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未来への道標 4

●前書き●



此の御話しには、最近発見された真説を取り入れております。

然し、現在の所、信憑性についての結果は、まだ調査中との事ですので、此の御話しの中の内容はあくまで専門家の仮説に過ぎません。

大内義隆には、天眼通の力があった、と言う話もあくまで逸話ですので、現実性は薄いです。

全てが正しい、とは言い難い内容ですので、其れを踏まえた上で、閲覧下さいませ。

私は、前書きで忠告致しました。

此の忠告を無視し、閲覧を行い、不快感や嫌悪感を感じたとしても責任を負い兼ねませんので、ご了承下さいませ。

では、其れでも、読んでやんよ、って言う方のみ本編へどうぞ。





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未来への道標 3







「茶々様っ!」

無我夢中で、本能寺から脱出し、がむしゃらに行く当ても無く走っていた茶々に、声が掛けられる。

茶々が、涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げると、前方に茶々と同じぐらいの年頃の男子が茶々に向かって走って来ていた。

其の姿を見た茶々は、元々、ぐちゃぐちゃだった顔を更に歪め、再び大粒の涙を流し始めた。

「狽ソゃ、茶々様っ!?」

突然、泣き出してしまった茶々に男の子は慌てふためき、どんな言葉を掛けたらいいのか分からず困惑する。

「…‥っ、…叔父‥…が、往け‥…って…‥っ」

聞き取り難い小さな途切れ途切れの言葉に、男の子は顔を茶々の口元に近付け、何とか言葉を聞き取ろうと耳を傾ける。

茶々は語る。

本能寺での出来事を。

男の子に話した処で、何が変わる訳でも無い。

だが、茶々は誰かに聞いて欲しい衝動に動かされ、必死に話し続ける。

「ほん…‥は、一緒…‥っ、…‥って、言った…‥けど、…‥往けって…‥っ」

喉を引き付けながら、茶々は流れる涙を拭う事をせずに、必死に言葉を紡ぐ。

「………………‥」

其の言葉を聞き、男の子は黙ったまま考えに耽る。

そして…‥

「…………‥往きましょう、茶々様。」

と徐に声を掛けた。

「え…‥?」

突然の言葉に、茶々は目を見開き、男の子を見つめる。

「信長公は、茶々様に『往け』と仰有ったのでしょう?そして、『先で待っている』とも仰有ったのでしょう?」

男の子の言葉に茶々はこくり、と頷いた。

「なら、尚更、往きましょう、茶々様。」

男の子の言う意味が解らないとでも言うかの様に、茶々は眉間に皺を寄せ、首を傾げる。

「確かに、茶々様としては、信長公と共に、と言う願いは強いかも知れません。ですが、信長公は其れを拒絶し、茶々様が『往く』事を望んだ。なら、信長公のお望み通りに、往くべきだと思うのです。まあ、何故?と聞かれれば、答えられませんが、信長公が『往け』と仰有ったのなら、『往った』先に何か在るのでは、と私は思ったのです。」

男の子の言葉に、茶々ははっとする。

そして、目の前に居る男の子を見つめる。

(幸村は…‥自身が理解出来る『往け』と言う叔父上の言葉を拾い、自身なりの答えを導き出した。其れなのに…‥私は…‥っ)

茶々は唇を噛み締める。

「茶々様?」

男の子・幸村は、自分は何か言ってはいけない事を言っただろいか、と不安になり、俯いてしまった茶々の顔を覗き込む。

「幸村、私は往くべきだろうか?」

何処へ?なんて解らない。

だが、茶々は幸村に問い掛ける。

「信長公の望みに答えたいのならば、往くべきです。」

幸村の強い其の言葉を聞き、茶々はす、と顔を上げた。

「分かった。私、往くよ。」

「はい!」

茶々は立ち上がった。

「では、往くにしても、先ずは、明智軍の追っ手を逃れなくては。」

幸村はそう茶々に告げ、茶々は幸村の言葉に力強く頷き、踵を返して走り出した。

そして、走り出した茶々の隣に並ぶ様に幸村もまた走り出した。



茶々は、まだ知らない。



信長の言う『共に歩んでくれる者』が直ぐ隣に居る幸村である、という事にーーーー…‥










あれから、一体、どれ程の時が過ぎただろうかーーーー…‥



叔父・信長の望みに従い茶々は無我夢中で未来(さき)に進んだ。

時には、心が折れそうになる時もあった。

進むのを諦めようとすら思った時もあった。



だが、其の度に、自身を励まし、時には叱咤してくれる存在が茶々の傍らには在った。



其の存在のお陰で、茶々は自身の足で未来(さき)に進めた。

何時も離れる事無く傍らに在ったのは、幼い頃、安土城で知り合った真田幸村である。

安土城を脱出した後、あのまま別れてしまったが、茶々が大人となり、秀吉の側室となり、大坂城に居城する事になった時に、真田が豊臣に降り、豊臣に軟従する証として幸村が人質として大坂城に訪れたのが切欠で二人は再び逢瀬を果たした。

