スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

触手ぷれい





「っ、うそ、でしょっ……」


完全に油断していた。
警戒は怠っていなかったはずだが、こんな魔物が居るなんて報告は受けていない。
だから、油断してた。
絡みつく粘着質な粘液を纏うそれは明らかに意志を持ってレイリに絡みついてくる。
何度も言うが、レイリは完全に油断していた。
だから初手で触手に絡め取られて武器を落としてしまったのだ。
魔力器官を持たないレイリはジークフリードお手製の魔法剣を使うことで触手を焼き払うことは出来たのに。
手を伸ばそうにも触手に絡め取られて身動きが取れない。
どうしよう、と混乱する頭で触手の動きを観察する。
さわさわと服の中に侵入してくるそれが体を這って、あちこちまさぐる。
「っ、やだ…気持ち悪い」
いやいやと暴れるレイリに触手は無遠慮に這いずり回り、閉じた蕾を探り当てた。
「いや、いやっ、そこはダメ!!」
どれほど嫌だと暴れてもがっちりと絡め取られて動けない。
触手は後ろの蕾に、細い管を差し込み中に何かの液体をはなっていく。
「ひっ!や、やだ…」
中に出されたそれがじわりじわりと広まっていく。
「いや、いやだ…助けて、だれか……」
その間に他の触手がズボンを下ろす。
足を絡め取られ、宙ぶらりんな体勢で大きく開かされたレイリが必死に身をよじる。
そんなレイリを絶望に叩きつけるように、やけに太くグロテスクな触手が後孔に宛てがわれる。
「や、やだぁ!いや、やめて!!」
どれだけ叫んでも助けは来ない。
どうして別行動したのか
どうして単独でこんな奥地に来てしまったのか
どうして行き先を誰にも告げなかったのか
後悔しても、もう遅い。
ぐちゅ、と音を立てて触手が入口を割り込んで押し入ってきた。
「ひぐぅ、うぁ…」
ズルっと内壁を擦りあげれば快楽に慣れてない体は直ぐに反応してしまう。
「やっ……ああ!」
最愛の恋人しか知らなかった体は今、魔物の触手によって暴かれ、それで快楽を得てしまっている。
恋人への裏切りを感じて、じわりと目頭が熱くなる。
嫌なのに、こんなの嫌なのに。
どうして気持ちいいのだろうか。
「ふぁ、ああん、ぅっ…ひっく…」
ぼろぼろと涙が零れてくる。
悔しい。
レイリは惨めな気持ちでいっぱいだった。
先程出されたのは催淫剤の類だろう。
それを受けてから腹の奥が熱くて堪らない。
触手がぐぽぐぽと音を立ててレイリを犯すのが気持ち良くて、逃げ出そうとする力が弱まる。
「はぁ…ん、あうっ、やぁ…きもちい」
涙を零したまま、レイリが悲鳴をあげる。
それに呼応して触手が激しくレイリを責め立てる。
触手はレイリを苗床と認識したのか、胸や性器に絡み付いて愛撫する様に身体を撫でていく。
やがて口にも太い触手が押し込まれ、何やら甘い液体を流し込まれる。
喉の奥で出されたそれを飲み込まざるを得なく、レイリはそれを飲み下した。
良くない何かなのは分かっていた。
「や、やらぁ……はなしてぇ」
抵抗する力も無く、内壁を擦り上げていたそれは最奥に辿り着き、ぐにぐにとそこを刺激する。
「だ、だめ!そこは…シュノにしか……!!」
必死になっても、無常に触手はレイリの最奥を貫いた。
「ああああああああぁぁぁ!!!!」
シュノしか侵入を許したことが無い身体を暴かれただけでなく、最奥までこじ開けられ、レイリは絶望に涙を零した。
絡み付く触手はいつの間にかレイリを覆い尽くし、その姿を隠してしまった。
レイリが快楽に喘ぐ中、触手達は我先にとレイリの胎内へと伸びてくる。
シュノに大事にされているレイリは強烈な快楽の拷問に心が折れていた。
視界が触手に覆われていくのを、絶望と悦楽の混じった瞳でみつめていた。

(たすけて、シュノ…)




