前書き
リクエスト作品です。
優梨華様リクエストです。
ヒーローズ2ネタです。
ぶっちゃけ、ヒーローズ2はした事無いです。
そう伝えましたら、美味しいネタがあるんで、教えますんで、書いて下さい、と頼まれまして(^_^;)
で、実際に送られてきました。
動画メールで。
見る事、10分。
物の見事にノックダウンでした(^_^;)
確かに美味しいネタだ。
是は書かずして何とするっ!!!ってな事で書かせて頂きました。
元ネタは『ミネアが、朽ち果てた寺院にて、信長を目覚めさせる』です。
実際、ゲームでは、ミネア一人で行かなさるんですが、本編ではわんさか(笑)居りまする。
で、御約束、信長さん皆さんにモテております(笑)
では、本編(下へスクロール)へどうぞ。
・
冷たい風が吹き荒ぶ。
太陽は、眩しいばかりに輝いているのに、此の場所だけ、別世界の様に薄暗く、流れる空気も冷たい。
「な、何か不気味な所ね・・・」
周りを見渡しながら、フードパーカーを身に纏った少女が恐る恐る声を掛ける。
そんな言葉すら、聞いていないかの様に、一人の占い師は、足を進める。
そして、暫く進むと景色は一変する。
焼き爛れた木々。
焼き崩れた寺院。
最早、其の寺院は在りし日の面影は留めて等いなかった。
激しく燃え盛ったのだろう所々土がどす黒く染まっていた。
「一体、此処で何が遭ったんだ・・・?」
まるで、何者かの襲撃を受け、全てを破壊尽くされた様な場景に、剣士が訝しげに呟く。
其の呟きに、少女もまた小さく頷く。
「ねぇ、ミネア、本当に此処で合ってるの?」
最初に呟いた少女とは別の薄桃色の髪の少女がそう占い師・ミネアに問い掛ける。
「ええ、此処で合っているわ。ババ様の占いの場所は間違いなく此処よ。」
「って、何もないじゃない。燃えて崩れた建物以外・・・」
「おい、彼処にうっすら光っている場所があるぞ。」
少女の言葉を遮り、剣士が指を指す。
ミネアは、ゆっくりと顔を上げ、剣士が指を差した方向に自ら手にした水晶玉を掲げる。
すると、其の光が水晶玉の淡い光に反応して、輝きを強くする。
「間違いないわ。此処に古の傑者(けんじゃ)は眠っているわ。」
ミネアは、其の光にゆっくりと近付く。
そして、其の光と向き合い、水晶玉を高く掲げる。
「私達に力を貸してくれるかしら。」
少女が不安そうに呟く。
「さあ、どうだろうな・・・あの占い師の言葉だと『生半可な覚悟』で向き合えば、此の傑者は目覚める事すらしない、と言っていたが・・・」
剣士は、ミネアの目覚めの儀式を見つめながら、そう呟く。
『破壊尽くされ、廃墟と化した寺院にて、『人』でありながら『魔王』で在った一人の英傑が眠る。』
そう占ったのは、ミネアの恩師でもある年老いた占い師。
世界を救う戦いを挑むべき、一人でも多くの力在る者を求めるミネア達。
未だ、此の広き世界には、ミネア達が出会った事のない力在る者達が眠っていると知った。
其の者達を仲間にすべく、ミネア達は探索を始めた。
何処を探せばいいか分からず、占い師に占って貰えば、返って来た答えが此の一言であった。
『英傑』と聞き、少女と少年は旨を踊らせた。
どんな武勇伝を持つ英傑なのか。
眠りに付く前は、どんな活躍を見せたのか。
期待に旨を膨らませた。
だが、そんな二人とは裏腹に占い師は険しく厳しい表情で言葉を続けた。
『目覚めさせるつもりあらば、生半可な覚悟で相対する事、罷り成らぬ。』
『ババ様、其れはどういう意味でしょうか。』
ミネアが訝しげに問えば、小さく首を左右に振る。
『済まぬが、是以上は詳しくは視えぬ。』
占い師はそう告げた。
『・・・理屈はどうあれ、力在る者ならば、目覚めさせるに濾した事はない。』
大剣を背負った少年が腕を組み、そう告げた。
『そうね、取り敢えず、其の寺院に行ってみましょう。世界に平和を取り戻したい、少なくとも此の思いは生半可なものではないもの。』
『そうだな。』
少年の言葉に、少女も頷く。
皆は、少し戸惑いを見せた。が、
『兎に角、行ってみよう。』
別の少年の言葉に、皆は不安はあるものの行ってみない事には始まらない、と思い、少年の言葉に頷き、其の少年に同意した。