幸村は、茶々にどんな時も傍らに在り、どんな時も茶々を護る事を誓ってくれた。

以来、ずっと、誓い通りに傍らに居てくれた。

其れが茶々の励みになった。



『未来(さき)で待っておる。』



叔父である信長の此の言葉を旨に、茶々は歩みを止める事をせずに、進んで来た。

然し、其の歩みも、自らを包む紅のせいで止まってしまった。

(『天』はとうとう茶々までも連れて逝こうとしている…‥)

茶々は、静かに紅を見つめる。

(…‥辿り着けなかった…‥『待ってる』って言ってくれたのに…‥っ!)

先に進んだ。

然し、信長の姿は未だに捉える事は出来ていない。

信長は、まだ、まだ未来(さき)に在るのだ。

(まだ、進まなきゃいけないのに…‥っ!)

悔しさで茶々は唇を噛む。

大坂城が燃え落ちるのも、最早、時間の問題となっていた。

茶々は、目を閉じると、懐から懐刀を取り出す。

す、と刀身を抜け放つ。

(………‥ごめんなさい、叔父上。茶々は…‥)

刀身を喉元に当てた。

瞬間ーーーー…‥



『成らぬっ!』



「ーーーーっ!!」

茶々は、目を開く。

「叔父上…‥?」

茶々は、此処に亡き信長の声を聞いた。

そして、焔の先に一瞬だが、信長の姿を垣間見た。

(そうだ、私はまだ、終われない…‥っ!!)

茶々はす、と立ち上がる。

「秀頼、往きますよ。」

「母上、何処へ?」

茶々の傍らに俯く様に座っていた秀頼に、茶々が声を掛ける。

「大叔父様の処ですよ。」

「大叔父…‥信長様の処?ですが、大叔父様は…‥」

秀頼の言葉に、茶々は小さく首を左右に振る。

「大叔父様は、未来(さき)で私達が来るのを待っています。」

「未来で?」

「そうです、だから、往きますよ。」

「往けば、大叔父様に会えるのですか?」

秀頼は、少し考える仕草をすると、直ぐに顔を上げ、母である茶々にそう問い質す。

「ええ、勿論、会えますとも。」

茶々は、秀頼の言葉に、少し驚愕の表情を見せたが、直ぐに優しい笑みを浮かべると、こくり、と頷いた。

「ならば、私は母上と共に往きます。」

秀頼は、笑顔でそう告げた。

そんな秀頼を見ながら、茶々は、

(矢張り、秀頼は叔父上の血を濃く受け継いでいる。)

と確信した。

正確には、信長の妹、市の血を、だが、時折、秀頼は信長の生まれ変わりではないか、と思わせる様な仕草や言動があった。

肘掛けに肘を乗せ、肘掛けを指先でトントンと叩いたり、誰も教えてないのに、即興で舞いを踊ったり、と本当に小さな事だが、信長を身近で感じていた茶々だからこそ、此の仕草は懐かしいものであり、秀頼に信長の魂が宿ったでは、と尚更思った。

そう思った時から、茶々は、秀頼を護り続けた。

秀頼に実権を握らせ、豊臣を再興する。

信長が嘗て今川の脅威から、織田家を守った様に、秀頼もまた豊臣家を徳川の脅威から守ってくれる。

茶々は、そう感じた。

だからこそ、秀頼も生きて、信長が待つ『未来(さき)』に辿り着かなければならない。

茶々は、秀頼の手を握り、大坂城にある天守閣の裏側に立ち、下を眺める。

眼下に広がるは、大坂城を焦がす黒煙と暗闇だけ。

何も見えないだけに、恐怖が茶々達の心を支配する。

だが…‥

「秀頼、往きますよ。」

茶々は再び秀頼に声を掛ける。

「はいっ、母上!」

秀頼は、力強く返事を返した。

其の返事に、茶々は頷くと、迷う事無く、暗闇へと身を踊らせたーーーー…‥










ーーnext

未来への道標 2







何処を見てるの?

黄金の瞳は、自分を映すのに、見ている先は、自分じゃなく、遥か遠くの『何処か』。

黄金の瞳には、ちゃんと自分の姿が在るのに。

何処を見てるの?

見ている『何処か』が解ったら、同じ道を歩めるのかな?

其の瞳が映す遥か先の『何処か』。

私に解る時が来るのかなーーーー…‥?