討伐対象の処理が終わったシュノは刀に着いた血を振り払い、鞘に収めた。
そろそろ面倒な奴を迎えに行かなければならない事に盛大に溜め息を吐く。
しかしながら可愛い恋人の依頼である以上妥協をして面子を潰すマネはしたくなかった。
「はぁ…しかたねぇ」
何かの間違いで死んでいてくれないだろうか。
そんなありえない事を考えながら、何か面倒事を起こす前に引取りに行く前にレイリに報告がてら癒しを求めに拠点としてるキャンプ地に戻る。
「レイリは戻ってないのか?」
「一緒じゃないのか?」
キャンプ地に居たレイリの護衛のナタクに声をかけると不思議そうな返事が帰ってきた。
お互い、レイリが一緒にいると考えていた様で少し嫌な気配が胸を刺す。
「坊ちゃんはまだ戻っていない」
「そうか、なら俺が探してくるからお前はここにいろ。
入れ違いになっても困る」
「…わかった、坊ちゃんを頼む」
シュノは嫌な予感が当たらないように願いながら走り出す。
別れる前にレイリが調査に向かった方を探ってみると、鬱蒼とした森の中でキラリと光る何かを見つけた。
不思議に思い近付くとそれは無惨にちぎれたリボンとレイリが愛用していた魔法剣で、それが鞘から抜かれた状態で地面に落ちている。
辺りを慎重に見回せば、少し奥の大木にこんもりと、ちょうど小柄なレイリ一人分くらいすっぽり収まりそうな木の塊が、コブのように張り付いていて、それがドクンドクンと脈打っている。
「レイリ…?」
塊に近付くと、噎せ返るような酷い匂いにくらくらする。
甘い花の香りの様なそれに混じって、微かにレイリの香水の香りがした。
「レイリ、居るのか?」
返答は無い。
もしかしたら意識が無いのかもしれない。 そう思った時、塊の隙間からズボッと足が出てきた。
渾身の抵抗だったのか、それ以来動かなくなったそれは間違いなくレイリのブーツだった。
「レイリ!」
足を引くよりそれに沿って絡みつく木の根を引き剥がせ、中からドロリと蠢く緑色の粘着質な何かが姿を現わした。
「んっ、うぅっ、うぐ…」
くぐもったレイリの声に、蠢くそれを刀で切り裂くと、ドロドロの中から無数の触手に捕まり、犯されたレイリがぐったりとしたまま虚ろに身体を震わせていた。
付き合ってから数える程しか体を重ねていないレイリにとっては刺激が強すぎる。
「レイリ、しっかりしろ!」
触手はレイリの奥深くまで入り込み、感じやすい場所を責め立てる。
触手を刀で切り裂きながら、レイリの小さな身体を引き剥がす。
べとべとした粘液に塗れたレイリを何とか取り戻すと力無く地面に倒れる。
その体は頭からつま先までべっとり粘液に包まれ、服は中途半端に脱がされている。
「レイリ、レイリ、大丈夫か?」
抱き起こせば、身体に快感が走るのか、びくびくと身体を震わせながら空イキしてる。
とろんとした瞳は全く焦点が合わず、口の端から白濁した何かを零したたまま、レイリはシュノを見上げていた。
「おい、レイリ!しっかりしろ!」
「あ、ぅ………や、ぁ……けて…」
感じ過ぎて、軽く触れるだけでもイッてるようだ。
「レイリ!」
バシッと軽く頬を叩く。
「あ、あ……シュノ…?
ぼく、ぼくっ……」
意識が戻ったレイリは目の前にシュノを確認すると、じわじわと瞳に涙を溜めた。
「よしよし、怖かったろ?
もう大丈夫だからな」
抱きしめようとして手を伸ばすと拒絶する様に手を払われた。
「き、たない、から、だめぇ……」
「レイリは汚くない。
まぁでも、そんな訳分からん液体にまみれていたくは無いよな…
たしか近くに川があったからそこで体を洗うか。揺れるけど我慢しろよ?」
シュノはレイリを姫抱きにして川のある場所までなるべく刺激しないように気をつけて足早に移動する。
レイリはどうやら相当媚薬を飲まされたのか、川に着くまで3回はイッた。
「はぁん、う、あ……あつい、しゅの、おなか、あちゅい」
とろんとした、情事中の様な顔で欲しがるように手を伸ばした。
「レイリ、おいで」
いつもは縛られてる髪を撫で、頬に手を添える。
キスをしながらベタついた服を脱がせながら自分も一緒に服を脱ぐ。
「はぁ、ん…シュノ、ぼく……」
皆まで言わせる前にキスで口を塞ぎ、レイリを抱き上げると川の中に入っていく。
初夏の頃とはいえまだ水は冷たい。
腰ほどの深さの場所でレイリを下ろすと、粘液に濡れた髪を水で洗い流してやる。「んっ、ふ…」
身体をゆっくりと手で撫で回す。
「あんっ、ふぁ、んにゃ…」
「気持ちいいのか?」
レイリは恥ずかしそうに頷いた。
「んむ、ふぁ、ああんっ」
しっとり濡れたレイリは情欲に染まった瞳でシュノを見た。
そのまま、唇が重なる。
「んっ、ちゅ、ちゅぷ、んむっ」
キスをしながら、レイリの後孔に指を這わせて広げれば、中から粘着質な液が漏れ出す。
「随分中に出されたな…可哀想に、怖かっただろ」
「ふぁ…?しゅの、おこって……?」
「怒ってない。間に合わなくて悪かった」
ギュッと小さく細い体を抱きしめる。
「シュノ……僕もごめん」
完全に油断していたのはレイリなのでシュノに謝らせた事に罪悪感を覚えていた。
「ねぇ…シュノ……怒ってないなら、抱いて欲しい…」
「レイリ…いいのか?
怖かったんだろ、こんなに震えて」
抱きしめた小さな体は震えていた。
「いいの、シュノがいい」
体はまだ媚薬が抜けてないのか、とろんとしたレイリがシュノに甘えてくる。
そこまで言うなら嫌な記憶を全部自分で上書きしようと思った。
「レイリ、後ろ向け」
「えっ……?」
急に不安そうな顔でレイリがシュノを見る。
「あの……えと…
シュノの顔が見れないのが、怖くて…」
先程抵抗も出来ないまま触手に一方的に体を暴かれた恐怖があるのだろう。
「……そうか、ならこっち来い」
シュノは手を掴んでレイリを岸辺に連れていき、そのまま小さな身体を岸辺に座らせる。
「慣らさなくていいから……」
熱に浮かされた様にレイリが縋るようにシュノに手を伸ばした。
「へぇ?随分いい様にされたんだな。
鳴らさなくても入る程ガバガバにされたのか?」
レイリはじわっと瞳に涙を貯めた。
「ご、ごめんなさい…嫌いになった?
ぼくっ、もう、いらない?」
泣かないように必死に涙を堪えるのはシュノの同情を引かないためだ。
相手の事ばかりで自分がどれだけ傷付いてもそれを選び取る勇気は自己犠牲にしては酷く独善的である。
自分が嫌だから、見たくないからそうするんだと言っていたレイリの肩は細く体は小さいのにその身に降りかかる重責と付き纏う英雄の影はレイリの存在よりも大きく、小さなレイリをいつでも飲み込む程だ。
だからシュノは守りたいと思った。
この小さく愛しい恋人を。
「どうして俺がレイリを手放さなきゃいけないんだ?
こんなに欲しいと思ったのはレイリが初めてで、ようやく手に入ったのにそんなくだらない事で手放す程俺は愚かじゃないつもりだが」
「…ふぇ?」
「悪かったよ、いじめすぎた。
いちいち反応するレイリが可愛くて」
ちゅっと掠めるようなキスの後、柔らかく微笑まれる。
「俺の愛はお前だけのもので、この先どんな事があってもそれは揺るがない。
だからお前は永遠に俺のものだという自覚をもて」
ぎゅむっと頬を挟まれ、レイリは恥ずかしそうに頷いた。
「シュノ…ありがとう。
えへへ、うれしいな、もっと君を好きになっちゃう」
「なっていい。他の男なんて目に入らない位俺で満たして染め上げてやる」
それは甘い悪魔の誘惑。
堕ちてはいけないとわかった時にはもう羽をもがれてどこにも行き場を失った小鳥。
「満たしてよ、シュノでいっぱいにして?」
「ああ、何度でも満たして上書きしてやる。
お前の記憶に残る全ては俺だけでいい」
ゆっくり宛てがわれたそれが窄みを押し広げて中に侵入してくる。
いつも感じる圧迫感もなくすんなり入ってしまったことに胸が痛む。
「……しっかり慣らしたからいつもよりすんなりはいったな。
大丈夫。俺が全部慣らしたんだ、思い出せ。指とローションで念入りに慣らしただろう?」
レイリの身体が一瞬強ばったのを敏感に感じ取り、シュノはレイリの記憶をすり替えるように耳元で囁きながら乳首を摘んで刺激を与え、余計な思考を追いやる。
「ふぁ!?あっ、んぅ…きもち、んんっ、シュノ、指で、中をっ……ひゃあん!」
快楽でまともな思考を飛ばし、言葉でレイリの脳に刻み込んで嫌な記憶を自分で上書きしていくシュノは、ハッキリと自覚していた。
触手ごときにレイリの身体を暴かせるなんて。
自分以外勿論許せるはずは無い。
だが寄りによって人では無い意思も言葉も通じ無い魔物に一方的に快楽だけを叩き込まれたレイリはどれ程心細く、恐怖だった事か。
やり場の無い怒りを感じる程に目の前の青年を溺愛している事にまた、愛しさを覚えた。
「気持ちいいか?レイリはここ弄られるの好きだもんな?
この奥を突かれながら弄られるの好きだろ?」
「ひゃう!?あっ、ああんっわ、らめ、おかひくなりゅ、おっぱい弄りながらとんとんしちゃらめぇ!!」
柔らかな肢体をくねらせながら、きゅうっと中を締め付け、とろとろに蕩けきった表情で涙を零しながらシュノに必死にしがみついてくる。
「中スゲー締まった。
レイリは気持ちいいの好きだろ?
嫌じゃないよな、ほらなんて言うんだ?」
いい所をわざと外してレイリを突き上げれば、快感は拾うものの欲しい刺激じゃないのかシュノの背中に回された指に力がこもる。
「やっ……アァッ、ちが、そこじゃ……
うう……」
恥ずかしいのか、レイリはモジモジしながらシュノを見上げた。
恋愛にも性事情にも疎いレイリにとって、こういったオネダリは羞恥心との戦いで、それをかなぐり捨ててシュノを欲する情欲に染まりきったレイリを見るのがシュノは好きだった。
自分だけに許された特権だと。
「しゅの……奥、奥に……その……」
中々次の言葉が紡げない。
「た、沢山、入ってきて……
すごく、いや……だった……こわくて、君じゃないのが、いや、だった」
レイリが背中に回した手に力を込める。
「だから、上書きして?
全部シュノに愛されたことにしてほしい」
「ああ、全部俺がやった。
だからあんな事は忘れろ、二度と思い出すな」
キスでレイリを安心させてから、結腸の入口をぶち抜いた。
「ひああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
びくんっと大きく背中を反らせたレイリを逃がさないよう腰をしっかり掴んで叩きつけるように打ち付けた。
水面が水を打つ音に紛れて卑猥な肉を擦る音とレイリの悲鳴の様な喘ぎ声が静かな川辺に響いた。
細い腰は力を込めれば折れそうなのにしっかりシュノを根元まで咥えこんではなそうとしない。
「ひぁっ!しゅ、のぉっ!!
だして!おくにいっぱい、うわがき、して!!」
「ああ、俺の可愛いレイリ…
お前は俺だけのものだ、誰にも渡さねぇ」
ぐぽぐぽと結構口を開かされてレイリは最早前後不覚な程に揺さぶられてキツくシュノにしがみつく。
足をピンと伸ばして衝撃を少しでも逃がそうとする。
「ふあああぁぁぁ!!!」
目の前がチカチカしたと感じると急に視界が真っ白になった。
腹の奥に暑い熱を感じて、ぐったりと身体を投げ出した。
「もううごけない……」
「ああ、お疲れ様。
あとは俺に任せて少し寝てろ」
頭を優しく撫でて中に入っていたものが引き抜かれる。
ポッカリ空いた穴から白濁した液がごぽっと溢れてきて何とも欲をそそる。
「あふっ、んぅっ…」
「感じてんのか?」
「うう…もう、意地悪しないでよ…」
レイリはぐったりしたまま地面に寝そべって意識を手放した。


