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チョコレート症候群の症状例

「ちょっと、銀さん」
「んー」
「んー、じゃありません退いてください」

なんなのこの甘えん坊。一体何歳児かしら。
後ろからシートベルトのように首に巻きついた、甘えの割にたくましすぎる二本の腕をやっとのことで外してから、妙はその腕の持ち主を見据えた。目がいつも以上に死んでいる。きっと死んだ魚を超えただろう(だったらもうそれは目じゃないのではないか)
だいたい、いつもならこんなにくっついてきたりはしない。自分をぬいぐるみか何かと勘違いしてるんじゃないか。それならクロスカウンターをお見舞いする。が。
これは異常だ。妙に払われやり場のなくなった手が空中をさ迷っている。

「どうしちゃったんですか銀さん」
「チョコレートが食べたい。甘いものが欲しい」
「ああ、糖分切れだったの」

糖尿病寸前だっていうのに、甘いものへの執着心がやたらと強い。本人に治そうという気はあるのだろうか。
妙が呆れていると、また腕が、今度は前から妙をすっぽりと包み込んだ。

「私は甘いものじゃないです」
「だってお妙甘い匂いするもん」
「食べられませんよ」
「いい」

ぎゅー、とさらに力を込め、その香りを全部嗅ごうとする。
いつもならここで拳の一つは飛ぶのだが、妙の母性がそれを許し、その綿菓子のようなふわふわの頭を優しく撫でた。

「お妙がいりゃ甘いもんもいらねェわ」

チョコレートよりも綿菓子よりもずっと甘くて優しい香り。
彼はすっかりその香りの虜なのである。


お題:にやり

カルピス愛憎劇

「飲む?」
「え?」
「おいしいわよ、久しぶりに飲むと」
「あ、ああ…」

彼女が差し出すのは白いカルピス。
目の前には笑顔の彼女。
視界左隅には泣きそうな目で俺を見つめる近藤さん。
視界右隅には殺意丸出しの総悟とアイツ。
後方から突き刺さる弟の視線。
どうする!
どうする俺!?

…とりあえず、ごめん近藤さん。
彼女の笑顔には何も敵わない。


お題:にやり

習慣


「あ、姐さん。こんにちは。奇遇ですねィ」
「……奇遇って沖田さん、ここ私の家なんですけど」
「ああ、そういえばそうでしたね」
「そうでしたね、じゃないわ。何でいるんですか不法侵入ですか」
「不法侵入だなんて人聞きの悪いこと言わねェでくだせェ!ちゃんと入るとき聞きやしたぜ、お邪魔してもいいですかィって」
「返事はあったのかしら」
「ないんで、じゃあお邪魔しまーすって入りやした」
「それが不法侵入!……全く。警察がこれじゃ治安ボロボロだわ」
「まあそう言わずに。ここ座って一緒にすいかでも食べやせんか」
「そうよ私はそれも気になってたのよどうしてすいか食べてるの」
「持ってきたんですよ。お土産です」
「あら、ありがとう。でもお土産なら私が来るまで待っとくものじゃないのかしら」
「気がきかないもので」
「気がきくとかじゃなくて常識……いや、あなたには常識なんて通用しないわね」
「お、姐さん俺のこと分かってやすね」
「分かりたくないけどね」
「さ、すいかどうぞ」
「ありがとうございます……ね、沖田さん。毎日ここに来て飽きないの」
「飽きるなんてとんでもねぇですぜ。いつもわくわくしながら来てやす。姐さんがいなくても入っちまうくらい」
「どうして」
「どうしてって、言わせるんですかィ?」
「聞きたいもの」
「姐さんに会いたいからでさァ。……これで満足ですかィ」
「ええ。嬉しいわ。でも明日から不法侵入したら串刺しですからね」
「おや、愛はねェんですかィ」
「あるわよ。でも一応自分の家は自分で守らないと。ゴリラも追い払わなくちゃいけないし、いちいち沖田さんだけ特別扱いするわけにはいかないわ」
「ゴリラの件についてはすいやせん。でもそれじゃあ俺が来たとき姐さんがいなかったらどうすりゃいいんでィ」
「沖田さんが来る頃には家にいるようにするわ。私もあなたに会いたいもの」
「愛ですかィ」
「ええ、愛ね」
「姐さん、好きでさァ」
「沖田さん…」


「あの、すいません。僕ずっとここにいるんですけど、そういうのは弟がいなくなってからやってくれませんか」
「あれ、いたんですかィ」
「ほんとだ、いたのね新ちゃん。ただいま」
「ただいま、じゃないですよ!僕そんなに存在感ないですか!だいたい沖田さんも、お邪魔していいですかィって言ったとき僕ダメですって言いましたよ!」
「嘘だー」
「いやいやほんとです。なのに勝手に上がってきて縁側座ってすいか食べ出したときはびっくりしましたよ」
「新八君もすいか食べやすかィ」
「あ、すいませんいただきま……って話を変えるなァァァ!」
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