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桜舞う随想【二十三幕・忠勝決断の刻】







「父上っ、徳川を裏切るのですかっ!!」

静かな部屋の一室で響く女性の慟哭。

父と呼ばれた者は、『裏切り』と言う言葉に否定の言の葉も、肯定の言の葉も吐き出す事はせずに、ただ黙って、真っ直ぐに女性を見つめる。

「父上っ!!」

何も語らない父に、女性が痺れを切らす。

「裏切り、か。稲は、そう取るか。」

ぽつり、とそう呟く。

「裏切りではありませんかっ!!」

其の呟きに、女性・稲姫は反応する。

「『命救いし、信長に恩を返す』是の何処が『裏切り』と観て取るか?」

「恩を返す、とは即ち、信長に仕えると言う事でしょう!武士は、尽くして恩を返す!ならば、父上は信長に着く、と言う意味でしょう!」

『武士とは?』の意味を間違った解釈で理解している稲姫。

(そんな間違いを植え付けたのは、他ならぬ父である某か…‥)

稲姫は幼き頃より、常に父・忠勝に付いて回っていた。

常に忠勝の生き様を見つめ、忠勝の行いを見つめ、忠勝を模範に生きてきた。

故に、稲姫にとって、武士とは『忠勝』なのである。

忠勝の家康に忠誠を誓い、家康の為に忠節を尽くし続けた姿を身近で見つめて来た。

つまり、稲姫の中では、忠勝の『信長に恩を返す』とは『家康を裏切り、信長に仕える』と言う意味になるのだ。

(…‥どう説明すればよいのか。)



信長は、忠勝を自分に仕せようとして、恩を着せる為に、命を救った訳ではない。

助けるも、見捨てるも、情だ、と信長は語っていた。



(ならば、某を救ったのも、自らの中にある『情』に従った、という事だろう。)

信長の言の葉の意味を稲姫に伝える事も出来るが、そうすれば、稲姫は『信長に惑(かど)わかされている』と激高するだろう。

何を言っても、稲姫に届かないのなら、語る事自体無駄だろう。

そうなれば、忠勝はもう黙るしか方法は無いのだ。

「何か言って下さいっ!父上っ!」

何かを言った処で、全てに反論するのならば、全ては無意味である事を稲姫は分かっていない。



語らないのは、説明する言の葉が無い訳ではない。

語る全てに、稲姫が『否』を唱えるから、語らないのだ。



「…‥稲に某の今の心境を悟れ、と言っても無駄だろうな。」

忠勝は、そう静かに呟き立ち上がると、静かに壁に立て掛けていた自らの愛槍・蜻蛉切りを手に取り、静かに構えた。

矛先は、稲姫に向けて。

「ちっ、父上っ、なっ、何をっ?!」

突然の忠勝の行動に、稲姫が戸惑う。

「何を語っても、稲に響かぬならば、『こうする』しかなかろう?」

忠勝は、僅かに寂しげな微笑を浮かべると、そう呟いた。

稲姫が忠勝の『今の』行動の意味を理解する事は不可能だろう。

『普通』に見れば、今の忠勝の行為は、家康に忠実な娘に対して刃を向けるのだから、徳川に対して、完全な『裏切り行為』になる。

だが、聡明で、勘の鋭い者から見れば、『成る程、そういう事か』と理解し、忠勝の行動に更に策を付け加えるだろう。

然し、残念な事に、今の此の空間には、忠勝と稲姫の二人しか居ない。

忠勝の行動を『真』に理解する者が居ない。

(だが、是は是で『好都合』。)

