことがあって今回の訃報の件も伝える。私は今年に入って二人の訃報を聞いたのだけど、もう一人の訃報のほうは言うことができなかった。


ヤマシタトモコ『花井沢町公民館便り』
近未来のとある街を舞台にしたオムニバス。シェルターに用いられる、目に見えない「壁」を作る技術があって、事故によって街の一部がその「壁」に包囲されてしまう。「壁」はすべての生命体、有機物(というか生きている有機物)を通さなくて街の人たちはその外に出ることが出来なくなる。閉じ込められた「内」側の人たちは「外」からの配給(死んでるものは壁を通ることができるから)を綱に、内側の人たちだけで暮らしていく。街はそのうち死んでいくことがわかっている……そんなおはなし。
悲壮感はあまりなくて、社会的なえがかれかたもしていない。まだ一巻なので全ての謎が明かされているわけではないからかもしれないけど。おしゃれな男の子の話と、アイドルが好きな女の子たちの話が好きかな。ストーカーの話はあんまり。


田村茜『たそがれメモランダム』
黄昏時のワンシーンを切り取った日常系掌編集。帯を見るかぎりミステリィ作品のようなのに実際そんなことはなかった。そんなことがあるとしてもそれはトリックめいた謎ではなくて、人の心の仄暗い部分を思い知らされる生々しい真実の実感というかんじ。読み終えて少し悲しくなるというか。そう哀しくなるのよ。でもそんな中に、

〈…でも。/一人で忘れるのってやっぱ寂しいよなぁ。/だから言いたくなったんだ、/エリには。〉

(「ゆーちゃんと泣き虫」より)

こんな話もあったりする。良かったですよ。誰にいうべきことでもないんだけど自分一人の心にはとどめきれないことってある、ということを描いてくれていることに救われる。
「小川さん」の話もズキッとくるけど嫌いじゃないです。

千葉コズエ『BLUE』
この表紙が可愛い!
ある事情から、住んでいた都会を離れて故郷の島へ帰ってきた女の子の話。少女漫画!ということを一通りこなしていて、それでいてそこらの少女漫画と完全に同じというわけでもない。何か独特の手法というか空気があって良かと思います。
母親との関係とか、他人に本音を言えない性格とか、意外と複雑な問題をいくつかとりあげて描いていてこの作者なりに真剣に取り組んでいる。
あと少女漫画の三角関係ってA君B君どっちも好きだよぉみたいな展開のも多いんですがこれは最後までそんなに揺らぐことがない。
でも彼氏にはつらいとか苦しいとかいう本音をなかなか言えなくて、彼氏じゃないほうには言えてしまうという。この彼氏じゃないほうがまた最初から最後まで優しくて良かったね……(とおいめ)。
ずっと隣にいてくれる人と、何でもわかってくれる人というのは等しくないからね(何)。
一番の魅力は絵と話に清々しさがあって、それが「島」というテーマにぴったりあてはまっていたことだと思います。
お風呂で女の子同士、裸で林檎をかじりあうというシーンが衝撃的で何故か一番印象に残っている……。そこだけ違う漫画みたいになってた。

アルコ『ラブレター』
アルコたんの描くほわキラな絵がすきですよ。ただ、ぼくは
この『三つ編みと赤い自転車』に収録されてる「イノセントカラーズ」がもう一度読みたかったんだ!
なんでこれを収録しなかったんだやり直し!
〈たとえば この世界に 色が無くて/風が無くて/音も無くて/それでも/感じられたんだと思う/この瞬間以外 些細なことだ/この瞬間だけ リアル〉

(「イノセントカラーズ」より)

アルコたんたまにド直球のロマンチックシリアス投げてくるのであなどれない。それが好き。
これの最後に入ってる話(題名忘れた)はとんでもない暗さでびっくりしたよ。一言のフォローもなくて余計びっくりした。あと昔の短編集にはお腹に子どもができて……っていう話もあってあれも相当あれでしたね。
この文庫版には『銀河』からも二作品入ってて、銀河のころの絵可愛いなぁと思いました。でもぼくは「さよなら太陽」(『銀河』に収録されてるオムニバスシリーズ)も好きだったので文庫版に載ってなくてざんねん!
はじめて買ったアルコたんの漫画です。


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