前田さんが来ました。
前田さんというのは大学時代の友人です。友人。貴重な関係です。
この曖昧meな私が、臆することなく実名を出して紹介できる。そういう意味でも稀少な方です。

前田さんが来た日は休みで、一緒にうどんを食べたりお風呂に入ったりしました。
その次の日から仕事でした。今日やっと慌ただしい諸々が終わりました。疲れました。世間の人はいつも五連勤(なおかつそれ以上)していてすごいですね──話がそれました。
前田さんのことはまた改めて書こうと思います。前田さん教習がんばってね。

前田さんと別れた次の朝、台風が去って代わりにポストに一通の手紙が入っていました。ちゃんと読みました。もうすぐお返事したためます。

だいぶ久々に本を読みました。
長田弘『私の好きな孤独』

京都で買った本です。
好きだと感じる一節が沢山あって、栞では足りないので花の付箋を挟みながら読みました。付箋のなかに紛れて一枚だけ、叡山電鉄の乗車券が入っています。一乗寺駅の。
一乗寺から海を渡りこんな田舎にやって来て、この本も大変だなと思います。

エッセー集です。まとまりがないようであるテーマたち。

街角で見かける風景、何でもないような日常、群衆。色、音、形。
普段見過ごしている景色の中に本当は私たちの琴線に触れているはずの何かがあって、気づいてはいるけど表現として組み換える前に取りこぼしてしまう──という核心を見事に映し出して教えてくれる。そんな良質のエッセーでした。

例えば私は「地下鉄」という手段がどうしても苦手なのですが、存在としては嫌いではありません。でもこれだけ言っても何がどうなのかわからないでしょ。

〈誰もがいる。そして、誰もがいなくなる。プラットホームとは、そうした場所だ。/プラットホームでは、誰もが無口だ。ぽつんと立っている。(中略)
どんなに近く傍らに立っている人についても、どんな人なのか、たがいに知らない。どこでどんな日々をもつ人か、知ることもない。/プラットホームでは、誰もが誰に対しても、誰でもない人間なのだ。〉

(「駅で」より)

こういう文を読んだときに、だから苦手で、だから嫌いではないのかなと思ったりしました。感情を人の言葉に丸投げするわけではないけれど、知るよすがにしてみたい。

エッセーだけど所々掌編のようでもあり、一篇の詩のようでもあり。リアリティと浮遊感を背中あわせで持つ不思議な本でした。

あとこの本、最後が「青」についての話で終わるところがすごく好きです。すごく良い。

〈海の青さに、こころを染めたいときがある。「海を見にゆく」という言い方が好きだ。海の色を見に、海にゆく。〉

(「われらをめぐる青」より)

めっちゃ良くないですか。最後の一文もめっちゃ良いんですよ。ここには引かないけど。
読むと孤独になれます。よい意味で。
開くたび好きだと思うので逆に本を閉じてしまいます。そのうち慣れるでしょう。

さて漫画の話をします。これが書きたかったのにここまで何で遠回りしたのか。

甲子園に行きたくてそういう漫画を読んでいます。

河原和音『青空エール(1〜7)』

七巻まで読みました。

小野つばさは昔見た野球応援の光景に憧れて、経験がゼロにもかかわらず吹奏楽の名門・白翔高校に入学した。その入学式当日、つばさは山田という男子と出会う。
彼は野球部の選手として、甲子園を目指し白翔に来た一人だった……。

思ってたよりピュア路線だったし思ってたより本格的な吹奏楽ものでした。ついハルチカシリーズを思い出してしまう。
あと意外と展開が早くて驚きました。もう!? ってなったけどその引っ張りでかえって物語が良くなった感じ。
水島くんのほうが好きだけど水島くんにフラグは立ててほしくないです。

「どれだけ時間があっても結局ずっと好きなこと(部活)をしてると思うよ」というような台詞(意訳です)が印象的でした。

感情の推移が丁寧に描かれていてわかりやすいです。先が気になるよ〜
しかし現時点で十八巻まで出ています!(どうしよう)


ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』

一回戦が終わるところまで読みました。
はじめミハシくんのグズグズ加減にドン引きだったのですが途中からドラマチッチーーとーーめられそぉにーーないーー
という感じでした。ドキドキ止まらなかったです。
劇的ではなくギリッギリの攻防だからこそ緊張感がすごいです。ひとつ回が終わるたびに監督と一緒に「ふぅ〜〜ッ」となります。西浦のマネさんが可愛いです。
榛名さんと一回戦のピッチャー顔似てないですか。途中まで同じ人だと思ってました。そういえば昔アニメ見たときも同じこと思ってたのも思い出しました。(内容忘れてた)
余談ですが、おお振りのアニメが地上波でかかってたクールって傑作ぞろいで、とくに
・おおきく振りかぶって
・鋼鉄三国志
・ワールド・デストラクション
この三作品に関しては「三大気弱主人公」と心のなかで枠組みを作っていました。どの作品も好きでした。ワールドデス以下略以外のふたつは大きいお姉さん向けでした。ワールドデス以下略は叩かれもするけどめちゃんこ面白かってんで。
ちなみに同じ時期に『隠の王』もかかってましたね。アニメの独特な色使いとOPが大好きでした。しゃーらーーっ
ピンクのお兄さんの回が好きです。

話がそれました。

おまけです、私の好きなやきう漫画。

冨樫義博『レベルE』

いや、思えば第一話から野球漫画だったよね……?
あの地方大会決勝の話たいへん好きです。ふざけてるけどきちんと青春ものとしてしめてるし。

江口寿『すすめ!パイレーツ』

真おにいちゃんの完全試合の話が好きでした。あれもわりとシリアスやったやん!

青山剛昌『四番サード』

「甲子園に連れてって!」ときたら私のなかではこの作品!


南波あつこ『太陽は君に輝く』

女子マネさんの話です。
南波さん出てきたときあまりの絵の可愛さにみんな衝撃を受けたんですよ〜〜ほんとに!

三浦衛里子『高校球児ザワさん』

都澤理紗(ザワさん)は高校球児。……女子の。
はっきり言いますザワさんは傑作なのでぜひ読みましょう。面白くて切なくなります。傑作です。

「ザワさん」のイントネーションが私、たぶん間違ってる(キャラバンと同じ発音で呼んでたけどおそらく尼さんのほう)。


最近あんまり本買ってなかったけどまたこうして本の話ができてよかったね。
私、本屋に入った瞬間にそれまで欲しいと思っていた全ての本を失ってしまうんです。
あれが欲しい、こんなのが読みたいと決めて来たはずなのに棚の前に立ったときに何もかもわからなくなってしまう。


〈古本屋というのは、ふしぎなのだ。こんな本が欲しい。そう決めて探しにゆくと、だめなのだ。まず見つからない。〉

(長田弘『私の好きな孤独』から「古くて新しい」より引用)

古本屋だけじゃない。実体としての本屋というのは、そういう所のようだ。
本屋に長くいるとつらくなってくる。本当に欲しかったものって何だったんだろう、こんなにいて、どうしてわからないんだろう。早く帰ればいいのに。でも帰りたくない。見つけてから帰りたい。

本と人との間にもコミュニケーション能力は試されている。




最近読んだ漫画