「予が見透す先、とな?」

「うん。叔父上の瞳には、茶々がちゃんと映っているのに、見つめているのは茶々じゃなくて、『何処』か遠くの先。だから、何を見てるのかな?って思って。」

茶々がそう語ると、信長は少し表情を驚愕の色に変えたが、直ぐに何時もの無表情に戻した。

「矢張り、聡いの、茶々は。」

信長は小さく笑う。

茶々は、信長をじ、と見つめる。

まるで、見る先を見極めようとするかの様に。

其れを見た信長は、更に小さく笑った。

「さて、何処であろうな。」

信長は視線を、蒼く澄んだ空に向けながら、そう呟く。

「…‥予が目指す『先』は、誰にも理解出来ぬよ。」

寂しそうな呟き。

「叔父上…‥」

「予が見つめる先は、市や長政ですら理解出来なかった。」

「父上と母上も?」

「…‥だからこそ、市は長政に着いたのだ。長政が目指す世は『理解し易い』からの。万人に理解出来る。予が目指す世は、誰にも理解出来ぬ上に『理解し難い』からの。例え、見据える先が『何か』を言の葉にしてもな。」

「そんな…‥っ」

「予は魔王が故に、皆には予の成す事、言う事、全て奇怪に見えておる。」

茶々の言葉を遮り、信長は肩をすぼめ、そう呟く。

「予が語るは、『人』の言に非ず。」

現在の世ならば、理解出来る信長の言。

然し、此の時代では、理解出来る者は皆無に等しく、信長の言を聞けば、誰しも『何を言っているのだ?』となる。

信長が目指す世は、『日ノ本泰平』では無く、『世界泰平』。

誰も見た事が無いものを信長は見ているのだ。

理解出来る筈も無い。

「そんな事無いよ。」

「卯ぬはそうやも知れぬが、他の者はそうでは無い。」

信長は茶々の言葉を否定する。

信長は全て解っていた。

自分が発する言葉を理解出来る者は、現在の世には存在せぬ、と。

自身が語る言葉に耳を傾けるも、皆、一様に不可解な表情を醸し出す。

妹の市ですら、そんな表情をするのだ。

だからこそ、『解り易い』長政の味方に着いたのだ。

「市は、今でも予が語る言の意味ですら、理解出来ておらぬだろうな。」

くつくつ、と信長は喉を鳴らして笑う。

「長秀殿は、理解出来ていたよ。」

「長秀は然り。が、全てを理解出来てはおらぬよ。」

「そうなの?」

茶々の問いに信長は、小さく頷く。

「『何と無く』は理解してよう。が、全てを理解してはいない。」

「………………‥」

茶々は、そう呟き、静かに目を伏せる信長を見て、茶々なりに思考を巡らせる。



信長の言う『言葉』を其のままの『意味』で理解するのは『間違い』。

では、其の『言葉』をどう理解すれば良いのか。

信長は『世界』を語る。

ならば、『世界』とは何か。



『世界』とは、地球上の人間社会のすべてであり、人間の社会全体である。

限定された社会ではなく、全ての社会の集合、全人類の社会。

地球上の全ての国を指し、万国であり、特定の一国ではなく全ての国々の意味でもあり、何らかの社会と関連のある空間を意味する。

人間など命あるものと関連づけられた、社会的、政治的、経済的ないし人文地理的概念の事でもある。



信長の考えは『世界』を意識したもの。

意識していたからこそ、宣教師の『世界』の話も理解出来た。

然し、茶々には理解は出来なかった。

『世界』とは何か、と自身なりに考えてはみたが、考えた事も無かった疑問に答え等出る筈も無かった。

「思考を止めよ、茶々。理解出来ぬ事を無理に理解しようとすらば、思考が混濁する。」

信長は、眉を寄せ、難しい表情をする茶々に優しくそう諭す。

「理解出来ぬから、皆、予に謀叛する。離反もする。理解出来ぬ思考を持つが故の『孤高』ぞ。」

「………………‥」

(叔父上の言う事は最もだ。けど…‥)

茶々は、再び思考する。

(謀叛や離反した者達は、理解しようとしたのだろうか。私の様に、思考を巡らせて、叔父上の言葉に真剣に耳を傾けたのだろうか。)

