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なくしていく夏

暑中お見舞い申し上げます。
昼間は庭先の花も虫たちもうだるような苦しさですが、朝と夜が少しだけ涼しくなったように思います。いかがお過ごしでしょうか。

私の夏、とくに七月は親知らずの発現から始まり、他人への不条理を噛み締め自分の体力の衰えを隠しきれず、エアコンの急逝で幕を閉じるという、お世辞にも幸せだとは言い切れない月でした。
それでも久しぶりに友人とご飯をつまみながらゆっくり話をしたり、一日を習い事漬けで過ごしたり、ひねもす他人からいただいたもので食事を乗り越えたり、好きな喫茶店に出掛けて手紙をしたためたりと、自分のために時間を費やせた貴重な月でもありました。

しかし八月はおそらく七月よりも忙しく、また、新たな別れもいくつか控えています。だからといって神様が助けてくれるわけでもないし、日々をひとつひとつ大切に過ごすしかないみたいです。

暑い熱い日が続きますが、どうかお体にはお気を付けてお過ごしください。
変わらないようで日々死んでいく夏です。
残り少ないですが、お互いにとってよき夏になりますように。



夏の贈り物のかわりに。
本多孝好『MISSING』


〈夏はどうしてこんなに気持ちいいのでしょう〉
    (「瑠璃」より)

つながらない五つの物語が収められた短編集。まだスタンダード、というかシンプルなミステリ路線にいたころの作品。
夏にまつわる話が多くて、そのせいか表紙もとてもせつない感じになっています。いい表紙です。

おそらく話としては「瑠璃」が一番人気があるのでは、と思うのですが私は「祈灯」が最も好きです。読み終わったあとに残される余韻のあり方がいい。

〈そのささやかな暮らしのために祈る人と、そのささやかな暮らしを呪う人と〉
    (「祈灯」より)

人の無力さと、抱える心の薄暗さということをどの話でも書いているのだけど、ただ無力だと突き放すのではなくてそれでもどこかへ向かう、もがきのようなものが書かれてあるのがいいなと思います。
運命を受け入れているけど、受け入れられてない感じ。

「瑠璃」はすごく残酷な話だなと思って……思っていたんですけど今回また読んでみたら辛いだけの話でもないんだなという感想を持ちました。
最後の「僕」の行動も、どうして開けないの、と腑に落ちない気持ちが読んでいてあったのだけど、いま読むとそれも以前よりはすんなりと受け入れられました。いつか開けるのかもしれない、でもきっとずっと開けないのだろう。それでもいつかは、開けて欲しい。そんなふうに自分の中で希望を持って読めたのが今回。
「つまらないただの二十四の女なの」という台詞にぎくっとする、そんな年頃になりました……。


「彼の棲む場所」だけ少し色が違っていて、これはのちの作品にもつながっていくずるさみたいなものを持っています。繰り出される思考が、精神的にだいぶ変態っぽくて好きです。
みんな、『正義のミカタ』読もう。私からの課題図書!




本多さんの本よんでると、たまにほんとに不意にはっとつらくなる瞬間があって、でもそのシリアスが嫌いじゃない。
逆に読んでてずっと辛い話というのもあって、そちらはあまり得意じゃない。


◆ ◆ ◆


この夏は、暑中見舞いを書きました。
そのなごりです。書いてない人あてに。
暑中見舞いは宛先をあみだくじにして、厳正なるはがきトーナメント(誰にどのはがきをあてるかの抽選)をしました。
私にしては珍しく早めに準備をして、はがきたちを寝かせておいたのですが、あとから疲れているときに宛名を書く作業をしていたら事故がたくさん発生しました。(宛名を間違える等)
健全な精神のときにのみ健全な手紙は生まれるようです。

ちなみに親知らずもエアコンもまだ何も治って(直って)いません。ずるずる。
壊れてしまって初めて、うちは割りと涼しいらしいことに気がつきました。

このまえ偶然高校時代の友人に会いました。好きな人がいるんだと教えてくれて、こわごわその話をこぼしてくれるその子を見ていると可愛かったです。ちょっとうらやましかった。
一緒に花火をして告白するところまで妄想してあげたらしばかれました。私はそういうのばかり得意なんです。
「好きやけん……!」とか花火の最中に女の子に隣で言われたら僕ならいちころですけど……。(まず「いちころ」という言葉のセンスに問題があるのでは)

もうすぐ携帯を買い換えようと思うので、この日記をこの端末から書くのももうないかもしれません。三年ほど一緒に過ごしてくれた子でした。
そんなふうに、この日記も変化がないようで裏ではたまに何かが失われているのですね。

もう八月で、もう夜涼しくて、夏は果てがないようで意外と短い命なんだなと昨日の晩にぼんやり思いました。だから日記も書いておこう、そんな気持ちで今回は書きました。おわり。





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