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SHR

あ…再提出だ。
机の上に置かれた問題集の付箋を見つけて、山崎は目を見張った。
課題の存在を忘れていたり答え合わせを忘れていたりというのはしばしばあることである。が、この課題はちゃんと完成形に持っていったはず。
四角の中は全部埋めた。丸もつけた。答え合わせのときに調子に乗って花丸までつけたのも鮮明に覚えている。
なのに、自分は何を抜かしたのか。

「きりーつ。れーい」
「おはようございまーす」

頭をボリボリかきながら教室に入ってきた担任との定形の挨拶を軽く流しながら席に着くと、ペラペラと問題集のページをめくった。
…やっている。間違いなくやっている。記憶してたものと全く同じものが目の前にある。なのになぜだ。なぜ再提出なんだ。
ふと、山崎は付箋に目を移し、気づいた。淡い黄色の上に赤ボールペンで『再提出』と書かれた付箋。その根本が今開いているページに、ない。
まさか、課題のページを間違えたんじゃ……。

「ね、ねぇ長谷川君、この前の英語の課題ってユニット8だったよね?」
「え?あー、いや確か7じゃなかったかな。えーっと…うん、7だわ」

隣の席の長谷川は、自分の問題集を開いて確認すると答えた。

「どうかしたの?」
「いや、その、ちょっとね、あははははー…」

その、まさかだった。課題のページそのものを間違えていたのだ。
ああ、これは抜かす以前の問題じゃないか。
山崎は深く深くため息をついた。


「――というわけで山崎、頼んだぞー」
「へ?何が?」
「何がってお前聞いてなかったのかよ」
「放課後のワックス掛け当番アルよ」
「よろしくな山崎!」
「さすが山崎でさァ」
「え、ちょっと待っ、え?なんで俺!?というわけでまでの流れが全く想像できないんだけど!」
「お前が一番ワックス掛けやりたそうな顔してた」
「それただの押し付けじゃないですか!やりたくないよ俺だって!理不尽だァァ!」
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