レイリは隔離部屋で数日を過ごした。
衣服は視界を刺激しない白一色のパジャマに着替えさせられた程度。
家具も何も無い部屋に、ベットだけ運び込まれた。
日がな一日、レイリはベットに寝転がりながら枕を涙で濡らしていた。
あれからベットを運び込む人と食事を持ってくる人にナタクのことを聞いても誰も教えてくれなかった。
単純に知らなかっただけかもしれないが、レイリは不安で押しつぶされそうだった。
未来視が望んだ未来を見せるなら間違いなくレイリはナタクの安全を確認するために使っていた。
新しいガイドなんて嫌だ、ナタクがいいという気持ちとナタクを壊してしまって初めてナタクにどれ程の負担を強いていたのか気付かされて離れざるを得ない事実が悲しくて仕方なかった。
いずれはこうなると知らされていたにもかかわらず、訪れてしまえば後悔しかない。
短絡的に、自分が死ねばナタクが自由になるなんて浅はかで幼稚な発想だった。
それでタワーの外に飛び出し、死ぬ前にもう一度両親に会いたくなってしまったから、ナタクとの離別が早まったのだ。
きちんと別れを告げて、自分はもう大丈夫だからと伝えるべきだったと後悔した。
ひたすらに後悔して、懺悔しても許してくれる相手は今は居ない。
それに許しを乞うのはあまりに身勝手だとレイリは現状を罰として受け入れていくしか無かった。
どうせなら別の使い方が出来ればいい。
他の一般的なセンチネルの様にガイドを相棒として能力を使って人助けをしたり出来ればいいのにと何度も願った。
でも未来視はレイリの望む未来を切り取りはしないし、負荷の大きな力のせいでガイドにも危険が及ぶため、生きているだけで人を狂わせる。
「もう、ガイドはいらない」
もう一番大切な人をこの手で壊してしまったから、あとは狂って死んでも…と、考えてノエルの一言が頭をよぎる。
『お前が死ねばナタクは一生苦しむことになるだろうな、お前を救えなかったことに』
レイリは枕に顔を埋めた。
「死ぬことは、許されてない……」
特別な力と引き換えに地獄で生きる事を強要されたレイリは、ナタクが居ない明日をどう生きればいいかわからなかった。
「レイリ、お前の新しいガイドだ」
それは突然に訪れた。
ノエルが連れてきたのは先日のいやに美しい着物の青年だった。
「シュノだ」
「…………」
レイリは俯いたまま返事もせずにきつくシーツを握った。
「……先生、ナタクは……」
「命に別状ないが昏睡状態から目覚めない。
周りの世話はアルサークにさせているから心配するな。
アルサークも定期的にガイディングを受けている」
「………そう、ですか。
わかりました」
レイリは観念したのか、顔を上げた。
もう、ナタクにレイリは必要ないと言われたようで。
「よろしくお願いします、シュノさん」
「シュノでいい、敬語も要らない。
俺とお前はビジネスの関係、それ以上にはなる事は無い」
「わかった」
レイリはもはや誰がガイドでも興味が無かった。
どうせ彼も自分の前から姿を消す。
レイリが壊す前に去ってくれればいいと願うしか出来なかった。
レイリは自室に戻され、シュノは隣の部屋に居て朝晩にレイリの状態を確認して必要に応じガイディングすることになった。
「俺の声に集中しろ」
してる。さっきからしてる。
この男の声はいやに響く。
レイリの心を暴くような、それでいてどこか安心感のある声。
「俺はお前のガイドとは違ってエンパスだ。
だからお前に触れる事でお前をガイディング出来るようになる。
手を出せ、握るぞ」
「……はい」
実際シュノの力は体験済みだ。
今更それを疑う必要もなく、言われた通りに従った。
「いい子だ」
シュノは事務的にレイリを褒めるのに不思議とざわつく視界がクリアになっていく。
優しく抱きしめられ、安心させる優しい声で落ち着くまでゆっくり時間をかけて励ましてくれたナタクとはまるで違った。
「視界はどうだ?」