長秀は『何となく』だが理解出来ていた。

なら、長秀は信長の語る言葉を一言一句漏らす事無く聞いた、と言う事になる。

信長の口から紡ぎ出す言葉で一言でも理解出来るものがあれば、其れを拾い、自身なりに『こう言っているのだろう』と仮定していたのだろう。

でなければ、長秀が信長の意図を瞬時に理解し、信長が何も語らなくても事前行動等出来る筈が無い。

理解出来なくても、理解しようとする思考が大事なのだ。

「私も全て、とは言わないまでも、長秀殿みたいに、『何となく』でも理解したい。」

「で、あるか。」

信長は笑った。

茶々を小馬鹿にする様な笑いでは無い。

優しく、慈しむ様な笑い。

「…‥理解出来ぬと判断したらば、即刻に思考を止めよ、よいな?」

「うん、分かった。」

信長は茶々の素直な返事に、小さく満足気に頷いたーーーー…‥










赤く、紅く、真紅に染まる。

空も、景色も、全てが。

紅が染めるは、魔王が命。

今、正に紅が魔王を連れ去ろうとしていた。



「叔父上っ!!」

茶々は、燃える焔の中を無我夢中で走る。

消えようとする命を絶対に消すまい、として。

「叔父上っ!!」

返事は返って来ない。



どうして?

何で、叔父上が死ななければいけない?



死んで欲しい人達は死なずに、のうのうと今の世の中を腹立だしいぐらいにしぶとく生きているのに。

死んで欲しくない人ばかりを『天』は連れ去っていく。

最初は、茶々の父親・長政。

次に、生きてはいるが、生きながらに『死んで』いる母親・市。

そして、また、『天』は今、茶々から大事なものを奪おうとしていた。



奪ってくれるな。

やっと、やっと、叔父上が見据えていた『先』が『何』なのかが解ったのに。

奪われてしまったら、全てが皆無になる。



(漸く、一緒に其の先へと歩む事が出来るのに。)

茶々は、必死に駆ける。

そして、目の前に見慣れた漆黒が現れた。

「叔父上!」

茶々は、力の限りに叫んだ。

信長は、茶々の呼び声にゆっくりと振り返った。

近くに駆け寄り、信長の手を握る。

「叔父上、逃げましょう。」

「……‥否、予は此処までの様だ。」

「何を、言っているのですっ!漸く、漸く叔父上が見据える先が『何』なのかが解ったのに…‥っ!」

茶々の叫びに信長は、小さく『そうか』とだけ呟いた。

「理解したのならばーーーー…‥往け。」

信長は、とん、と茶々の肩を押す。

「え?」

茶々は一瞬、信長の行動が理解出来ずに、唖然とする。

「共に歩むは、予に非ず。故に、往け。」

「…‥っ!?茶々は、叔父上と…‥っ!」

「ならぬ。」

信長は、茶々の言葉を途中で遮る。

「予が目指す世を叶えるは、予に非ず。予の目指す世を叶えるは、卯ぬであり、未来(さき)を生きる者達ぞ。」

茶々は唇を噛む。

理解出来ぬ者は、信長の語る言の意味は不可解なものだろう。

だが、信長が目指す世が『何』なのかを理解した茶々には、信長の言う意味が理解出来ていた。

「でも、茶々は叔父上と一緒がいい。」

「茶々、予の存在を未来に求めてはならぬ。未来の世では、予の存在は異端故にな。」

此の意味も、茶々は理解出来た。

世界を、日ノ本を、変える為には、『絶対悪』が必要だ。



一悪を倒し、万人を救う。



聞こえはいいが、裏を返せば、自身を正当化するには、都合が良い言葉と言える。

だが、此の言葉もまた、信長が目指す世を叶える為には、必要なもの。

日ノ本が変わる時、応仁の乱では朝廷が、源平合戦では平氏が、丁寧寺の変では大内氏が『絶対悪』として滅びた。

先の世では、日本が世界戦争を引き起こした『絶対悪』として戦争責任を現在でも世界中から突き付けられている。

そして、今、『絶対悪』として、信長が消えようとしていた。

「往け。此の先に、茶々と共に歩んでくれる者が在る。」

信長は、す、と指先を伸ばし、見えぬ先を示す。

「叔父上…‥っ!」

茶々は、行くのを躊躇う。

「…‥未来(さき)で待っておる。」

行くのを躊躇う茶々を安心させる為に、信長はそう茶々に告げる。

其の言葉を聞き、茶々は此の場に留まりたい気持ちを抑え、踵を返し走り出した。

「其れで良い…‥往け、自身が信じる道を心のままに往け。」

信長は、目を細め、小さくなる茶々の背中にそう語り掛けると、自身は茶々が走って行った先とは逆の方向、焔の先へとゆっくり歩みを進めて行ったーーーー…‥










ーーnext

未来への道標 1

●前書き●



古い携帯のデータ整理していたら、アップし損ねたお話が何個か出て来たので、アップしますね。

真田丸ネタで御座います。

文字数制限の為、二部に分けてアップします。

ではでは、本編へどうぞ(^-^)/
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