(『生半可な覚悟』・・・意味は分からないけど、世界を救いたいという気持ちは皆同じ。此の思いの強さは真実。だから、きっと、大丈夫。)
ミネアは、ぎゅっ、と水晶玉を握り締め、自分にそう言い聞かせる。
「古の時代より眠りし英傑よ、我の声に応えよ。汝、此の光見えしならば呼応せよ。我は汝を目覚め示し者なり。今こそ、其の力を解放し、我の前に姿現さしめたまえ。」
ミネアが言霊を発する。
水晶玉の光が強くなり共鳴が生まれる。
誰もが目覚める、と信じて疑わなかった。
此の強き光が収まれば、目の前には誰かが立っている。
そう思っていた。
だが、ミネアが言霊を唱え終わり、光が消え去った後、目の前には誰も立ってはおらず、ただ、一部が淡い光を放つばかりだった。
「どうして・・・っ!」
少女が苦痛な叫びを放つ。
「どうしてっ、応えてはくれないのっ!!皆も、私も、ツェザールも、生半可な気持ちで此処には居ないわっ!!何が・・・っ、何が足りないのよっ!!!」
「テレシア・・・」
少女・テレシアの叫びに皆は沈黙する。
古の英傑は、目覚めようとはしない。
何が『生半可な覚悟』なのかが分からない。
そんな苛立ちがテレシアの中に生まれる。
「フ・・・所詮は闇に堕ちた英傑、って事か。」
「ツェザール?」
「目覚めないのは、そういう事だろ?闇に堕ち、魔族の王と成り下がった人間が、今更、人に力を貸す理由はない、って事だろ。」
「・・・・」
ツェザールは、鼻で笑い、目覚める気配のない英傑を嘲笑う。
「・・・果たしてそうだろうか。」
ツェザールの言葉に異を唱えたのは、背中に盾を背負った少年・テリーだった。
「・・・?」
そんなテリーをツェザールは訝しげに見た。
テリーは淡く光を放つ箇所へと近付きながら、言葉を続けた。
「闇に堕ちたのならば、何故、此の者は『英傑』と讃えられる?実際に、闇に堕ち、魔族の王と成り果てただけならば、人は『英傑』として讃えはしないだろう?逆に、此の者を罵り、軽蔑し、『英傑』ではなく、『悪』として伝承するだろう。違うか?」
「そ、其れは・・・」
「其れに占い師が言っていただろう?『人で在りながら』と。」
「あ・・・」
テリーの言葉にテレシアが声を上げた。
「傑者の言う『生半可な覚悟』。其れが何を指すのか、何を意味するのか、其れが分かれば、目覚めてくれる筈・・・」
ミネアは、再び光に向き合った。
「『生半可な覚悟』。其れを対象にしている人物なら、俺は分かったぜ。」
ミネアに、テリーがそう告げる。
「え?」
「其れって誰なのよ。」
テレシアの後ろに控えていたもう一人の少女がテリーに食って掛かる。
「ラゼル、テレシア、ツェザールの三人だ。」
「え?」
「俺達・・・?」
テリーの言葉に、三人は顔を見合せる。
「そうだ。元々、此の世界は、アンタ等が住む世界で、俺達は、別世界からやってきた余所者だ。此の世界が滅びようと知った事ではないし、此の世界を救う為に、命を懸ける義理もない。俺達が住む世界じゃないからな。だとすれば、当て嵌まるのは、此の世界に住む住人、アンタ等って事さ。」
テリーは、そう説明する。
「覚悟なら当の昔に出来ている!」
「私だってっ!」
「俺だって!」
三人が興奮して、テリーに叫ぶ。
「なら、何で目覚めないんだ?覚悟が出来ているなら、目覚める筈だろ?目覚めないって事は、アンタ等三人の覚悟が『生半可』なものって事だろ?」
「俺は、戦いで沢山の人が死んでいくのを見た!苦しみ、哀しんでいる者も!だから、もう二度とこんな奴等が現れない様に、此の世界に平穏を取り戻す為に戦うと誓った!」
「俺もツェザールと同じ気持ちだ!」
「私だってそうよ!」
「是の何処が『生半可』だって言うんだ!!!」
ツェザールは、光に向かってそう叫んだ。
だが、そんなツェザールの言葉に答える事は無く、光は淡い輝きを称えるばかりだった。
「くそっ!!」
ツェザールは苛立ちで地を蹴った。
「・・・・ツェザールさん、一つ聞いても宜しいでしょうか。」
じっと淡い光を見つめていたミネアが不意にそう声を掛けてきた。
「何だ?」