「…落ち着いたみたい」
「そうか、ならガイディングは終了だ」
そう言うと手を離してさっさと部屋から出ていってしまう。
「………だめ。
僕はもう誰も傷つけたくない」
この距離感を保っていかなくてはならない。
失って始めて、レイリは自分がどれ程ナタクに依存しきっていたかを思い知った。
レイリの調子を見て、あれこれ世話を焼いてくれたのはレイリに寂しさや孤独を感じさせないためだった。
「寂しいなんて、今更……
そんなこと思う資格なんてない」
ベットで足を抱えたまま顔を埋めて涙をこらえた。
シュノはレイリに興味が無いようで ガイディングの時以外は見向きもせずに自室に戻ってしまう。
ビジネス上の関係だとしても、レイリがゾーンに入った際に対処できるようにそばに居るようにはしている様だがそれ以外は踏み込んでこない。
たまに流れ込むビジョンにも、どこか苦しげなシュノの顔ばかり流れてくる。
なにか理由があるのかと思い、健診の時にそれとなくノエルの部下を見つけたので聞いてみたところ
「ああ、シュノくんね。
彼、センチネル嫌いで有名だからね。
ほら、シュノくんって凄い美人でしょう?
それにガイドとしても優秀だから彼にガイドされたセンチネルが彼のボンドになりたがってわざとゾーンに入ってストーカー行為をするのが後を絶たなくて、そういう経緯があって今は派遣型のガイドとしてタワーで暮らしてるんだ」
「そうだったんですか……」
センチネル嫌いのガイドと、ガイドを受け入れられない欠陥品のセンチネル。
自分達はどこか少しだけ似ているんだろう。
「……あの、ナタクは…」
「大丈夫だよ、ヒスイ先生が治療に当たって順調に回復してる。
目を覚ましたら、直ぐにとは言わないがいずれきちんと面会はさせるって言ってたよ」
「ありがとうございます」
ナタクと引き離されてから、ずっと暗い瞳で笑いもしなかったレイリが微かに微笑んだのを見て、ノエルの部下は少しほっとした。
「レイリくんの調子が安定しているなら、アルサークくんにはすぐ会えると思うよ。
彼は君の事も凄く心配していたし、ナタクくんの世話をしてるのも彼だからあってみるかい?」
思わぬ提案に目を丸くしたレイリだが、暫く考えて首を振った。
「大丈夫です、アルサークの事は信頼してますから。
彼とヒスイ先生が見ていてくださるなら何も…心配することは無いです」
それではとぺこりと一礼してレイリは自室に戻って行った。
ベットと食事をする為の椅子とテーブル。
はめ込み式のクローゼットの中に小さな本棚と真っ白な衣服が数着かかっている。
小さなバスルームが併設された部屋には一つだけ窓がある。
レイリはそこから見る外の世界を羨ましく思っていた。
行き交う人々は皆楽しそうだったり、悲しそうだったり、怒っていたり、様々な感情が溢れていた。
見えすぎないよう眼鏡をかけて、日がな一日外を見ていた。
それもなんだか気分が乗らなくて、少しだけ悲しい気持ちになったレイリは湯船に湯を張り、身体を沈めた。
聴覚が鋭いレイリはシャワーより湯船に浸かる方が気が休まった。
暖かな湯に包まれながら、涙を零して目を閉じた。
朝食と夕食の後にガイディングを行うため、食事は一緒に取るように命じられてるシュノは嫌々ながらにレイリの部屋の扉を開けた。
いつもなら窓から外を眺めているか、本を読んでいるレイリの姿が見当たらない。
レイリが脱走してからというもの、レイリの部屋にはカードキーの認証が取り付けられた。
記録によればレイリは昼の健診以降部屋に戻ってから一歩も出ていない。
「レイリ、どこだ」
部屋に居ないならバスルームかと思い、溺死でもされていたら目も当てられないと考え、扉を開ければ湯船に浸かったまま目を閉じて寝息を立てているレイリが居た。
「おい、こんなとこで寝るな」
「ん……あ、シュノ…?」
「風呂で寝るな、死ぬぞ」
レイリの瞼や目尻は赤く腫れぼったくて、声は少し掠れていた。
