俺は風になった。
って過去形にしちゃ駄目じゃん!!
なんか俺死んじゃったみたいじゃん!!
俺は風になっている。
そう、これだ!
過去形じゃなく現在進行形ね。
ここテストに出るよ!
いや、こんな余裕かましてる場合じゃないんだけどね。
なんで余裕がないって?
両手にトンファー持った綺麗な顔したお兄さんが物凄い早さで俺を追っかけてくるんです!!
なんのホラー映画だ、ゴラァ!!
Excuse me.
つい取り乱してしまいました。
ついさっきまで俺は自室で三時のおやつであるケーキを優雅に食していただけなのです。
なのに、そこへいきなり部屋に侵入してきた綺麗な顔したお兄さんがなんの前触れもなく俺を攻撃してきたのです!!
なんなんだ、いったい!?
俺が何かしましたか?
あっ!
優雅にっていうのは嘘です。
ごく普通に食べてました。
でもいきなり襲撃される覚えは1ミクロンもありませんことよ!!
で、痛いのは嫌いなので(大抵の人はそうだろ?)なんとか攻撃をかわしつつ、父さんのいる屋敷の最奥にある執務室へと全力疾走をしているしだいです。
なんたって俺の父さんはマフィアのボスなんだぜ!!
きっと赤子の手を捻るより簡単に倒してくれる・・・はずだ。
信じてるよ、父さん!!
え?
他力本願。
虎の威を借りる狐。
はっ!なんとでも言えばいいさ!
俺は生きのびるためなら虎にでもライオンにでも威を借りまくってやるさ!!
*
命からがらやっとの思いで父さんのいる執務室に辿りつき勢いまかせに扉を開けて、そしてそのまま勢いまかせに父さんに抱きつく俺。
だって、マジで死にたくないんだ!!
「うわっ!ってエイジ君!?どうしたの?」
俺が勢いまかせに抱きついたものだから少しよろけはしたものの、ちゃんと俺をキャッチしてくれたナイスな父さん。
後で肩でも揉ませてください。
「た、助けて、父さん!俺まだ死にたくない!死にたくないんだ!!俺、まだ(この体では)童貞なんだ!童貞のまま死にたくないんだ!!」
「えぇぇ!!!死にたくない理由がそんなことなの!?って、なんてこと口走ってるの!?」
「そんなことって、大事なことじゃないか!!男の股かゲフンゲフン沽券に関わることじゃん!!」
「と、とにかく落ち着こうかエイジ君」
た、確かに…父親に抱きついて言うことじゃないよな…。
とりあえず落ち着くために抱きついたまま深呼吸。
そしてその間に、綺麗な顔したお兄さんは優雅な仕草でソファーに腰掛け、当事者の俺を無視して父さん達は話はさくさくと進めた。
「で、雲雀さん。俺の息子に何の用ですか?」
「ちょっと頼まれてね」
「いったい誰に何を頼まれたんですか?」
「ああ、それは「俺が頼んだんだぞ」
「リボーン!?」
どこから現れたんですか!?
「そろそろエイジの家庭教師を決めようと思ってな」
うん。まったく理解不能なんですけど…
分からないことは恥ずかしがらずに質問すべし、というわけで俺は挙手をして質問する。
ちなみに俺はまだ父さんから離れていません。
だって離れたとたんに撲殺されたらどーすんだ!!
「はい、リボーンさん!質問でーす!!」
「なんだ?」
「どうして家庭教師を決めるのにドッキドキサイバル☆命かけの鬼ごっこをしなきゃならないんですかー?」
「いい質問だ。どうだった雲雀?」
「僕の専門外だったよ。表立ってボンゴレボスの息子をかみ殺せると思ったのに残念だよ」
恐ろしい人!!
なんてこと言うんだ、この兄ちゃん!!
やっぱり本能に従って死ぬ気で逃げてよかった。
「そのうえ忌々しいアレと同じ属性だったよ」
「睨んだ通りだな」
「忌々しいアレ…骸と同じ…ってことはエイジ君は霧属性なの!?えぇぇ!!」
六道さん、あんた無茶苦茶言われてんぞ。
何したんだよ、いったい…
というかミストが何なのさ?
「そんなに驚くことじゃないだろうが、ダメツナが。少し考えればなんとなく分からないでもないぞ。何故、今の今までこいつの存在に誰も気付かなかった?ボンゴレの諜報部を舐めんじゃねーぞ。普通ならもっと早くにこいつの存在を、情報を掴むはずだ。なのに、こいつの母親が死ぬ直前までボンゴレはこいつの存在、情報すら掴んでなかった。どう考えてもおかしいだろうが」
「確かに…」
「ならば何故?それはこいつの母親が霧属性でなんらかの術を使って自分たちの存在を隠していた。こう考えるとしっくりこないか?」
しっくりきません。
どんだけ凄いミストなんだよ!?
というか俺の母さんはミスト使いのびっくり人間だったの!?
母さん頼むよー、そういうことはちゃんと俺に言っといてくれないと。
俺がちゃんとそのことを知ってて自己申告してたらドッキドキサイバル☆命がけの鬼ごっこなんてしなくて済んだんだからさー
「なるほど…」
「母親が霧ならば息子も霧でもおかしくはないだろうが、確信がなかった。そこで雲雀にちょっと遊んでやってくれと頼んだわけだ。案の定こいつは死ぬ気で逃げ、属性が判明したわけだ」
ちょっと遊んで…
命をかけた遊びなんて俺は断固として遊びだと認めない!!
認めないぞー!!
「まあ、そういう訳だから僕は帰る」
「ああ、助かったぞ雲雀」
「気が向いたらまた遊んであげるから楽しみにしていたらいいよ」
という不吉な台詞を残し部屋から去っていった綺麗な顔したお兄さんもとい、雲雀さん。
一生気が向かなくていいです。
なんて怖くて言えません。
「それはそれとして、…もっと穏便なやり方はなかったのか?」
「あったぞ。というか骸からすでに報告されてりして」
「リボーン!!」
「だってだって、面白そうだったんだもん」
「と、父さん…俺、泣いていい?泣いていいよね?というか泣くから」
俺は父さんに抱きついたまま本気で泣いた。
「ほ〜ら、エイジ君。高い高〜い」
必死で俺を慰めようとしている父さんには悪いがそんなんで泣き止むわけがない。
それは赤ちゃんのあやし方だ。
というわけで引き続き泣くことにする。
そうしてめでたく(?)俺の家庭教師は六道さんに決定しました。
◆◇◆◇◆◇
はい。というわけでエイジ君は大空属性ではなく霧属性なのよというお話でした。
家庭教師もリボーンさんではなく骸さんです。