意識を失ったレイリを川の水で綺麗に体を清め抱き上げる。
着物の羽織を広げ、そこに寝かせている間に火を起こして汚れた衣服を洗い落として乾かしておく。
シュノの着物にくるまったレイリを膝に載せて火の傍で温めながら頬を撫でる。
貴族としてレイリは、高潔であり無垢だ。
シュノが触れるだけで顔を赤くし、あたふたしたレイリが可愛くて傍に居たいと思った。
騎兵隊は息が詰まると言ったのを気にしてか、レイリはシュノを束縛したりしない。
「お前になら、それも構わないと思ってるんだがな」
眠ったままのレイリの頬にキスをした。




きみのために



ガシャン!と音を立てて装備品が床に落とされる。
相当機嫌が悪い証拠だ。
それもそのはず、神毒の影響が強い前線には並の兵士では役に立たない。
そうなればなるほど、その役割は全てただ一人に一任される。

神殺しの英雄、レイア・クラインに。

彼がそう呼ばれるのは実際だいぶ先の事だが、この侵食し続けるこの地で抗い続けるには負担が大きい。
「オベロン、剣の調子が悪い。
検査して」
「私は忙しいんだけどね」
そう言っても今この戦線はレイア一人で維持されているようなもの。
彼が倒れたら、全て終わる。
レイアはいつも理性的で、戦局を常に把握してそれに必要な自分に瞬時に切り替える。指揮能力の高さもさながら、身体能力や戦闘能力はやはり一般的なそれから大きく外れている。
それに耐えうる強固な精神も。
オベロンはレイアの剣を手に取り、丹念に調べていく。
「……剣に問題は無いみたいだ。
だがパスが弱くなってる、レイアくん側の問題かもしれないね」
剣を鞘に納めると、レイアが振り返った。
綺麗な宝石を嵌め込んだオッドアイが強い意志でオベロンを見た。
「そう、ならやって」
「毎回毎回君はそうして自分を捧げてまでどうして戦うんだい?」
献身的なタイプじゃないだろ君、と言われてレイアは珍しく俯いた。
「僕が化け物だからさ」
人に愛されたかった、愛を知らない英雄。
孤独な彼は望んで化け物になる道を選んだのに。