相当泣いたのだろうと理解したシュノは着物が濡れるのも気にせずにレイリを抱き上げた。
「えっ!?」
そのままバスタオルを巻かれ、ベットに横たえるとクローゼットから新しいパジャマを放り投げた。
「早く着替えろ」
それだけ言うと部屋を出ていってしまった。
あたりは薄暗くて、ぼんやりすりは頭で着替えをすると、シュノが食事を持って戻ってきた。
向かい合わせでいつもは無言で食事をし、ガイドして終わる。
ただ、その日はシュノがじっとレイリを見ていた。
「えと……食べないの?」
「食べる」
必要最低限の会話をしたあと目線が下ろされて、食事をするシュノを眺めてしまう。
綺麗な長いまつ毛が伏せがちに細く食器を見て、スプーンでスープをすくい上げる。
一挙一動が綺麗で、レイリは少し恥ずかしくなって下を向いてパンを齧った。
「これからは、風呂で寝るのはやめろ」
抱き上げた時、レイリから流れてきた哀しみと孤独。
「ごめん、寝るつもりはなくて…」
「泣きたかったのか?」
レイリは俯いたまま何も言わない。
「…怖いんだ、僕はまた…
ガイドを壊してしまうんじゃないかって…
僕はもう誰も傷つけたくない、君も…」
「俺はセンチネルが嫌いだ。
アイツらは自分勝手でガイドに依存しないと生きていけないのに選り好みする。
俺はただ普通に生活したいのにアイツらはそれをぶち壊してくる」
ギュッとレイリが強くてを握りしめた。
「ガイドとしての能力と何故か知らんが見た目だけでどうして生活が脅かされなきゃいけないんだ。
それが無くなれば誰も俺に見向きもしないのに」
「あっ……」
レイリはシュノを見上げた。
今までレイリはシュノをガイドとしか見ていなく、ガイドだからこそそばにいて欲しくないと思っていた。
本当はとても寂しくて辛くて悲しかったのに。
シュノもそれをエンパスで読み取っていたからこそ距離を置いていた。
最も信頼していたガイドを失ったレイリが気持ちの整理を着くまで待っていたのだろう。
シュノ自身センチネル嫌いというのもあって必要以上の深入りはしないように注意はしていたんだろうが。
「ごめんなさい、僕は君を傷付けないよう距離を置かなきゃと思ってたのに、それがガイドとして、道具として見ているなんて思いもしなかった…ただ、君を傷つけたくなかっただけなんだ」
「判ってる、ガイディングの時にお前の中から強く流れてきたのが誰も傷つけたくない気持ちと哀しみだった。
センチネルは今でも嫌いだ、だがお前は俺の知るセンチネルのどれにも当てはまらない。
感謝の意を示すセンチネルも多くいた、全部が自分勝手なやつでは無いのも理解してる」
「僕は……僕もセンチネルの力が嫌い。
こんなに強すぎる力じゃなきゃ、家族と一緒に暮らせたし、力を誰かの役に立てることも出来たのに」
溢れ出た感情が涙になってポロポロ零れ落ちた。
「出来るだろ、俺が居れば」
「えっ…?」
レイリはシュノの言ってる事が理解出来ずにポカンとしてる。
「お前の力は強すぎて俺じゃなければ押さえきれない。
なら俺はお前だけガイドしていればいい方が面倒が少ない。
俺のガイディングで安定するならその力で誰かの助けになればいいだろ、タワーではセンチネル用にそういった仕事の斡旋もしてる」
「な、何を言ってるの?」
「お前とボンドを結んでやるって言ってんだ。
お前はここから出れるし俺も他のセンチネルをガイド出来なくなって言い寄られずに済んで一石二鳥だろ」
かぁっとレイリの顔が赤く染まる。
「な、んで…」
「何でって、面倒事が減るしお前は危なっかしいからすぐに止めれる誰かが監視してた方がいいだろ。
腕力でも能力でも俺ならお前を停められるからな」
レイリはぐるぐるとシュノの言葉を頭の中で繰り返していた。
シュノが自分のパートナーになると言ってる。
レイリからしたらメリットしかない。
「えっ、え…そんな大事なこと簡単に決めていいの?