忠勝は心の中でそう呟くと、未だに唖然とする稲姫に向かって、蜻蛉切りを迷う事無く、振り下ろしたーーーー…‥










信長は、黙ったまま、目前に座る将を見つめる。

そして、将もまた、信長を見据える。

「……‥言葉少なきは難儀よの。」

信長はそう呟き、肩をすぼめて小さく笑った。

「誠に。」

将もまた、信長の言葉に、小さく笑った。

「忠勝殿…‥」

昌幸が、将の名を呼ぶ。

「気に召されるな、昌幸殿。娘をあの様に堅くなに育てたは某。全ての責は自らにある。」

忠勝がそう昌幸に告げた。

稲姫を気を失わせる力加減で、蜻蛉切り柄先で鳩尾を突いた後、忠勝は稲姫を其のままに、家康の屋敷を出て、信長の下へと馳せた。

そして、信長に謁見し、自らが此の場所に居る旨を伝えた。

「予は、卯ぬに恩を着せる為に、助けた訳では無い。」

「全ては承知の上。」

「では、何故?」

「信長殿の御言葉を借りるならば、某が此処に居るは『情』で御座る。自らの『情』に従って行動し、此処に居りまする。」

「で、あるか。」

忠勝の言葉に、信長は一瞬目を見開いたが、直ぐに目を細めると、小さく笑った。

「殿が某の行動を『裏切り』と取るならば、其れで良し。」

忠勝が迷う事無く、そう呟く。

「ですが、裏切り、と取られれば、忠勝殿の居場所は無くなってしまいます。」

側で話を聞いていた幸村が、そう懸念する。

「幸村よ、『居場所』は造ってもらうものではない。自身が造るものぞ。自身が『此処が自分が居るべき場所』と思わば、其処が自身の『居場所』ぞ。」

幸村の言の葉に、信長がそう伝える。

「故に、家康が忠勝を『裏切り者』と判断したからとて、『居場所』が無くなる訳では無い。」

昌幸もまた、信長の言の葉に続き、言の葉を紡いだ。

「ですが…‥っ」

幸村の言いたい事は、忠勝も、信長も、昌幸も皆、分かっていた。

どんな理由があるにしても、忠勝と稲姫は親子だ。

場合によっては、二人が相対する事も有り得るのだ。

「若武者よ、気にする事は御座らん。親子と言えど、敵対すらば、一介の武士。互いに掲げる志の為に、交えるのに迷いは無い。稲も承知の上で御座ろう。」

「覚悟が無くば、真の武士とは云わぬ。迷い有らば、戦場に出るは違なる事。家族と言えど、譲れぬもの有らば、刃を向けるも已む無しぞ。」

信長は、真っ直ぐに、誠実に語る。

其の言の葉は、力強き音となり、此の場に居る者全てに、聴覚では無く、脳覚に直接響いた。

其の言の葉に、忠勝も力強く頷いた。

「若武者よ、優しき心遣い痛み入る。」

忠勝は、幸村に頭を下げる。

そして、小さく笑んだ。

其の笑みは、古今無双と唱われる脅威は無く、全てを温かく包み込む優しさを醸し出していた。

「では、予は卯ぬを受け入れよう。だが、予の家臣としてでは無く、徳川の客将として迎え入れよう。」

「はっ、良しなに。」

信長の決断を忠勝は素直に受け入れ、頭を深々と下げた。

「五郎左。」

「はっ!」

「忠勝を。」

「はい、承知致しました。では、忠勝殿、此方に。」

信長と短いやり取りをした長秀が忠勝を促す。

忠勝も其れに頷き立ち上がると、信長に一礼をして、長秀と共に広間を後にした。

「信長公…‥」

忠勝を出たのを見計らって昌幸が信長に声を掛ける。

「うむ…‥恐らく、稲姫は忠勝を『裏切り者』として家康に報告するであろうな。」

「そして、其の報告を家康はどう取るのか…‥ですな。」

昌幸の言の葉に、信長は頷く。

「…‥さて、家康は聡明か、其れとも、ただの朴念仁か。」

「其れとも、大朴仁か。」

信長の言の葉の後に、昌幸が更に言の葉を加える。

「くくく…‥見物よの。」

信長は未来での家康を思い出しながら、此度の忠勝の行動をどう取るか想像した。

どっち付かずな態度が多かった家康。

其の度に、自身が助言を与えていたが、現在は全て自身で答えを出さなければいけない。

今回の忠勝の行動を、家康はどんな判断を下すのか。

「…‥失望させてくれるでないぞ、家康。」