滑稽で愉快でなんとも哀れだ。


「そういうの、嫌いじゃないけどね」
超越者であるレイアは魔力器官の維持が難しい。
それは元々器官を持たないレイアは自力でそれを生み出すという、並の人間には出来ない方法でそれで魔術を使えるようになった事に由来する。
ある種外法のような方法な為大成した魔術師の様な大掛かりな魔術は使えなくても、身に宿る莫大な魔力のお陰で一般的な魔術師よりは強力に使える。
レイアは体への負荷を考えて剣に属性を付与させて戦う方法を好むが、ここ数日は魔物の数が多く、流石にレイアも広範囲の魔術で焼き払う方法を取らざるを得ない状況がつづいていた。
レイアの身体には、当然相応の負荷がかかり暴走の危険があった。
だからこうして、暴走する前にわざと器官を暴発させてそれを強制的に魔術を使用不可にした状態で修復させる。
あまりの激しい痛みに並の者は耐えきれずに死に至る。
レイアはそれを、もう幾度となく繰り返してきた。
他の誰でもない、たった一人の為に。
砦にレイアの絶叫が響く。
強固な精神力をもつレイアすら声を上げるほどに強烈に激しい痛みはレイアの体を駆け巡り、グラッと身体が傾いたのをオベロンが受け止めた。
「レイア様っ!!」
駆け付けたジュリアンが傍により、ひょいとレイアの体を抱き上げた。
ぐったりと意識を失ったレイアは荒い呼吸を繰り返している。
一介の将としては細すぎる肩と小さな身体。
こんな軽すぎる身体でこの戦線をたった一人で維持している主に何も返せない事を悔やんだ。
「しばらくは目を覚まさないよ」
「理解っている、今セバスチャンがアナスタシア様を呼びに行ってる」
そう言ってレイアを抱き抱えたまま寝室に向かった。
ドアが乱暴に開かれた事でシュリがびくっとして柱に隠れるがジュリアンは気にも止めずにレイアの身体をベットに横たえた。
「失礼します」
そう断りを入れ、服を脱がせて夜着に着替えさせる。
その間レイアは苦しそうに呻くが目を覚ます様子は無い。
いつもの事だ。
暴走を阻止するために魔術回路をわざと暴発させるとレイアは回復の為深い眠りについた。
こうなると身体が回復するまでいくら女神の力を持ってしても5日はかかる。
レイアの疲弊具合によってはもっと長くなる事もある。
ジュリアンがレイアの着替えと顔を冷たいタオルで拭いて、苦しげなレイアを懸命に世話する。
コツコツとヒール音が反響してアナスタシアが部屋に入ってくる。
険しい顔をしたアナスタシアはレイアをじっと見た。
「オベロンがあらかた処理を終えていますね。
このまま放っておいてもレイア自身の回復力で十分でしょう」
そう言ってアナスタシアはシュリを振り返った。
「シュリ、レイアをお願いできますか?」
柱の影からこちらをみていたシュリはおずおずとこちらに向かって歩み寄ってきた。 「レイア、どこか、わるい?」
「暫くは目を覚まさないでしょうけど、死にはしませんよ」
表情は変わらなくても瞳が不安に揺れる。
「レイア、苦しそう…」
「ええ。自力で回復できるからと言っても身体の内部を吹き飛ばしたのです。
いくらレイアとはいえ無事では済みません」
「レイア…」
苦しげに呻くレイアの手を両手できつく握る。
「シュリ様…俺達は隣に居りますので何かありましたらすぐにお呼びください」
一応セバスチャンが声を掛けるがシュリは手を握ったまま動こうとはしない。
ジュリアンがセバスチャンの腕を掴んで首を振る。
今はそっとしておくべきであり、レイアが目を覚ますまでここを守り抜く義務があるからだ。
シュリの精神状態に気を配る必要はあるが、今は二人きりにさせておくことにした。
今までこの状態のレイアにシュリを立ち会わせて来なかったつけが回ってきたのか、不安そうに手を握る。
「レイア、いやだ、おきて」
レイアは苦しそうにブランケットを握るだけ。
こんな苦しそうなレイアは見た事がなかった。
レイアはいつも自信に満ち溢れて、綺麗な瞳を柔らかく緩めて微笑んでいた。
「レイア…」
ぽろっとシュリの瞳から涙が零れた。
自分でもわからない感情が込み上げてきた。
「レイア、レイア。
どうしたらいい?おれ、レイアに何が出来る?」
レイアは応えない。
汗が滲んで、苦しげにうめくだけ。
シュリをすくい上げた優しい手が冷たく感じた。
失うのはいつも一瞬だ。
「レイア、いやだ」
深く昏睡してるレイアはどれだけ揺すっても目覚めない。
綺麗な宝石の様な瞳は閉じられて、白い肌が月明かりに青白く映えた。



長い夢を見る。 いつもの事だ。
ふわふわ浮かぶ、ぼくのたいせつな―――


「う、んっ……」
重い体を動かして、瞼を開ける。
いつまで眠っていたのか。
体は重くて力が入らない。
「クソッ…」
こうなったらもう仕方ない。
ジュリアンがめちゃくちゃ世話を焼いてくるのがウザイけど体が動かないから仕方ない。
シュリ、寂しがってないかな?
いつも寂しい思いをさせて、嫌いになったしりしてないかな?
ああ、いやだな。すごく不安になる。
「レイア?おきてる?」
シュリの声がすぐ傍で聞こえた。
「シュリ……どうして」
「良かった、レイア」
ぎゅっとシュリが抱き着いてきた。
「レイア、全然動かないから…死んじゃったかと思って……」
「僕がシュリを残して死ぬわけないじゃない?
僕を誰だと思ってるの?」
撫でたいのに、体を動かすと痛みが走る。
「ぐっ…う」
「レイア、まだどこか痛いのか?」
「大丈夫、だよ。
でもシュリがぎゅってしてくれたら早く治りそう」
シュリは、レイアにぎゅっと抱き着いて、隣に蹲る。
「僕には君がいてくれればそれで十分なんだから」
「ん、俺もいっしょがいい」
甘えるシュリの頭を、痛むのを堪えてゆっくり撫でる。
暖かなシュリの体温を感じながら、瞼が重くなる。
「レイア、ねむい?」
「……うん。シュリが、暖かいから……
ねむく、なってきたな…」
「じゃあ俺がこうしてれば、レイアねれる?」
「うん、ぎゅってしてくれる?」
シュリの暖かな体温に、眠りに落ちた。



「これは……」
シュリの食事を持ってレイアの様子を見に来たジュリアンとセバスチャンはベットで眠る二人を見つけて微笑んだ。
「食事は置いておこうか」
「そうだな、起こすのは流石に忍びない。
レイア様が目覚めたなら、呼ばれるだろう」
レイアの傍で丸まったまま眠るシュリと、そのシュリを抱きしめながら眠るレイアは幸せそうだった。


まほうのおもちゃ



目の前が真っ白になった。


余りの刺激の強さに、レイリはくらくらしていた。
「ひぁ、あ、あんっ……」
はだけたバスローブが辛うじて腕に引っかかり、解いた髪がだらしなく枕に散らばる。
「いや、ああんっ、もぉ無理」
いやだと手を伸ばしても掴むのは空虚ばかり。
愛する人の温もりも声も何も無い。
ただ一方的に与えられた快楽の暴力。
「だめっ、も、無理だって…
さっきから、ずっと、イッて…ひゃあん!」
いくらいやだと泣き叫んでも届きはしない。
「……っ、シュノ…」
熱の無い空虚な快楽によってレイリはそのまま果ててしまった。
「虚しい…」
呼吸を荒く、ぐったりとしながらズッポリ収まるそれを引き抜いた。
それは貴族間の裏ルートで流行っている大人向けの玩具で、快楽を得るだけなら十分だがなんとも空虚すぎて現実味がない。
「……シュノなら、違ったのかな。
こんな玩具より、シュノで貫かれたら…」
そう言って手に握った玩具を見つめる。
「魔法のオナホね。
今度遠征に行く時シュノに持たせようかなぁ」
転がったオナホを眺めながら、切なげにため息をつく。


