を信じていないから推理小説が書けるのだ
 ――――有栖川有栖「異形の客」より


Kindle版の表紙かっこいいですね。ドラマ面白かったです。異形の客、包帯男が泊まりに来る以外の部分を忘れていたのでドラマを観たあとに読み直しました。火村先生が最後にあの台詞を言うのがこの話だったんですね。
「ホテル・ラフレシア」や「暗い宿」といった幻想的な話のほうが好みなので、実は「異形の客」は『暗い宿』の話のなかで一番苦手意識があったのですが、今回のドラマをきっかけ克服できそうです。
犯行にいたる動機や、ある人物の、顔にまつわる症状など、そういう心の中にまで迫っていく推理がいいと思います。人が狂う瞬間を暴くの。
海奈良と英国庭園はこれで勘弁な!って感じでしたね。はい。

私、自分の髪をハサミでざく切りにする夢を見たのですがその夢を見た日に有栖川ドラマを観たら「異形の客」の冒頭で女の人がハサミで髪の毛を切っている場面があって怖かったです。

文庫版は解説がすごくいい解説だなと読み直して思いました。
そう!!それ!!!!とぶんぶん振り回したくなる。
解説って本の世界から現実へ戻ってくるためのドアみたいなものだと思うんですけど、ただの扉ではいけなくて、自分が本の世界で味わったことの理解者であり、まだ言葉におき換えられない記憶をうまく噛み砕いて心の中に残してくれる案内人であって、要は解説が良ければその読書体験はなおさらいいものになりますよね(語彙力が下がってきている)……。
有栖川せんせーの作品が好きな人は『暗い宿』の解説を読もう。

『暗い宿』からひとつドラマになったから姉妹作の『怪しい店』からも「古物の魔」あたりをドラマで見てみたい……。有栖川先生は夜を書く作家であり心の夜も書く人だなと思います。

いま思ったけどドラマの火村とアリスは「ミステリ夢十夜」のテンションに近いと思うんだ。


前置きが長くなりました(前置きとは)
今回は異形コレクションということで。
購入した城平京原作の漫画二作も異形コレクションでしたので紹介します。

『天賀井さんは案外ふつう(1)』

スパイラルコンビ復活!
懐かしいですね。あとがきのあの感じ。キャラクターのこの感じ。スパイラルって六百万部も売れてたんですね。そりゃ画集二つ出るよね。

はじめ表紙から受けたイメージだと
右の女の子がひとくせもふたくせもあるアクの強いキャラクターで、左の男の子がそれに振り回される系の話かなと思いました。
……その予想は色々な面で裏切られることになるのですがそれはまあ読んだ人だけが知るお楽しみでよいと思います。

話のあらすじ
転校生の天賀井(てんがい)さんは最初の自己紹介で「兄が実家で座敷牢に入っていてその無実を証明するため転入してきた」と驚くべき経歴を打ち明ける。
クラスのみんなは当然ドン引き、天賀井さんは自然と孤立。ぼっち飯を食べているところにクラスメイトの真木くんと副担任の先生が密会している場面を目撃してしまい、二人の秘密の関係を知ってしまう。秘密を知られた真木くんは天賀井さんの「調査」に協力することになったのだが、彼も何やらわけありらしく……。

話も人物(人?)も斜め上から吹っ飛んでくる感じなので面白いかどうかというより「これからどうなっていくの……」という気持ちのほうが読んでてつよい。未知との遭遇を読みながら体感できます。
ジャンルとしては「日常伝奇コメディ」らしいです。それはジャンルなのか。
コメディだから後味悪くないし日常ものだから短く終わるとあとがきにあって絶対嘘だと思いました。ほんとに?ほんとか?
色っぽい展開がないというのは本当だと思います。天賀井さんがんばって。

言葉で腑に落ちないことがあとから絵で開示されて、先入観からの誤解がとける、そんなミステリ要素もきちんとあります。
天賀井さんのキャラデザやばいと思います。いやかわいいですけど。真木くんがくえない男でこれから楽しみです。まだお互い味方かどうかもはっきりしてないもんね!


『虚構推理(コミック版)』


文庫版が知らないうちに売り切れていたので漫画から読みます。
天賀井さんが「日常伝奇コメディ」ならこちらは「非日常伝奇ミステリ」なのでしょうか。ラブ色はきっとこちらの方が強いです。いっそラブだけにしたほうが……いえ。
これもまだ二巻は人物が出揃ったかなという段階なので早く続きが知りたいです。
タイトルだけがちょっとひっかかって不安です。虚構の推理とは。
一話が一番好きです。

手塚治虫の『どろろ』を思い出します。

城平さんの書く恋愛ってちょっと歪んでないですか。でも何故か悪い気はしません。



これは何かというとむかしアリアという雑誌で連載されていたまんがです。私は好きでしたがわりと早々に終わって悲しかったです。ちなみに男の娘がメインヒロインです。



最近読んだ漫画