「貴方方三人は曾て敵対していた、と話で伺いましたが、其の時、抱いた『覚悟』は何だったのですか?」
ミネアの言葉に、テレシアは首を傾げる。
「覚悟?覚悟なんてしてないわよ。」
「していない?どうしてでしょうか。」
「どうしてって・・・する必要なんてないでしょ?あの時は、ツェザールの勘違いだったんだし、其れに、幼馴染だし、話をすれば分かってくれるって信じてたもの。ね、ラゼル。」
「ああ。」
テレシアの言葉に、ラゼルは頷く。
其の言葉を聞いて、ミネアは真剣な表情をした。
「テレシアさんの言葉を聞いて、傑者が目覚めない理由が分かりました。」
「え・・・?」
「テレシアさん、『其の事』自体が『生半可』なのです。」
「ど、どういう事?!」
ミネアの言葉に、少女が驚く。
「ああ、成る程、そういう事か。」
ミネアの言葉を理解したテリーが納得した様に頷いた。
「つまりは、ツェザールが大軍を率いてやってきたにも関わらず、幼馴染だから、という理由だけで街を、其の街に住む民達を『命懸け』で守らなかったのが『生半可』だって事だ。」
「『命懸け』なんて大袈裟な・・・ツェザールは勘違いしていただけなのよ?」
「実際には、勘違いだったかも知れない。けどな、あの時の事を思い出してみろ。あの時、ツェザールはどんな『感情』を抱いて、攻めて来た?」
「・・・あの時は、父を殺したオレンカ王が憎くて、憎くて、殺してやりたい、国を滅ぼし、父以上の苦しみを味合わせてやりたい、と思っていた。」
テリーの言葉にツェザールは言葉を紡ぐ。
「そんな『感情』を持って攻めて来た相手に、コイツ等は『親友だから、話せば分かる』『勘違いをしている』という呑気な事を考えながら、剣を取った。街が滅ぶかも知れない、多くの平民の命が失われるかも知れない、という『危機感』等持たずにな。」
「其れの何がいけないって言うのっ!!親友なのよっ!!幼い頃から一緒に居たのよっ!!そんな親友を殺すなんて出来る筈ないじゃないっ!!」
テレシアは、テリーに悲痛な叫びを上げる。
「・・・此処に眠る傑者は、曾て、親兄弟をも手に掛けたと、ババ様から聞きました。そして、妹が嫁いだ国を攻め込み、其の国を滅ぼしたとも・・・」
「なっ・・・っ?!」
ミネアの言葉に、ツェザールは言葉を失う。
「酷い・・・血も涙もないのね。兄弟や親、そして、妹が嫁いだ国まで攻めて・・・何とも思わなかったのかしら。」
「何とも思わなかったんじゃねーの?実際に殺してんだから。・・・ああ、だから『魔王』か。」
テレシアの言葉に返事を返し、ラゼルが納得した様に頷いた。
「成る程な・・・」
ツェザールも納得した様にラゼルと同じく頷いた。
「勝手に解釈して、勝手に納得するな、馬鹿者共。俺が最初に言っただろうが。親兄弟達を手に掛け、妹が嫁いだ国を攻め滅ぼした事が、『魔王』と称される切欠だったとしても、其れでも、『英傑』と讃えられる事は可笑しいだろうが。」
テリーが呆れた声でそう諭す。
「何とも思わなかったなんて、そんな事なかったと思います。だって、血を分けた兄弟や妹ですよ?平気な筈はありません。」
「なら、何で・・・っ!」
「だから、『覚悟』を持っているか、いないか、の違いだろ?」
テリーの言葉にミネアが頷く。
「はい、そうです。『覚悟』です。此の傑者が身内と相対した時、此の者が抱いた『覚悟』です。此の者には、強い志がありました。戦いを無くし、戦いの苦しみ、悲しみから民を救う、という・・・」
「其れが何故、親兄弟を殺すという非道な行いに繋がるんだ?」
「そうよ、そう思っていたのなら、殺す必要なんてないじゃない。逆に、普通なら共に手を携えて歩もうって考えるんじゃない?」
二人の言葉にミネアは目を伏せる。
「人間誰しも、同じ考えを持ってる訳じゃねぇ。皆、全く異なる考えを持ってる。全く異なる考えを持つ者同士がぶつかり合うから、争いが起きる。恐らく、英傑の考えと、兄弟達の考えが異なってしまい、何らかの形で争いが起こってしまった、という事だ。」
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