「また悪巧みしてんのか?」


ビクッと体が震え、扉を振り返るとシュノがちょうど帰ってきた。
「し、シュノ!?
お帰りなさい、えと、帰還は明日じゃ……?」
しどろもどろなレイリをよそに、冷たい目を細めてじっとレイリを見つめる。
明らかにひとり遊びをしていましたと言わんばかりに辛うじて引っ掛かっているバスローブに散らばる玩具。
「明日の方が都合が良かったか?」
「あっ、いや、その……」
シュノはレイリを見つめるだけで何も言わない。
無言の圧力にあっさり屈したレイリは観念して全てを洗いざらい話すことにした。
遡ること数時間前、レイリは貴族の夜会に参加していた。
そこで面白いものがあると言われ、別室へ案内された。
これはそういう目的だろうと警戒していたレイリの前にはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男。
「クライン伯爵に、巷で流行りの面白いものをお見せしたい」
そう言って取り出したのは何の変哲もない桃色の筒型。
「そちらは?」
「魔法のオナホですよ」
「………はい?」
たっぷり時間をかけて頭に染み込んでいく単語はあまりに…
「クライン伯爵にはよく遠方に行かれる恋人がいらっしゃるとお聞きします」
レイリが警戒しながらも、笑みを作る。
「ええ、そうですが。
それとなんの関係が?」
「寂しいのでは無いかと思いましてね?
恋人の熱を離れていても感じられるなら、どうします?」
「どうもしません。
彼が居ないなら熱を感じる意味もありませんので。
お話はそれだけでしょうか?」
早くここから立ち去りたかった。
「まさか、この性能を体験していただければきっと気に入りますよ」
そう言って男はとろりとそれに何かを垂らした。
「ひっ!」
中に、何かが流れ込む感触がある。
「なに、これっ」
「ただのローションですよ。
それでは、失礼して…」
そう言うと熱を持ち、肉質を帯びたそれに指を差し込んでいく。
「ひぁっ、あ、うっ」
指で内壁を好き勝手弄り回されて、異物感に吐きそうになる。
刺激を与えられる度に中が熱くなるのを止められない。
レイリはその場に倒れ込んでしまう。
男が自分を見て笑っている。
直接触られている訳じゃないのに、体をいいように暴かれている耐え難い屈辱。
自分から罠に誘うための餌にするのではなく、罠にかけられ体を暴かれるなどあってはならないのに。
「っ、は……やだ、もう……やめて」
生理的な涙が溢れ、止まらない。
「いいお顔ですなぁ。
貴方のような生意気なガキを黙らせるのは気分がいい」
「っは、あうっ……こんな手段、使わなくても、抱きたいなら、そう仰ればいい」
「いや、それじゃあ意味が無い。
君にふれれば、ご主人様に従順な獣が牙を剥くだろ?
私は慎重なんだ」
そう言って勃ちあがったそれに遠慮なくオナホを突き刺した。
「ああああんっ!!!」
「ははは、これはいい!」
ずちゅ、ずちゅっと水音をたてる。
中に入ってくる感じはあるのに、足りない。
全然足りない。
シュノは、シュノなら、
もっと奥まで届くのに。

「ああ、もう……」

快楽に殴られながらレイリは立ち上がる。
苛立ちに顔を歪ませて。
「……じゃ、……ないんだよ」
「は?」


「そんな短小じゃ全然足りないんだよ!!」


怒りに任せて男の股間を蹴り上げた。
まさか好き勝手していた相手が立ち上がって股間を蹴り上げるなど予想していなかったのか、男はもんどりを打ってオナホを手放した。
それを拾うと、レイリは踵を返す。



「という訳で、ちょっと自分で使ってみようかなって思ったら……その…」
壁にもたれ掛かるシュノの前で正座させられ、洗いざらい吐かされた…というか勝手に自白したレイリに呆れたため息で返す。
「やっぱり物足りなくて、シュノじゃなきゃダメだって思って……
遠征に行く時に持って行って貰おうかなって…」
えへっと可愛らしくオネダリ顔で微笑めば冷たい視線が帰ってくる。
「断る」
「なんで!?」
「所詮玩具だろ、本物に繋がっててもお前自身が居ないならその行為に意味は無い」
「うっ……」
「でもまぁ、お仕置は必要だよな?」
そう言ってオナホを取り上げると、レイリのペットのスライムが数匹いる水槽にそれを落とした。
「っ!!」
スライムがオナホに集まってきて、我先にとそこに入り込もうとする。
「ひぃう!あ、ああっ、やだ、僕もう、でないっ」
がくっと体を倒し、快楽に悶えるレイリを見下ろしている。
「ああ、や、いやっ、もうイきたくない」
「どうして?気持ちいいんだろ?」
「シュノがいい、どうして、ひどい」
レイリが泣き縋るようシュノを見上げる。
「おねがい、シュノ」
スライムの刺激に身悶えながらも、仕方なしにオナホを取り上げ、スライムを引っ張り出せばレイリは床で激しく体を痙攣せて大人しくなった。
「イッたのか」
悔しそうにシュノを見上げる瞳には熱がこもっていた。
「それで?何か言うことは?」
「……抱いて、シュノ。
奥までいっぱい、シュノで満たして欲しい」
「よくできました」
そう言ってレイリを抱き上げ、ベットに寝かせると服を脱いで覆い被さる。
欲しかった、求めていた快楽にレイリは溺れて行った。
「こんなにとろとろになるまで遊ぶなんて悪い子だな」
「やぁん、ちょ、待って…むり、今は、感じやす…ひゃうん!」
熱量をもったそれが無遠慮にレイリを貫く。
「イッたばかりだから、だめっ、シュノ」
「むりじゃない、やめない
これはお仕置だ」
内壁を擦る度に目の前がチカチカする。
「やだよぉ、もう、また、ひとりでイッちゃうの、やだぁ」
散々一方的な快楽を与えられ、一人果ててきたレイリはシュノが目の前に居るのにひとりで果てるのを拒む。
「そうか、なら頑張れ」
シュノはあっさりと言い放ち、腰を進めた。
奥まで挿入して、激しく叩きつけるレイリの中が、何度かきつく閉まる。
「はは、メスイキしてんのか?」
「あう…も、やだぁ、シュノきらい、いじわる」
何度か絶頂を迎えたらしいレイリが不満気にシュノをにらむ。
「次は、一緒がいい…」
シュノは頷いてレイリの足を抱えて奥を貫いていく。
「可愛い、レイリ」
「あっ、あ…シュノ、すきっ」
ぎゅっとシュノにしがみつくレイリを傷つけないように何度も奥を打ち付けて、多幸感に包まれながら2人は同時に果てた。
「ふぇ…」
「よしよし、いっぱいイけてえらかったな」
何か言いたそうなレイリの言葉をキスで塞ぎ、よしよしと頭を撫でた。