一度契約したら死ぬまで解消は出来ないんだよ?」
「構わない。契約して他者へのガイド能力が無くなればセンチネルに言い寄られなくて済む。
アイツらは俺じゃなくてもいいが、お前は俺じゃなきゃダメなんだろ」
本で読んだ、王子様がお姫様に求婚するシーンみたいに、シュノがレイリの手を取り少し口元を緩めて笑った。
「っ……う、うん。
シュノと一緒に外に行きたい
買い物したり、お散歩したり、普通の事をシュノと一緒にしていきたい。
僕の、パートナーに、なって欲しい」
涙を零して、レイリが心の底からの願いを告げる。
シュノはグイッとレイリの体を引っ張り抱き締めた。
小さな身体がすっぽり腕の中におさまり、暫く見つめ合ったあと自然と唇が重なった。
「んっ、ふ…ちゅ、ぷ、んぅっ」
初めてのキスにレイリは夢中になってシュノを求めた。
頭が蕩けそうな程心地よくて暖かな気持ちになる。
「可愛いなレイリ」
「ふぁ、シュノは、綺麗」
そのままベットにもつれ込むように激しいキスを繰り返して気分が盛り上がった所で、不意に身体が熱くなる。
「な、に、これ」
「レイリ、大丈夫だ。全部受け止めてやるからさらけ出せ。
もう何も我慢するな」
シュノが微笑んだ顔があまりにも綺麗で、レイリはシュノに甘えるように抱きついた。
「ぼく、初めてだから……ちょっとドキドキしてる」
パジャマを脱がせながら体に触れていると、レイリが恥ずかしそうに告げてきた。
「ああ、レイリの心臓、どきどき言ってる」
触れる度に身体が熱くなって、脳がどんどん溶けていく様な心地良さに目を瞑る。
シュノは丁寧に身体を愛撫してゆっくりと下準備しつつ、常に能力でレイリの様子を確認していた。
蛹のように周囲を拒絶しながら柔らかな心身を守っていたレイリを今シュノが暴いているというのがシュノを不思議な感覚に陥らせた。
レイリが欲しい、そう強く願った時レイリの中から強い感情が溢れんばかりかなシュノに流れ込んできた。
シュノに求められたい。
お互いがお互いを強く求めていると知った時、シュノは思わず笑を零した。
不思議に思っていた感情、嫌いだったはずのセンチネルなのにどうしてレイリには嫌悪感が生まれなかったか。
「俺はお前の事を愛している」
気がつけば簡単なことで、その感情の名前を知らなかっただけ。
レイリはきょとんとしてから、顔を真っ赤にしてぷるぷる震えている。
「なっ、な……なんで、今…!?」
「ずっと不思議だった。
センチネルは嫌いなのにお前だけが気になる理由」
「僕だって…ずっと君に嫌われてると思って……
だから、好きになっちゃいけないって…」
ぽろぽろと涙を零しながら、レイリは必死に言葉を紡ごうとするが、上手く喋れずにいるとシュノがこつんと額を合わせてきた。
「お前の言いたいこと、気持ち、俺に教えてくれ。
言葉にしなくても俺にはわかる」
シュノの言葉に促されてレイリは気持ちを全て吐き出した。
「僕もっ、僕もっシュノが好き」
必死に言葉を紡ぐと、シュノはレイリにキスをした。
「覚悟は決まったな?
