静かな住宅街のとある家の一室


三人殺した

男二人と女が一人

人…彼らは人なのだろうか
人の形をした何かなのは間違いないのだが、人では無いだろう
ザックリと口を開き、血を吐き続けている自分の手のひらを眺め、そう云い聞かせた

これは正当防衛であり、自身を守る為には仕方がないのだと

目の前に転がっている死体に目をやると、一人はまだ生きているらしく呻き声を上げながらフラフラと立ち上がった

助けて欲しい
貴方にした事は謝るから
殺さないで

私は彼女が弱々しく云う事を全て拒否した

元々こうなったのは彼女ら人もどきの所為なのだ
ただ近くを通り掛かっただけで切り付けてきて挙句、監禁して更に暴行を加えようとしたのだから

頭に血が上り、すがり付いてきた女を蹴り飛ばした
悲鳴も上げられないらしく、ただ呻くだけだ
恐らくこのまま放置すれば、いずれは死ぬだろう
私は女をそのままにして部屋を出ると、ドアを開けられないように外から細工を施した
相変わらず女は呻いていた

切れた手を水道で洗うと、近くにあったタオルを巻いて彼女らの家を出る

雪が降っていた
それはうっすらと辺りを白く染めており、全てが冷えきっているのだと分かった
だが、不思議と寒くはない

何食わぬ顔で家の前に倒れていた自分の自転車を起こすと、それをひいてその場を後にした

途中、あの家に回覧板を回しに来た中年女性と鉢合わせしたが『誰も居ないみたいですよ』と云うと『ああ、そうなの』と引き返していった

偖、さっさと遠くに行ってしまおう

白く染まった道にタイヤの跡を付けながら帰路へついた




偖、人を殺害する夢と云うのは内容的に凶兆を現すような気がするが、実はその真逆らしく自分の欠点や未熟な部分を改善していこうとする前向きな気持を示すそうだ
また、これまでの嫌な自分や、後悔の念やわだかまりなどの苦い思いを捨て、自分を変えたいという気持ちの表れでもあるらしい


まぁ悪い夢ではないのだが、目覚めがかなり悪いので嬉しいのか嬉しくないのかは微妙なところだ