ジェラシー

レイリはその日不機嫌の絶頂だった。
朝方は今日遠征部隊が帰還すると聞いてご機嫌だったにも関わらず、シュノが帰ってきた頃にはすっかり不機嫌になっていた。
珍しく喧嘩でもしたのかと思えば、シュノがレイリの腕を強引に引っ張って、今日はもう帰ると告げて、何かを喚いているレイリを小脇に抱えて連れて帰って行った。
嵐のようなふたりを見送ったレシュオムはレイリの仕事の進捗の確認と振り分けのやり直しをして、レイリ用に用意したおやつのパンケーキを代わりに食べながら鶴丸は不思議そうに、何だったんだろうな?と首を傾げながらパンケーキに舌鼓を打った。


「だから嫌だってば!!しない!今日はしないって!!離して!!」
「煩い、黙れ」
キャンキャン喚くレイリを、自宅まで連れ帰り玄関にもつれるように転がり入ると、シュノが後ろ手で素早く鍵を掛けた。
キッと精一杯睨みつけるレイリを壁に押し付ける。
いわゆる壁ドン状態で、レイリだって普段ならばキュンキュンして蕩けた雌顔を晒して甘えてくるが、今日はそんな甘い雰囲気は無く、一触即発と言った状態だ。
主にレイリが、だが。
シュノは冷静にレイリの顎をグイッと掴むと自分と目線を合わせる。
力で勝てないレイリはなすがままだが、せめてもの抵抗としてシュノを噛み付かんばかりに睨みつけるしかできない。
「あいつとは何も無い」
「嘘!前戯したって言った!!
僕にはダメって言うのに!!」
「へぇ?お前はこんなに愛して尽くしてやってる俺の言葉より、見ず知らずの他人の言葉を信用するんだな?」
シュノの視線がいつもより突き刺さる刃のように冷たい。
普段はそんな冷たい目線もものともしないレイリが、流石にビクッと小さな身体を震わせた。
シュノが帰還したと聞いて出迎えに行ったらシュノが誰かと話してるのが見えた。
誰だろう?と近付くとそれはレイリの天敵とも言える相手で、二人は今にもキスしそうな至近距離で何かを言って居た。
レイリからはシュノが壁際に押し付けられてなにかされているように見えて慌てて駆け寄ったという訳だ。
「だっ、て……押し倒されてた」
「お前の目は節穴か?
どう見ても斬り掛かられてただろうが。
それにお前の姿が奴の後ろから見えたから早くお前を抱き締めたかったのに、勘違いした挙句いらん挑発に乗って噛みつきやがって…」
シュノの声色が呆れを含めば、レイリはそれでも抵抗するように細い腕でシュノの鍛え上げられた胸筋を必死に押し返そうとしていた。
「嫌だったんだもん!!
僕のシュノなのに穢された気分だ!!
だから今日はしない、もう寝る!!」
いやいやと駄々をこねるレイリに痺れを切らしたシュノがレイリの肩を掴んで玄関の壁に叩きつけるように押し付けると、強引にキスをする。
舌を絡め取れば抵抗すべく押し返していたレイリの腕から徐々に力が抜け、吐息に甘い色が混じり始める。
嫌だと散々喚いた手前、いつもの様に自分から積極的に求めることはしてこない。
「ふにゃ、はぁ、ん、ちゅぷ、んむぅ…
いや、だって……んぅ」
「その割には腰砕けになってるじゃねぇか。
感じてるんだろ?」
「そんな、こと…っひぁ!」
ぺろっと首筋を舐めればレイリが情けない悲鳴を上げてガクンと腰を抜かした。
「はは、腰抜けたのか?」
「うぅーーー!!!」
悔しそうに呻き声をあげるレイリをシュノが抱き締めると、涙目で見上げてきた。
「煩い煩いうるさぁーい!だいたい僕がこんなに体になったのは全部シュノのせいじゃない」
恥ずかしいのか悔しいのか、顔を赤くしながらキャンキャン吠えるレイリを見下ろしながら、シュノはニヤリと笑う。
「当たり前だ。レイリは俺のもの。
俺の好みの体に開発して何が悪い。
それなのにお前は貴族連中に味見されてマーキングまでされてる癖に俺が変なのに絡まれたからって当たり散らすのはお門違いだろ」
グッと膝をレイリの太腿の間に差し入れて小さな体を壁に貼り付けてキスをしてしまえば、わずかながらに抵抗する手が次第に縋るようにシュノの着物を掴む。
グリグリとレイリの股間を刺激すれば、それだけですぐに蕩け顔に変わっていく。
身体が、脳が、シュノと言う絶対的な雄を求めていた。
「貴族のは、どっちも、本気じゃないし…だって、悔しい……僕だってシュノを抱きた……ひゃうん!?」
突然太腿に挟まっていたシュノの膝がぐいっと股間を強く刺激した。
レイリの体は大きく跳ね上がり、壁と腰の空いた隙間に腕を捩じ込まれて抱き締められれば、ほとんど力の入らない足で爪先立ちしている状態になり、シュノの支えがなければそのまま床に崩れ落ちるだろう。
「や、ぁんっ…そんな、だめっ、んんぅっ」
シュノの片腕がガッチリレイリの背を抱き寄せ、片方で顎を固定されば、レイリは唯一自由のきく手で抵抗しようとするが、身体が快楽を拾い始めればシュノのメスとして隅々まで仕込まれた身体は抵抗する力も奪い去り、くたりと身体をシュノに預けた。
「もう降参か?」
長いキスから酸欠でクラクラするレイリに笑いかければ、優しく頬を撫でられる心地良さにレイリが目を閉じて甘える様に擦り寄った。
「ん、降参」
蕩け眼のレイリと目が会う 。
「今日はこのままもう寝るか?」
意地悪くシュノが聞き返せば、レイリは恥ずかしそうに俯きながら小さな声で言った。
「……えっちしてから寝る」
それを聞いて満足気に笑うと、レイリを姫抱きにして寝室に運んだ。
柔らかなベッドにレイリを寝かせ、覆いかぶさってキスをしながら互いに服を剥ぎ取っていく。
「はぁ、ん…シュノ、すき」
「ああ、レイリ可愛い、もっと、声聞かせろ、ふふっ、こんなエロい下着付けてヤる気満々だったのに、寝るって駄々こねてたのか?」
先日新しく新調したばかりの薄い青色の総レースの下着を支えているのは可愛らしいレースのリボン。
レイリの瞳より薄い色味の下着に顔を寄せれば膨れ上がったそこにレイリが顔を真っ赤にする。
「だって、んっあ、期待するに、決まってる……1ヶ月振りだよ?
なのに、なのにあんな……悔しくて」
「ふーん?じゃあこんなにエロい下着で、俺を迎えに来たのに勘違いして寂しく独り寝する気だったのか?」
「あっ、ん…そう、だよ。
シュノなんか、知らないっんんっ!
やぁ、だめっ、おなかくすぐった…ひゃあん!」