信長は、そう呟くとくつくつ、と喉を鳴らして愉しそうに笑った。










ーーnext

桜舞う随想【閑幕10・孫市の断罪議論の刻】







雑賀孫市を捕縛し、容赦ない断罪を下し、信長達が屋敷に戻ると、凄い勢いで多数の人が走って来る足音が響いて来た。

昌幸は、其の音が何を意味するのか、瞬時に理解すると、小さく苦笑いを浮かべた。

「信長公っ!!!」

「叔父上っ!!!」

「信長殿っ!!!」

「煤I!?」

突然の激しい信之等三人の出迎えに信長は流石に驚き、身体を一瞬強張らせる。

「な、何ぞ?」

少し、怯みながらの問いに、昌幸は再び苦笑いを浮かべた。

「孫市から、顔を殴打されたと御聞き致しましたっ!!!」

信長の姪っ子・茶々が突然、そう信長に切り出した。

そして、其の茶々の言の葉に、信長達(昌幸省く)は驚愕の表情をした。



信長は先程、戻って来たばかり。

孫市を断罪したのも、つい先程。



一体、何処からそんなに早くに情報を仕入れた?!とツッコミを入れたいところだが、当の本人達は信長を囲って、凄い剣幕で詰め寄っていた。

「殴打、とは言うても、そんなに強くは…‥」

「強くなくとも、叔父上の美しくも美麗な御顔(←強調)に痣が残っている程です!強くない筈はありません!」

信長の言の葉を遮り、茶々は力説する。

「…………‥美麗って…私達、乙女を差し置いて、ちょっと酷くない?」

茶々等三人に囲まれ、喧々諤々(けんけんがくがく)言われている信長を見て、甲斐姫がぼそりと呟く。

「あら、そうかしら?信長公って、異性の私から見ても綺麗で素敵だなって思うけど?」

「!!?Σ( ̄ロ ̄lll)ひっ、姫様までっ?!」

「男性(なんしょう)に対して失礼かも知れないけど、信長公って偶に女性(にょしょう)っぽいところってあるよね。」

北条氏康の嫡女でもある早川殿が、少し、ニッコリ笑いながら、そう告げる。

「女の私より、女っぽいって…‥orz」

甲斐姫は、地味に落ち込む。

「其れに、赤くなっているではありませんかっ!!早く、冷やさないとっ!!」

幸村が茶々と同じぐらいの剣幕でそう叫ぶと、ぐい、っと信長の腕を引っ掴むと、其のまま信長を洗い場へと連れて行く。

「狽チ!?ゆっ、幸村っ!?」

信長は、掴んだ幸村の腕をほどこうとするが、何処から、そんな力があるんだ?!と、是又、つっこみたくなるぐらいに振りほどけなかった。

「幸村、予は…‥」

「『大丈夫』だ、なんて言わせませんっ!!」

「………………‥」



一刀両断されてしまった。



「茶々よ、予は…‥」

「黙って治療を受けて下さいっ!!」

「……………‥」



又もや、一刀両断されてしまった。



「凄い言の葉の迫力…‥信長公の黙り込んで、何も言えない姿って初めて見たわ…‥」

「其れだけ、愛されているって証拠よ、甲斐。私達が三郎を思う気持ちと同じ…‥ううん、其れ以上ね。」

「……‥女以上に大切にされるって…‥然も、幸村様や信之様みたいにカッコいい方が、乙女(自称)な私を綺麗に無視して信長様に深入りするって…‥私、女としての自信無くすわ…‥私って、女の魅力って無いのかしら?」

「そうじゃないわよ、甲斐。『男』だからとか『女』だからとか、そんなの関係ないと思うわ。幸村様も信之様も、信長公が自然と純粋に醸し出す魅力に、『織田信長』っていう人物に惹かれたのよ。ね?昌幸様。昌幸様も信之様達と『同じ』よね?」

早川殿はそう言うと、目を細めて、昌幸を見た。

「…‥そうだな。言い訳はせぬよ。儂は信長公に惹かれておる。」

昌幸は隠しもせずに、自身に正直な気持ちを言の葉を紡ぐ。

其の言の葉を紡ぎながら、信長を見つめる瞳は、柔らかく温かく穏やかなもの。

そんな昌幸の表情に、早川殿も甲斐姫も思わず見とれてしまう。

そして、視線を昌幸から信長に詰め寄っている信之達に向けると、信之も幸村も、姪っ子の茶々もまた、皆、信長に惹かれている、と言った昌幸の柔らかい表情と同じ表情をしていた。

