――新郎控え室――
「知ってたよ。京子が沢田のことが好きだって。沢田も京子が好きで…沢田には沢田なりの考えがあって事だろうけどさ…両思いのクセになかなかくっつかなくてさ……だからさ、言ってやったんだ。沢田に『俺がもらっていい?』って。さすがの沢田も動くだろうと思ってさ。でもアイツ『……どうぞ。オレはどうこう言える立場じゃないですから…』拳を握り締めて……どう見てもさ……心にも思ってもないこと言いやがって……馬鹿だよ…。だから俺、頭にきて京子にプロポーズした。最初は断ってきたよ。だけど押しに押しまくった。最後まで京子は物凄く悩んでたよ。俺の事は確かに愛してる。だけどその愛は、友愛とか兄妹愛とかそういったものでしかなくて、恋愛的なものじゃないから…。だからまあ、こうなるわなー…」
「一つ聞いていいですか?英次さんは恋愛的な意味で京子ちゃんのこと好きじゃなかったのにプロポーズしたんですか?」
「恋愛的な意味で好きだよ。好きだからこそ幸せになってほしいんだよ。分かるだろ?ハルちゃんなら…沢田の背中を押してやった君なら…」
「……ごめんなさい」
「謝らるなよ…俺はハルちゃんを責めるつもりもないし、憎むつもりもない。もちろん怒ってもないよ。………さて、披露宴パーティーはできないけど代わりに失恋パーティーでも始めるか!」
2010-8-23 07:17
※悲恋モノです
――教会――
純白のウエディングドレスに身を包んだ花嫁がバージンロードを一歩一歩新郎の元へと進んでいく
新郎が花嫁の手を取り、二人は牧師の下へ
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを近いますか?」
「はい、誓います」
牧師の問いに新郎である英次が答え
新婦の京子もそれに答えようと口を開いたその時だった
教会の扉が勢いよく開かれる
二人は驚き振り返る
そこには一人の男性が立っていた
その男性は足早にバージンロードを歩き
二人の前で立ち止まった
いや、京子の前で立ち止まった
「…ツ、ナ、くん……」
そして男性は京子に手を差し伸べる
「京子ちゃん…俺と一緒に行こう」
男性――綱吉がそう告げた
京子は綱吉を選んだ
綱吉と京子は手を取り合い、教会の外へと掛けていった
教会から外へ出るといういう一歩手前で京子は一度だけ振り返った
苦笑している英次が見えた
2010-8-22 02:01