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「持ってきやしたぜ」

どす、と教卓にプリントやら問題集やらを山積みに置いた。
ちらりと視線を落とすと一番上の山崎退と書かれた英語の問題集に再提出の付箋が貼ってあった。ばーか。

「ありがと沖田君。助かったわ」

黒板に時間割の変更を書きながら、彼女が顔を向けた。

「どーいたしまして」

手をひらひらと振って返す。
教卓の近くの席に腰かけて教室を見回せば、当然のことながら二人以外誰もいない。カリカリというチョークの音も、耳をすませば聞こえる呼吸音も、今は自分しか知らない。
彼女を独り占めしているような優越感に浸って、にんまりとほくそえんだ。

「ねえ沖田君」

どうやら書き終わったらしい彼女が自分のもとへ歩み寄る。

「なんですかィ?」
「放課後、空いてる?」
「放課後?部活サボったらまあ空いてやすけど…どうかしやしたか?」
「今日のお礼がしたくて。アイスでも奢ろうと思ったんだけど…部活サボっちゃダメよね」

即座にブンブンと首を横に振る。

「全然大丈夫でさァ!土方はテキトーにごまかしやすし」

総悟ォォォ!という土方さんの声が聞こえた気がしたが無視だ。

「そう。じゃあ放課後ね」
「ええ。あ、でも」
「何?…もしかして甘いモノ嫌いだったかしら」
「いや、そうじゃなくて」

もっと甘いモノ、欲しいんですけどねィ。
彼女の細い手首を掴んで引き寄せて、耳元で囁く。

「え、ちょ、沖田くんっ」
「お礼、くれるんでしょ」
「なっ」

顎をとらえると、眉をひそめると同時に耳がだんだん紅く染まっていく。
そのとき、廊下からドタドタという凄まじい足音が響いてきた。やっぱり来たか。死ね土方。
少し心残りはあったが、顎から手をそっと離した。

「冗談でさァ」
「…びっくりした。もう少しで殴るとこだったわ」

ポキポキと指を鳴らす様子からこちらは冗談ではなかったらしい。
やめておいてよかったのかもしれない。惜しいけど。
そこに、例のイラつく野郎が現れた。肩で息をしてるから、相当走ってきたみたいだ。

「死ね土方。あ、間違えた。おはようごぜーやす」
「どんな間違え方ァ!?明らか本心出たよね!?っつか総悟!お前」
「おはよう土方君。今日は早いのね」
「っお、おぅ、まあな。…総悟!ちょっと廊下来い」
「はいはい。朝からうるせェ人でさァ。じゃあ姐さん、放課後に」
「放課後ってなんのことだ」
「土方さんには関係ありやせん死ね」
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