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『や』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『や』


「じゃあな、カカシ“先生”」

出ていく時にソレを強調するのは、師弟の関係にとどめ続けようとするサスケの意思表示。
本来恋人同士が行うべき営みをしながらも、そんな微妙な関係が続いていた。


けれど。
それは一つの出来事を機に、変化が訪れる。
波の国での任務にて力のなさを痛感したサスケは、ついには感情をこらえられず、俺のところに訪れたのだ。

「‥‥‥―――ッ!!」

胸を貸したら、声にならない叫びを上げたサスケ。
ああ、この子と師弟という枠を越えられるなら、力強く抱きしめてやりたい。
たとえそうでなくとも、そうしたい。

「サスケ、好きだよ」

想いは巡り膨らみ、感情を隠しきれなくなった。

「はっ‥‥な、んだよ、それ‥‥」

こんな時に言うなんて、全く狡い大人だと自分でも思う。
けれど、叶わない想いならば、こんな時にしか伝えられないだろう。

「こんな場に流されるなよ。‥‥‥俺は‥‥俺は、アンタとの距離を必死に、保ってきたんだぞ!?」

え?
それは、つまり――。

「‥‥‥‥‥それは、サスケも俺のことが好き、ってこと‥‥だよね?」
「‥‥ッ!!き、聞くな!!ウスラトンカチ!!」

真っ赤にして言うサスケがあまりにも可愛くて、そして思いが叶っていたことに嬉しくて、気づいたら抱きしめていた。
痛いとか苦しいとか言われたけれど、互いに本心を伝えサスケの表情が元に戻ったこともあり、感極まって腕を緩めることは出来なかった。


『やっとの事で、報われた想いだから』


――そう簡単に手放してなんかやらないよ。


Fin.『や』
Next→『ゆ』

『も』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『も』

ぎゅう。
今のカカシの行動を音にするなら、まさにそんな所だろう。
サスケの身体を抱きしめると落ち着く。
もっと一緒にいたい。
こんな甘ったるい感情が、自分にあったなんて知らなかった。

そんな、曇が広がる昼下がり。

一方のサスケはというと、夕飯の買い出しが心配らしい。

「雨が降って出掛けられないかも」
「そしたら、二人で傘を差していこうか」
「もし売り切れてたらどうすんだよ」
「大丈夫。隣里まででも買いに行ってあげる」

心配を盾に、腕の中で甘えることを拒んだサスケも、ここまでくると観念したかのように、ため息を一つ。

「‥‥アンタには負けるよ」

ふわりと、サスケが身体を預けてくる。
それが幸せで、幸せで。
今をかみしめるように、力強く抱きしめた。


『もしもの世界を考えるより、今を大切にしていきたい』


――君がいるのは、まぎれもないこの世界なのだから。


Fin.『も』
Next→『ら』

『め』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『め』


二度目の亀裂は、一度目のそれよりも大きな爪痕を残すものだ―――。

「サスケ‥‥」

強く見られがちなこの子は、本当は脆くて危うい。
木に縛り付けて説教、なんて柄にもなく焦ってやってしまったけれど、サスケには更なる重みを与えてしまっただけではないかとさえ思う。

だからこそ、会いに来た。
何が言えるかも、分からないけれど。

「‥‥何しに来た」

サスケからの第一声で、この先の彼の思いさえも分かった気がした。
けれど気付かぬふりをして、今は話をしたいと思った。

「さっきは‥‥すまなかった。お前に伝えた想いは変わらないが、少し、やりすぎたな」
「‥‥それでも、アンタはアンタだ」

一見、カカシの方法を認めているような言葉。
だったら嬉しいと思った。
本音を言ってしまえば、出来ることならサスケには、復讐などせずに、どうか、側にいてほしい。
合間見えた本音から、不意に、安易な言葉が出た。

「サスケはちゃんと、強くなれるよ」

本当は、サスケの言葉はカカシの存在を肯定しているだけであって、決して受け入れたのではないと気づけずに。

「‥っ、‥‥‥‥‥かよ」

俯いたサスケは、必死に堪えながらも力にうち震えているようだった。
次の瞬間には、顔を上げて叫びにも似た悲痛な、声。

「力与えてくれたくせに‥‥こんな中途半端なまま‥‥俺を反対するのかよ!」

(違‥‥俺、カカシにこんな事、言うつもりじゃ‥‥)

