話題:今日見た夢

朝日が登る前の早朝にも関わらず、スピーカーで何事かを騒ぎ立てる車が家の周辺を走り回っていた。
あまりの騒がしさに目を覚ました私は、相手に気付かれないようにカーテンの隙間から外を覗いた。
しんしんと雪が降り積もる中、黒塗りのセダンがゆっくりと何かを探すように進んでいたが、私の家の目の前を僅かに通り過ぎるとぴたりと停止した。
ブレーキランプが、カーテン越しに暗い室内を赤く染める。
嫌な予感がして隣の部屋に駆け込むと、ほぼ同じタイミングで車から誰が降り、そして此方に歩いてくる足音がした。

ドアチャイムの音がする。

カーテンが閉まっていて窓から様子を伺う事は出来ないが、寒さの所為か震えている吐息、詳細の分からない独り言、服の擦れる微かな音…玄関に誰かが居る気配を嫌でも感じてしまう。
寒さと緊張感で歯がガチガチと音を立てるのをどうにか堪え、得体の知れない訪問者が去るのをひたすら待っていた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
冷え切って痛む手に息を吹き掛けながら、何となしに雪明かりで白く浮かび上がる掃き出し窓へ目をやると、カーテン越しに人の影が動き回っているのに気付いた。
その仕草はカーテンの下の隙間から室内を伺おうとしているように見える。

思わず息が詰まる。
僅かでも呼吸音を漏らしてはいけないと、無意識に肺へと送る酸素を遮断した。
身体を縮こまらせたまま身動ぐ事も出来ない。

カラカラと窓が開く乾いた音がした。

悲鳴をあげそうになり咄嗟に手で口を塞ぐ。
どうしたらいいのか分からないまま、窓を見つめているとカーテンの下から手が這うように入ってくると動けずにいた私の腕を掴んだ。
堪えきれず悲鳴が出る。我ながら耳障りな声だ。



…此処に居たんですねぇ



いつの間にか全開になっていたカーテンから、背広姿の男がニヤニヤとした笑みを浮かべて此方を見つめていた。