話題:ひとりごと

昨日の夜は何度も金縛りに遭った上に、隣で寝ていた相方が急に天井を指差しながら説教のようなものを始めたのが洒落にならないくらい怖かった。

事の顛末はこうだ。
寝付けずうだうだと布団の中で過ごしていると、隣からボソボソと喋る声が聞こえてきた。
聞き耳を立てていると、どうやら説教、或いは責めるような言葉が不明瞭ながらに聞こえてくる。
何だ寝言か…夢の中でも説教してるなんて仕事熱心…否、余程不満が溜まっているんだろうな…そんな事をぼんやりと考えていると耳鳴りがし、突然体が動かなくなった。

金縛りだ…そう思った時には既に声が出なくなっており、どうにか動こうとするが首以外はびくともしない。
そうこうしている内に、何かが絡み付いて引っ張られるような感覚を右腕に覚えパニックに。
何とか気付いてもらおうと、唯一動く首を隣で寝ていた相方に向ける。
すると、相変わらず寝言を云い続けていた相方が徐ろに腕を上げ、天井を指さした。

『だから…君は……なんだ…』

天井に広がる闇に向け、説教を続ける。

何か居るのだろうか?
バクバクと鳴る心臓の音をBGMに、相方の指が差す先に目を向けるが何も見えない。声を出そうとするが、喉からは声にならない声が掠れた呼吸音と共に漏れるだけだった。
どのくらいの間、そうしていたのかは分からない。
長くも短くも感じたが暫くすると相方の説教が終わり、体もいつの間にか動くようになっていた。

やっと終わった…。

胸を撫で下ろし、どうにか寝ようと目を閉じると不意にリビングから何かが弾けるような音が響いた。
その瞬間、何かがじわじわとこちらへ近付いてくるような気配を感じ、咄嗟に身構えるとそのまま体が動かなくなった。
無駄だと分かってはいたが、再び相方に声を掛けようと口を開く。

声はやはり出ない。
全く出ない訳ではないが『あ、あ、あ…』と言葉にならない呻き声だけが途切れ途切れに喉の奥から溢れ続け、もがいている内にいつの間にか動けるようになった。
その後も金縛りになっては動けるようになるのを何度か繰り返し、その間にどうやら寝付けたらしく気付けば朝になっていた。


昨夜の出来事が夢か現か判然としないが、一つだけはっきりと云える事がある。

見てはいけないものが見えなくて良かったと…。