レイリの臍にキスをして、舌で窪みを刺激する。
ぴちゃ、と湿った音が耳を、鼓膜を犯していく。
「ひっ、やだぁ!そんなとこ、っうん!?」
ぐりぐりと舌先で臍の窪みを押し込めば、ひんひんと小さく鳴き声を上げるレイリを見上げる。
シュノの視線に気がついたレイリは両腕で顔を隠す。
「みるなっ…」
極上の美貌が執拗に臍を舐めたり吸ったりするのは、羞恥心が緩いレイリもさすがに顔を赤くした。
「反抗的だな?ここはこんなに素直な癖に」
新調した下着を手のひらで感触を確かめるように触りながら腹回りにキスをすれば、レイリは擽ったそうに体をよじる。
「ああんっ、ふぁ…」
「観念したんじゃなかったのか?
ほら、どうする?
俺に暴かれるか、ペットのスライムに慰めてもらいながらひとり寂しく寝るか」
シュノの歯がリボンを噛んでくいっと解けない程度に引っ張る。
「……そんなの、シュノがいいに……
決まってるじゃない……」
泣きそうな顔で震えながら自ら脚を抱えて開く様子を見て、満足そうに笑うと、しゅるりとリボンを解いた。
「お前は俺のメスだとは言ったが、こんなに女みてぇなエロ下着で外歩くのやめろ。
お前、可愛い顔してる癖に腕力ないんだから連れ込まれる」
「はやく、会いたくて……
それに、帰ったら…すぐにすると思って……」
「………」
「それに……もし連れ込まれたら、助けに来てくれるでしょ?」
良くも悪くも自分の使い方というものをよく知っているレイリは、とろとろに蕩けた瞳で照れたようにふにゃりと笑って見せた。
可愛さや弱さというのもまた、レイリの武器だとシュノがいちばんよく知っている。
「嫉妬するレイリも可愛いけどな、俺はそうやって俺の手で蕩けた顔でオネダリしてくる方が可愛くて気分が上がるけどな」
レイリの下着を捲り上げて、そのまま勃ちあがったそれをレイリの孔に埋めて行く。
こんなに手の込んだお膳立てをしてあるなら、きっと中の方も準備万端な筈だろうと遠慮なく昂りを腹奥に収めて言った。
「やっ!そんな、いきな、ひぃあああっ!!!んっ、くぅん……あ、ふあっ」
いつ抱いても初物のようなキツさなのに中に収めてしまえばしっかりシュノを肉壁で包み込んでキュンキュン吸い付いてくる。
「やっぱりな。ちゃんと中までしっかり準備して抱かれる気満々だったんだろ?
なら次からはつまらない嫉妬はするな。
俺だって早くお前を抱きたかったんだから」
「はひっ、ん、んっ、ごめ、なさ……んぅっ、ひぃん!!
しゅの、もっとして…僕を、欲しいって、言って?」
必死にしがみつきながらレイリはシュノの律動に合わせて腰を揺らした。
「レイリッ、可愛いな、俺を欲しがってるのはレイリじゃないのか?
ほら…こんなに俺を締め付けて離さない」
ぐちゅりと奥を突きあげれば、背中を反らせながら体を震わせてレイリが先に果てた。
「メスイキしたのか?
俺の可愛いレイリは少しひとり遊びのし過ぎじゃないのか?」
「んっ、最近、スラちゃん達が……すごく餌を欲しがって、可愛そうだから……ひぃあんっ!!そんな強くとんとんきもちぃ…」
「へぇ?お前のペット達に中をいじられて精液搾り取られたのか?」
「ちがっ、いや……違くないけど…
シュノとは違う…」
レイリのペットのベビースライムは所詮小さな無害な軟体生物。
シュノの質量のある剛直で奥を突かれる快楽に比べれば、繁殖能力の無いスライムがレイリの胎内を無造作に動き回るのとは意味が違う。
精液はスライムの餌になったが、空っぽだから出ないと言うよりは身体をシュノによってメスにされているから出ないとレイリは言いたいのだが、シュノが自分に覆い被さり、自分だけが見る事を許された極上の笑みにシュノの愛を余すこと無くこの身に叩き込んで欲しい欲が溢れて蕩けた顔でレイリは、手を伸ばしてシュノに抱きついた。
「おかえりなさい」
大切に、大切に小さな体を抱き締めてキスで口を塞ぐ。
「ただいま、レイリ」
そのままキスをしながらレイリを深くベットに沈めて慈しむように頬を撫でる。
「だいすき、大好きだよシュノ
もっと僕だけを見て、愛して」
「こんなにお前だけを愛してるのに欲張りなやつだな。
今日は気絶するまで抱き潰すからな」
ギリギリまで引き抜いたソレを抉り込むかのように奥に突き刺し、レイリは悲鳴のように喘ぎながら身体を跳ねさせた。
「えっ、ちょ……それは、ひゃう!
だめ、そんな奥ッ…あっ、んぁあぁぁぁあぁぁあぁっっっ!!」
強すぎる快楽に目眩がして、頭がクラクラする。
そのままシュノがレイリの腰を浮かせて膝立ちになると、腰をがっちりと掴む。
体勢が不安定なレイリは、何をされているか理解出来ずにシュノを見上げる。
「もっと奥までぶち抜いてやるからな」
そう言って垂直落下する勢いに載せてレイリの結腸にまで先端を捩じ込ませ、それをまたギリギリまで引き抜いて結腸口まで落とすというのをひたすらに繰り返した。
「あ"あ"あ"ぁぁぁ!!!ひっ、う……
んっあぁん、んぅ、や…だめっ、ソレは、バカに、なるっ、ひぃぃん!!」
ぎゅぅっとキツくシーツを握りながら蕩け顔のまま涙を零していやいやと頭を振るが、シュノはお構い無しに結腸口を開いていく。
ズドン、ズドンと激しく重いピストンがレイリの腹を抉る感覚に、身体がメスの悦びを享受してシュノを離すまいと締め付ける。
その無意識の行為が更にレイリを快楽の底へと叩き落とす。
「いやっ、だめ。やだぁぁ!ごめんなさい!きもちい!おかしくなる、やだ、こわいっ!シュノ、シュノ!!」
「可愛い、レイリ。
その顔もっとみせろ」
レイリの意識は既に溶けて微睡みと快楽に飲み込まれてしまって理解は出来ないが、この世でレイリただ一人に許された極上の笑みを浮かべるシュノを垣間見た気がして、レイリも蕩けた顔でふにゃりと微笑んだ。

支配欲、というのはシュノの魂源を辿れば
備わっていて当然のものである。
しかしながら、シュノはそれが全方位に向かず、ただレイリ一人にのみ向いてしまう。
シュノはシュノなりの独占欲と嫉妬をしながらレイリを大切に愛している。
だからこそ、たまに行きすぎるほどに目に見える形で嫉妬したり、不安になったり、愛を示してくるレイリを愛しいと感じるし、自分の手で蕩けていくレイリを見ているのが好きだった。