信長もまた、信之達が自分を心配しての厳しい物言いである事を理解している為、強くは反抗もしないし、抵抗もしない。

「…‥優しいわよね、信長公って。」

「………‥まぁね。敵対してる時、私、信長公の事、悪く言ってたのに、其れすらも赦してしまうぐらいだもんね。」

甲斐姫は、敵対していた当時、信長を毛嫌いしていた。

信長を比喩する様な言の葉や、誹謗中傷する言の葉を随時、吐き出すぐらいに。

そんな事をしてしまえば、現在の時代では名誉毀損罪で捕まってしまうのだが、此の時代では、まだ、様々な罪状が確立されていない為、幾ら名誉を傷付ける罵声を吐き出しても誰も咎めはしない。

にしても、言い過ぎだろう、と周りが信長に同情する程に、甲斐姫の信長に対する罵りは酷かった。

にも関わらず、信長は甲斐姫を咎めるどころか、敵対して自分が行って来た執行(そぎょう)を考えれば、詮無き事、と言い、甲斐姫を赦したのだ。

甲斐姫は、信長の赦しを聞いて、今まで自分がどれだけ、信長と言う人物を誤解していたのだろう、と責めた。

噂だけで、上辺だけを見て、自身で、自身の中で勝手に信長像を造り出し、相手を罵った。

余りの自身の器量の狭さに泣けて来た程だ。

そして、暫く信長達のやり取りを眺めていると、自分達の後ろ側から、また新たな足音が聞こえて来た。

「あらあら、信長公も大変ね。」

早川殿が、ふふ、と小さく笑う。

「あー…‥一番の厄介が…‥」

甲斐姫がそう呟いた瞬間、すぱん、と軽快な音を立て、襖が開いた。

と、同時につかつか、と是又、軽快な足取りで、信長に向かって歩いて行った。

そして、信長を取り巻く信之達を押し退け、勢い良く信長の肩を掴んだ。

じ、と信長を見つめた後、ぺたぺた、と信長の身体を触り始めた。

「な…‥直政?」

「黙っていて下さい。」

「…………………‥」

ぴしゃり、と又もや信長の言の葉を遮り、直政と呼ばれた男は、信長の身体を触り続ける。

「………‥顔の痣以外は、外傷は無いですね。で、其の御顔の痣はどうしたのですか?」

「舶|っ!?Σ( ̄ロ ̄lll)」

甲斐姫は、直政の表情を見て、そう呟いた。

「孫市ですよ、直政殿。」

幸村がそう告げ、

「あの節操無し最低男が、叔父上の御顔に、痣を御造りになったのです!!」

茶々がそう宣言した。

「………‥赦すまじ、蛞蝓(なめくじ)軟弱男。」

幸村と茶々の言の葉を聞いた直政は、ぼそり、とそう呟いた。

瞬間、其の身に殺気と怨気を纏った。

「剥Xに、怖っ!?Σ( ̄ロ ̄lll)」

甲斐姫は、直政の纏った殺気を感じ、ずさり、と後退った。

「信長公、あの軟弱男には、どんな制裁を?」

「ん?あ、ああ…‥」

信長は、直政の気圧に若干、推されながらも、孫市に行った制裁を説明した。

「甘いっ!!!甘過ぎますっ!!!」

「Σ( ̄ロ ̄lll)」

一通り聞き終えた直政がそうきっぱりと叫んだ。

其の叫びに再び信長が驚き、小さく畏縮した。

「指を削ぐだけでは、甘過ぎますっ!!抵抗は、徹底的に削がなければ、軟弱男は少しでも抵抗出来る余地があれば、必ず、否、確実に、絶対的に信長公に牙を剥きますっ!!」

ぐ、と拳を握り、力説する直政に、信長は何も言い返す事をせずに聞いている。

此処で反論すれば、自分にとばっちりが来るのを信長は知っていた。

「指だけでは無く、汚く腐り切った手を手首ごと斬り落とし、自身に都合の良い話しか聞かない汚い耳を削ぎ落とし、生意気にも偉そうに偽善論を語るウザい舌を引き抜き、見つめられるだけでも気色の悪い目玉を切(く)り抜き、止めとばかり、肥溜めの様に臭い白駒(しらこ)玉(睾丸の事)潰してしまえば良かったのです!!!」

