涙拭けよ


そんな姿見たら誰だって心配になりますわ








夢日誌:誰も居ない世界


自分以外、誰も居なくなっていた。



誰か居ないか街中を探し回ってみたが、喧騒の無くなった街には見る者が居ない街頭スクリーンから流れる音声と歩行者用信号機の音楽のみが響いている。

無人の建物から煌々と漏れる光。
点滅を繰り返す利用者が居ない信号機。
誰も居ない地上を照らす街灯。

電気はまだ生きているようだが、それを利用する人間は誰一人として見付からず、発電所を管理する者も居ないとなれば近い内に消えてしまうのだろう。

ああ、世界から人間が消えてしまったのだろうか?
それともこの国からだけ?
いや、もしかしたらこの街からだけ人間が消えてしまったのかも知れない。

ひょっとしたら違う所なら誰か居るかも知れない…そんな僅かな可能性に掛け、道路に転がっていた主の居ないバイクに乗ると無人の街を疾走した。

途中でバイクの燃料が無くなり走行不能になると、違うバイクに乗り換えて誰かと出会えるまでひたすら走り続けた。
空腹になれば無人の商店から食料を持ち出して腹を満たし、自然から何かしらの洗礼を受ければ主人の居ない家屋を間借りした。

そうして別の街に辿り着いては誰も居ない事を嘆いて、次の街にはきっと誰か居る筈と根拠の無い希望を見出だし走り続ける。
そうしていないと孤独に押し潰されてしまいそうだった。











ふと気付くと宙を漂っていた。




何が起こったのか分からず、ただ空の上から地上を見下ろしていると身体がどんどん上昇していき、最終的には宇宙から地球を見下ろしていた。
人工衛星や、それ以外の浮遊物も多く視界に入ったが、今までテレビの映像でしか見た事がない真っ青に輝く故郷を暫く眺め、綺麗だな…そう思いながら安堵の中、目を閉じた。
もう孤独ではないのだ。






周りには自分と同じように大勢の人間が漂っているのだから。





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