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Unfinished story

鳥兜、紫陽花、梅、菖蒲、梔子、野茨。
着物、と呼ばれる和装に銀糸の綺羅びやかな糸で形どられた6つの神の花。そして7つめの、主神たる神に捧げる太陽のような花は名前しか知らない。光の無い常夜にはきっと似合わない。


クレアシオンのお貴族様の護衛でやって来た陽告国の祭。もちろん、徨夜が1人で請けた訳ではなく、件のお貴族様の隣にはレイと陽告の出身である黒兎がいた。少し、いや、かなり離れた日陰から徨夜は3人を見ている。

陽告の首都、天照宮(テンショウ ノ ミヤ)で開催される祭には国を守護する神と同じ数の、7つの花と7つの神宮を護っている神官。そしてその神官に引かれてお披露目される7つの山車が。それには神の服装をした人形が1人体ずつ乗っている。其々の神を象徴する獣の仮面を付けた山車を引く大行列は神楽と呼ばれる舞いを各所で披露しながら進んでいく。
ちょうどレイ達の前で狼の仮面と鳥兜の刺繍が施された着物の大行列が舞いを披露していた。


―殺せ。


ゾッとする程冷たく、相反して甘い声が響いた。それと同時に刺すような痛みが鎖骨に走る。周りには聞こえていないのか、ただ神楽に見とれていた。が、あちらこちらで不自然に目を見張ったものもいる。ほんの少しの緊張感、そしてその視線の向かう先にあるのはレイと黒兎―――
ではなく、今回の依頼人である貴族の男。

あの声が聞こえる人間に覚えがある。それは徨夜に声が聞こえたように、まず間違いなく常夜国の人間だ。それも、1人や2人ではない。あの貴族は何をしでかしたというのか。
まさかレイと黒兎の2人のみで対処しきれるとは思っていない。ゆっくりと歩き出すと刺客たちも同じ様に動き出した。

頭上にある縄に結ばれた紙垂(しで)が警戒するように震え始める。封魔の術により更に力を増した紙垂の垂れ下がる領域では何人たりとも魔術を使う事が出来ない。それは神の依代とも呼ばれている人形を守るためだと黒兎が言っていた。
仮に、その領域で魔術を使えばどうなるか。それは聞いていないし、聞いた所で前例がないと言われるのが目に見えている。

しかし、そんな事も言ってられないのが現実。常夜の人間は命令に叛いたりはしない。良くも悪くも忠実。反抗を知らない人形。

あと少し、ほんの数歩の距離でレイが異変に気付いた。貴族の腕を掴もうとする手を払い除けて辺りを見回す。祭を見ていない者達に気付いたのだ。黒兎もそれとなく貴族の背後に回り、刺客に牽制をする。その牽制に効果はない。そう伝えてやっても良い。

群衆と刺客の1人が投げた魔石が発動させた魔術とが相まって、辺りがパニックに揺れる。











と、この後は徨夜が刺客と戦ったり、逃げ出したり、返り討ちにあったり色々続く予定でした(笑)



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