これからお前を抱く、それが契約だ」
「大丈夫だよ、僕を君のものにして?」
「俺がお前のものになるんでもあるんだ」
「ふふ、じゃあそれも」
ギュッと抱きついた。
シュノがレイリを抱き締めたままゆっくりとレイリの中に押し入ってくる。
「んぅっ、はぁ…んんっ、すご、おっきいの、入ってくる」
「痛くはないか?」
「大丈夫、すご、きもちぃ」
柔らかな中を暴いて奥までたどり着けば、きゅんきゅんとシュノを締め付け、蕩けた表情を晒す。
シュノだけしか見る事の許されない表情に独占欲がそそられる。
「シュノ、うごいて?」
レイリを不安にさせないようにキスをしながら、なるべく肌を密着させる。
報告書にあった、人肌が一番落ち着くというのは温もりを求めて寂しさを埋めていたレイリの虚無感から来る行動だったのだろう。
小さな体が自分に必死に縋り付くのを、心地いいと感じていた。
ずっとセンチネルは煩わしいものだと思っていたのに。
今はこの小さな体が愛欲に溺れて自分だけしか映さないのがとてつもなくシュノの心を満たしていった。
本能のままに揺さぶり、高まった欲をそのまま中に吐き出すとグッタリとしたレイリを優しく撫でる。
「シュノ……これで僕は君だけのパートナーに……いや、恋人になれた?」
「ああ、俺はレイリだけのガイドで恋人だ。
これからもずっとそばに居る」
腕の中に閉じ込めたレイリがふにゃりと幸せそうに笑うと、視界の端を何かふよふよとしたのが漂っている。
シュノのスピリットの蝶々が変化していた。
「シュノ…それ……」
シュノがレイリの指さす方を確認する。
「なんだこれ」
「え、シュノのスピリットじゃないの?
羽が同じだよ」
シュノのスピリットはアゲハ蝶だったはず。
しかし目の前にふよふよ漂う謎の存在は羽の生えた人間…というか妖精に見えた。
「まさか、幻獣化してる…?」
「え、それって…」
ガイドとセンチネルの間に結ばれた契約は魂の契約。
センチネルは自分のガイドから以外のガイディングを受け付けなくなり、ガイドも自分のセンチネル以外のガイディング行為が行われなくなる。
その契約は適合率と呼ばれる相性があり、それが高いほど強固な絆で結ばれる。
一部、パーフェクトマッチと呼ばれる適合率100%のボンドのスピリットが実在しないアニマルの姿、幻獣化するというのを聞いたことがあった。
「俺達は適合率100%のボンドみたいだな。
お前の馬に羽が生えてる」
「えぇ!?」
慌てて振り返ると、いつもは小さな馬だったレイリのスピリットに羽が生えてる。
そしてどちらのスピリットにも青いリボンが結ばれていた。
「ほんとだ…
パーフェクトマッチって都市伝説だと思ってた」
「なるべくして、だったわけだな」
頭を撫でながら、シュノが手を差し出すと妖精がにぱっと笑ってその指に腰掛けてすりすり甘えだした。
それを見てレイリの心がモヤッとする。
「明日ノエルに報告に行かないとな。
あと、これでお前の兄貴にも堂々と会いに行けるだろ」
「あっ!そうだね。
ナタク、喜んでくれるかな?」
「自分よりお前を守る事を優先したんだ、喜ぶだろ」
レイリは安心したように笑ってシュノに抱きついた。
「嬉しい、あったかい……シュノの匂い、安心する」
「そうか?ならもう休め。
お前は体の負担が大きいからな」
抱きしめられてレイリは穏やかな気持ちで目を閉じた。
朝に目が覚めると、隣にシュノが眠っていた。
極上の美貌が無防備に晒す寝顔が目の前に飛び込んできて驚きの声を上げそうになる。
「うわぁ……」
昨日の出来事が夢心地だったレイリは隣で眠るシュノの存在に現実に引き戻されて羞恥が込み上げてきた。
勢いで契約してしまったが、まさかそれが完全一致の契約だったとは…。
レイリのスピリットはシュノのスピリットと寄り添って眠っていた。
それを見て嬉しくなったレイリは幸せをかみ締めながらもう少し寝坊しようとシュノに寄り添った。