其処までしたら、確実に死にますって!?とツッコミ処満載で、さらっと何気に酷く残酷な仕打ちを口にしている直政に甲斐姫も早川殿も流石に苦笑いしか出て来ない。

「直政殿、肝心な箇所を忘れておりますよ。」

「ん?」

「足です。足が残ってます。足を残していたら、何もかも無くした状態でも、あの男なら、歩き回ってしまいます!」

「ああ、そうだったな。抵抗出来るあらゆる箇所を潰しておかねば。」

「ええ、徹底的に、確実に、です!」

「…………‥(((((((ーー;)」

直政と茶々の会話に、信長は少し後退りしながら、直政を自分の側付き副官にしたのは間違いだったか?と後悔心が生まれたのを感じていた。

「………………‥何か、信長さんがスッゴく善い人に見えて来た( ̄∇ ̄;)」

「…………………‥(;^_^A」

甲斐姫も、直政と茶々の言の葉を聞き、何気にそう呟き、早川殿はもう笑うしかなかった。

「で、信長公、軟弱ダメ男は何処に流刑となりましたか?」

「…………‥出雲萱津(かいづ・旧江津地方)国………‥」

「温いっ!!温過ぎます!!!」

再び、直政が駄目過ぎる宣言をする。

「あの男が日ノ本に居る、と言うだけで、何もかも赦すまじ、です!!此の日ノ本に残す事自体、甘過ぎです!!」

「………………‥然し、流刑箇所は限られておる…‥狽チ!?Σ( ̄ロ ̄lll)」

直政は、信長の肩を再びがっ、と掴む。

「そうだから、皆は付け上がるんですっ!!周りの抵抗を完璧に無くしたいのならば、見せしめに、孫市を徹底的に断滅すべきですっ!信長公っ!」

「な、何ぞ…‥ιι」

「今から、私は孫市断滅に行って参りますっ!!」

「狽ヲえぇっっ!?Σ(Д゚;/)/」

直政の言の葉に、甲斐姫が驚く。

「ちょっ、ちょっと、直政っ!其れは流石に遣り過ぎじゃ…‥」

「何処が遣り過ぎですかっ!!!信長公は、是までに孫市を赦し続けたのですよ!だが、然し、あの軟弱男は変わる処か、信長公に刃向かい続けたのですよ!」

「煤w歯』じゃなく『刃』なのっ!?Σ( ̄ロ ̄lll)」

「そうです!もう、軟弱男の行動は『歯』では無く、『刃』です!手の施しようもないくらいの鋭い『刃』です!」

ツッコミ処は其処じゃないだろっ!?と言いたい様な甲斐姫の言の葉に、直政は真剣にクソ真面目に返事を返した。

「そうですね、流刑にするならば、未だ知られ去る未開の地が宜しいかと。」

直政に、昌幸がとんでもない提案をする。

「拍ケ幸様っ!?Σ( ̄ロ ̄lll)」

「おや?何か物言いでも?信長公を此処まで苦しめたのです。其れなりの苦痛を味わってもらわねばな。生きているより、死んだ方がマシだ、と思わせる程に、ね。」

くつくつ、と笑いながら、昌幸もまたクソ恐ろしい事を口にする。

「………………‥( ̄∇ ̄;)」

「………………‥((((;゜Д゜)))」

もう、甲斐姫も信長も何も言わない。

否、何も言えない、が正解かも知れない。

「最果の北にある島国、とかね。」

「其れは提案ですね!」

未だに、孫市処断について語り合う昌幸達を見つめながら、甲斐姫達は信長に降って味方になって、心の奥底から良かった、と感じていた。










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