「んっ、あっ……ふぁあん!」
腹を抉る心地よい律動に身を任せ、レイリは最早微かに悲鳴をあげるしか出来ないほどにとろとろに溶かされて、自分がどうなっているかさえ理解していなかった。
ただ、腹を抉る凄まじい快楽と、暖かに注ぎ込まれる愛欲に身を任せている。
「レイリ、気持ちいか?」
「ん、きもちぃ、もっと」
ハチミツをかけたパンケーキの様に、甘くて幸福な時間を手放したくなくて、頭がカラッポになった様なまま、盲目的にシュノを求めた。
「シュノ、シュノ……」
それしか言葉を知らないみたいに、レイリはシュノを呼び続けた。
大きな青い宝石の様な瞳がシュノだけを映し、シュノの為に柔らかく揺れる。
性格も、属性も、何もかも正反対な二人がこれほどまでに強烈に、深く求め合う事こそ運命といえる。
「ああ、俺はお前の為に存在してるんだから。
俺以外の男に現抜かすなよ、あとアイツに噛み付くのもダメ」
グイッと身体を抱き起こして深く繋がると、小さな身体をきつく抱きしめる。
「あぁんっ、ふぁ…ん、ごめ……ひぃうっ、な、で……おっきく…?」
「抱き潰すって言ったからな。
お前が俺の言う事聞かないで俺以外の男に構った罰」
抱き締められ身動きが取れないまま、キスで口を塞がれ腹を抉られながら、レイリは少しでもシュノの機嫌をなおすために甘える様に縋るしか出来なかった。
腹の中に溜まる愛液を感じながらも、酸欠と快楽の暴力でレイリの意識は途切れる寸前なのだが、身に宿る女神の力とシュノの力強いピストンに意識を手放す事も許されない。
まるで快楽の拷問にでも合っているようなのに身体の芯まで幸福で満たされる。
ついに自力でシュノに捕まることも出来なくなったレイリをベットにうつ伏せに寝かせ、枕を抱かせて苦しくない体勢を取らせる割にはシュノは手加減も遠慮も無くレイリを貫く。
結腸口に先端が埋まり、中に出され続けた精液が溢れてレイリの太ももを濡らしても構わなかった。
喘ぐ気力も無く、呼吸だけで精一杯なはずのレイリも意識を手放す寸前までシュノを求め締め付けるのを止めなかった。
「はぁっ……レイリ…」
最後にレイリの顔を見ようと体勢を変えれば、最高に蕩けた笑みを浮かべるレイリが愛しそうにシュノの頬に手を伸ばした。

『あいしてる』

もはや音の出ない吐息で告げると、シュノがレイリの中に最後の精を放つのと同時にパタリと腕がベットに落ちてグッタリと意識を手放したレイリが眠っていた。
「これからは変な嫉妬なんかする暇なんか与えてやらねぇから、覚悟しとけ」
気絶したレイリの頭を撫で、額にキスをしたら身体を綺麗にしてパジャマを着せる。
泣き腫らした目が赤く腫れぼったくなっていて、こうなるとレイリは朝まで何をされても目覚めはしない。
眠っている身体を好き勝手に抱こうが、耳元で抱かせてやると唆しても指先どころか眉ひとつ動かさずに深い眠りに落ちていた。
シュノの愛欲をその身に受け止め、限界すら超えて身体の隅々まで愛で満たされる幸福の中、レイリは甘い夢を見ているのだろう。
時折シュノを呼ぶ小さな寝息が耳に心地よくてシュノもまた、小さな体を抱きしめて甘い夢に落ちていくのだった。

スミレの人 2

小屋を出たシュノを待っていたのは、小さな人間との邂逅と再びの殺人だった。
それが妹で、家族と呼ぶ相手だったと知ったのは、村から遠く離れた旅の道中でだ。
文字の読み書きが出来ず、そもそも言葉を多くは知らないシュノに他人は知識を与えた。
シュノの生まれた村がかなりの寒村で、閉ざされた場所だった事を知ったのもその時だ。
年の半分近くを雪で深く閉ざされる、そんな場所だった。
白く、全てを塗りつぶしていくものが雪なのだと。
勿論他人のそれは親切などではなく、シュノの美貌に絆されての事だった。
年端もいかない少年、とシュノを呼ぶ他人が、多くは女が、時に男がシュノを寝床に誘った。
あわよくば、既成事実を作って囲って貰おうとして。
シュノは見た目、儚さの残る少女な面立ちと男になろうとする身体の両方を持っていた。
均整の取れた体躯は成長の邪魔にならない程度に筋肉が付いていて、知識を応用する頭も持っていた。
だから大人と呼ぶそれらが、女が、シュノに惚れたり抱かれたいと願うのも当然の事。
一度だけ商売女らしい女と寝所を共にしたが、とくに惹かれたりはしなかった。
生理現象ならば一人で十分。
他人の体温に嫌悪感を覚える質なのだと知れただけ上々。
元々流れ者の旅人なので、その日のうちに街を移った。
よくある事だった。
唯一違ったのは、商人等が使う道を歩いていたら首襟を掴まれ、視界が流れる速さで森の奥へと引き込まれたことだった。
相手は女で、口元にニヤニヤとした笑みと、苛ついた歯ぎしりを同時にする緑に黒が混じった髪をしている。

「カッカッカ、やっと見付けたぞ? 随分謳歌しておったようだなぁ。己が何かも知らぬ癖に、己が何かも知らぬからこそ」
「……そういうアンタは何だ? 人間だとしたら呪われてるのか」

随分と場違いなほど明るくからかい蔑む黒緑のそれに、シュノは眉を潜めた。
緑と黒の髪が半々、なんて可愛らしいオシャレではない。
元が緑の髪の毛を黒がにじみ、侵食し、決して混じらず刻一刻と全体の印象を変える。
これが完璧に別たれた色だったなら、呪いなどと思わなかったろう。

「ほう、ほうほう? 呪いとな、いやはやまさにそれよ。我が身に巣くうのは堕神の毒でな、本来のワシの有り様さえ思い出せず、覚えて居らず、果たせぬ状況よ」

はあやれやれ、と仕方の無い子に説き伏せるように、それは言う。
声を聞くと普通のそれの筈なのに、鋼が擦れた様な微かな異音が耳障りだ。

「んん、お前様、のうお前様? お前様は自分が何かを知っているかえ? 勿論しらなんだろうな、うむ。ワシと共に来るならば、教えてやろう」

一息のうちにそこまでを言い切り、未だ己が土の上に腕を捻って拘束しているシュノに対して目線で問いかけた。
無論、答えは――。
カレンダー
<< 2024年05月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31