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Familias conference

はい。皆さんお揃いですな。それでは第38回、ファミリア会議を始めたいと思います。





真夜中のギルド シャングリ・ラの四阿で、煌々と月光に照らされながら徨夜が言った。目の前にはファミリアの皇(ウサギ)、グラント(大鴉)、白波(白蛇)、黒辿(サソリ)、ミッシュ(ハリネズミ)、スコット(カワウソ)、炯(大ムカデ)と白馬のミリアム、栃栗毛のコネリー、黒馬のキーツ。
そして人型をとっている黒髪の美丈夫(ソリオン)と金髪の美形(イリューシャ)。

四阿のテーブルにはファミリアの契約時に使われるコントリアン(徨夜いわく、きびだんご)というペレットが複数の皿に山と積まれている。椅子に座っているのは徨夜と人型をとっているソリオンとイリューシャの3人だけで、その他はテーブルに直に座ったり、床に座ったりしている。

こほん。

咳払いをひとつして徨夜が話し始めた。


「最近、ギルドにニュータイプが入ったろ?それに対抗するためにオレもファミリアを増やそうと思う。ってか対抗とかどうでも良いからファミリア増やしたい。ネズミキツネザルかウォンバットかクォッカワラビーかクスクスかワオキツネザルかロージーメイプルモスも捨てがたい……いや、ホッキョクウサギも気になるし、いやいや!!皇よ、こりャ浮気じャないからなッ!!」


カリポリと草食ファミリア用のコントリアンを食べている皇にずずいっと顔を近付けて弁明をしたが、当本人(本ウサギ?)は喧しいと言わんばかりに頭を振って耳による往復ビンタをお見舞いした。


「oh…ありがと、…寛大だな。」


地味に痛かったらしく両手で顔を隠して着席すると、むかって左にいるミッシュがスコットと話ながらも徨夜へと視線をむけた。2人(匹?)とも見掛けに反して落ち着いた、壮年の男性のような低い声のトーンで会話している。


「仲間が増えるのは賛成だよ、ね?スコット」

「いいや!!僕は反対だね!!これ以上増やしてどうするつもりだ?えぇ?」

「ちョ、スコットや、落ち着けって…」

「まさか僕らの楽しみを奪おうと言うのか?」

「ンン……。そこまでは言ってないと思うけど……」

「ミッシュは黙ってろ!!」

「はいはい。」


スコットに噛みつかれんばかりに反論されたミッシュはその小さな肩をやれやれ、と竦めて皇の隣へと移動した。どうやらミッシュよりもスコットの方が少し幼いらしい。
そんなスコットが地団駄を踏みながら徨夜に抗議をするもんだからその首に巻かれている青いマフラーがゆらゆら揺れている


「大体、ニュータイプってなんだ!!あれはただの魔獣だろ!!」

「ニュータイプのな。」

「それならこちらにも居るだろう!!節操なしの両刃が!!」


小さな小さな手で、何処から持ち出したやら(徨夜のコレクション)お高いブランデーを飲んでいる黒髪の美丈夫、ソリオンを指差した。まるで指名のように徨夜とスコットの視線を受けて、微笑むように口角を上げたソリオンが言う。


「まぁ、否定はしないね。何たって僕は快楽主義だから」


グラスを少し傾けてウィンクをひとつ。隣のイリューシャはというと、ブランデーには目もくれず腕を組んで話を聞いている。それにすら噛み付こうとしたスコットを窘めるように嗄れ声が落ちた。


「お言葉だが、ソリオンとイリューシャは常に居るわけではないがね」


声の持ち主は大鴉のグラント。その大振りな翼を腕のように伸ばして羽繕いしながら言った。


「それに、君らとて常時居るわけではあるまいに。」

「然り。」


グラントに続いたのは鈴のように凛とした女声を持つ白蛇の白波。ここでそろそろ気になるのが、ファミリアの大半が人語を話しているということだ。普通、ファミリアは人語を理解しても喉の構造上話すことは出来ない。だのにこのファミリア達(ソリオンとイリューシャは魔獣なので論外)は会話している。
まぁ、徨夜お得意の魔術で会話出来るようになっているのだろう。まったくもって無駄に秀でた頭脳である。


「んー……。じャあ、スコットとミッシュの邪魔しないから増やしても良いか?」

「ぼくらのゴシゴシはまいにちだよ!!」


ブルルル、と鼻を鳴らしたキーツが言った。いやに幼い声である。


「ゴシゴシ……あァ、ブラッシングな。はいはい、毎日毎日。」

「やる気ないな、コイツ」

「まぁ…、いざとなったら轄主(クサビヌシ)に頼みましょう。」


徨夜のやる気ない態度に溜め息を吐いたコネリーとミリアム。轄主とは契約主とは別に、そのファミリアを管理している者を指す言葉である。主に騎乗系ファミリアに対して使われており、この場合は契約主が徨夜だが、ミリアムの轄主はレイでコネリーの轄主は黒兎となる。ちなみに、キーツは契約主である徨夜が同時に轄主にあたる。


そんなこんなで話が進み月も明度を失いつつある頃、最終的には勝手にしろ。とばかりに匙を投げられる。確かに安くはないコントリアン(きびだんご)を多種多様、それぞれの個性に合わせて、もはや狂気と言って良いほど執着して入手する徨夜なら次にどのファミリアを増やそうとも虐待だなんだと騒がれる事はない。
というか、1ファミリア増やすのに何せ38回も会議を開かれちゃあ、いい加減にしろと文句の1つや2つ、3つや4つ、5つや9つは許される範囲内で、むしろ今回発言しなかったサソリの黒辿や、大ムカデの炯がどう思っているのか気になる所ではある。

彼ら(彼女ら?)が会話に参加するのはごく稀で、最近ファミリアとしてやってきた炯(大ムカデ)なんぞは人見知り(ファミリア見知り?)なのかろくすっぽ会話、もしくは意思の疎通をした試しがない。

そんな2匹の意思も、人語を話すファミリア達の意見も綺麗にまるっと無視するのが徨夜で、実際にこの会議が終わった早朝(日の出前)には「甲乙つけがたいので、目線を合わせた者をファミリアにする」に収まった。

本当に何の意味があるんだこの会議は…。状態である。


辺りが朝日で照らされ始める。月光とは別の光から逃げるようにして徨夜は自室である地下室へと急いだ。それを見送ったのは3頭の馬達で、その他はコントリアンを食べたり、のんびり寛いだりしている。日光に弱いのは主である徨夜だけでファミリア達には何の問題もないのだから。






その後、徨夜のファミリアが増えたのかどうかは今の所、誰も知らない。








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