カカサス50音SSS 『は』


近頃のサスケは、酷く不安定だ。
もともと表面上は強がりながらも、内面では不安や焦燥を常に抱いていた事を、カカシは誰より知っている。
けれど、今は他の者が見ても分かるくらいにサスケは苛立ち、より他者との壁を作っていた。

「寝てる時でさえも、お前は‥‥」

ベッドの隣で静かに寝息をたてるサスケはどこか苦しげで、やるせない気持ちになる。

『もう頭は冷やせたか?』
『‥‥何の用だ』
『もう遅い。ウチにおいで』
『説教ならお断りだ』
『しないよ。それはサスケが考える事だからね。話したいと思った時に、俺を頼ってくれればそれでいいよ』
『じゃあ何で‥‥』
『一緒にいたい、じゃ、理由にならない?』
『‥‥このウスラトンカチ』

そうしてサスケを半ば強引に言いくるめて連れて来たが、宥めて寝かせるのも相当無理矢理だった。

『まだ電気消すなよ。これ読んでるんだから』
『これ以上の無理はダメだ。今日はこのまま一緒に寝なさい』
『わっ、ちょ‥‥ッ!抱きしめるなんて卑怯だ‥‥』

今となっては、サスケを癒したい反面、離れる事への恐れから側に居させようとした己のエゴが強かったと反省している。
けれどやはり心配で、少しでも気持ちが休まればと思ったのも本当だ。
何せ、サスケの気分の波はプラスに触れることなく、常にマイナスの低い所で揺れている。
そこに少しでもサスケの過去に関する事が触れれば、我を忘れるほどに、一気に波は下降する。
それは今日の任務も例外ではなかった。

「今はこうしてすぐに手が届くのにな‥‥」

サスケが力を求め里を去るまで、そう時間はないだろう。
実現しなければそれに越したことはないけれど、こういう嫌な確信に限って外れてはくれない。
そうなればサスケは里にとっての危険因子となるのに、どうしようもない程に愛おしくて仕方ない。
けれど、この先この手を離れ、一人孤独に闇へと身を投じ、苦しみ、自らを追い詰めていくのかと思うと、無意識にその細い首へと手を伸ばしていた。


『離れてしまうのならば、いっそ、その息の根をこの手で――』


――けれど結局それが出来ないのは、甘さからか、隣に戻って来ると信じているからか。


Fin.『は』
Next→『ひ』

アニメに合わせ、サスケ回復から里抜け前の間に少し期間があった設定でした。
気持ち的には先週のアニメのその後を意識してみましたが。
書いてみたら想いのほかカカシ先生が病んでるみたいになってしまったような‥‥