幼い頃に住んでいた家に居た。
今時珍しい長屋造りの古い貸家。
家族以外の存在が一緒に暮らしていた今は無き家。

学校が終わり家に帰ると縁側に姉が居た。優しい声で『おかえり』と云ってくれる。
けれども彼女と私は全く面識が無く、いつの間にか家族に溶け込んでいた。そんな存在の姉だったが優しく、遊んでくれる彼女の事が大好きだった。

そんな姉は私の感覚?を自らに移せる人だった。
それが分かったのは夜、一緒に眠っている時に私が金縛りになったのを肩替わりしてくれた。
否、金縛りなのかはなった事が今まで無いので分からないが足の先から痺れ、やがて身体中の感覚が無くなり身体が動かす事が出来なくなった。
その恐怖で泣いていると姉が目を覚まし、私の身体を撫でてくれた。
すると身体の感覚が戻り、動かす事が出来た。が、代わりに姉が苦悶の表情を浮かべる。
それでも『大丈夫だよ』と私を慰めてくれた。

偖、姉の他にもう一人、面識の無い家族が居た。

兄だ。

我が家は私が長子で妹が下に一人居るだけなので姉は勿論、兄も居なかった。
なのに彼は存在していた。

ただ、姉の様に印象に残る事も無く、唯一記憶にぼんやりと残っているのは彼には白目が無かった事。
白目の無い、黒目だけの目をしていた。
その目で見られると意識が吸い込まれそうだった。

実際、私が夢から覚めたのは兄に見詰められたから。

頭の中が真っ白になったかと思うと、いつの間にか目を覚ましていた。

いつもならこの手の夢を見ると、異様に疲れているのだが今日は逆に気分が良い。


怖くて不思議な夢だった。