揺れ動くなかで溢れ出た感情を止めることなど、サスケにはできなかった。

だから、言葉を吐き終えるた時、サスケ自身が一番、言った事に驚き、傷ついた表情をしていた。
気まずそうにカカシから視線も顔も逸らすと、サスケは足に多量のチャクラを込め、全速力で駆け去っていった。

追い掛けようと思えば出来たけれど、それは則ちサスケに復讐のための力を与える事への同意を意味し――だからこそ、カカシにはこの場から動く事さえ出来なかった。



『目指す先がどんな未来でも、僕だけは君の一番の応援者でありたかった』


――けれど失う君は、本当は見たくなんかないんだ。


Fin.『め』
Next→『も』

『む』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『む』


「そんな事でいちいち俺に構うなよ」
「サスケ‥‥」

カカシに呼び出され、任務を終えた後に部屋に訪れた。
何事か思えば、任務中に負った俺の怪我が心配だというだけ。
ただのかすり傷なのに。

「それだけなら、俺はもう帰る」

その程度の事なんて、どうでもよい。
必要の無い心配で構われる時間があるならば、それは修業にあてるべきだ。

「じゃあな‥‥、っわ!?」

背を向けて去ろうとした瞬間。
後ろから抱き寄せられた身体が、カカシに包まれる。

温かくて、甘くて――

「サスケが納得してくれなくてもいいから、少しだけ、こうさせてよ」

――少し、淋しそうで。

(そういやカカシ、この間誕生日だったんだっけ‥‥)

先日の、連日にわたる任務中にカカシの誕生日は過ぎ、何も祝ってなかった事をふと思い出した。
サスケの誕生日には、カカシがお節介なほど祝ってきたが、それはカカシがしたくてした事で、同じようにする必要はないと思っていた。
何もしないというのも素っ気ないが、焦りが募る昨今、そんな余裕もなくなっていた。

「‥‥‥10秒だけだ」

とはいえ、無理に引きはがす事もできなくて、提示したのら僅かな時間。
これを肯定と受け取ったカカシが、まるで体温を共有するみたいに、より強く抱きしめてきた。
これ以上気を許したら、その体温に安心を覚えてしまいそうだ。

(でも、早く、修業、しないと)

修業のための大切な時間を無駄にしたくないと思う一方で、何故かこの時間も手放したくない、そんな違和感を覚えた。


『無駄な時間なんてどこにも無かったと、その時には気付けないものだから』


――数年後の僕が、この時間をひどく愛おしく想う事にも、気付く事は出来ないのだ。


Fin.『む』
Next→『め』

『み』  (カカサス50音SSS)

カカサス50音SSS 『み』


愛などいらない。
寒くなったなら、体温だけ共有すればいい。

ずっと、そうして生きてきた。
カカシにも、例外ではなく。
“付き合う”とは名ばかりで、俺の心は微動だにせぬまま、カカシとの関係を持っていた。

「サ、スケ‥‥?」

だから、普段甘えるなんてしない俺が、カカシの部屋に入るなり抱きついた事は今までになくて。
俺からの初めての行動に、カカシは驚いているようだった。

「9月‥‥アンタの誕生日があるんだろ?」

カカシの胸に顔を埋め、遠慮がちに問いかける。

「そう、だけど‥‥」
「だから、たまには、アンタのために何かしてやろうと思って」

悪戯。
ただ、普段澄ました顔の上司を驚かすためだけの行為。
共有するのは熱だけで、心なんていらない。
俺の心は、いつだって凍りついたまま。
それでいい。
復讐に温もりなんていらないのだから。

(ただ、何となく思いついたからやっただけだ)

そのはずだったのに。
振り返ったカカシの表情に、胸がざわついた。


『見たことも無いようなアホ面は、それでいてこれ以上にない笑顔だった』


――コイツは俺の心を掻き乱す。なんてズルい奴だろう。


Fin.『み』
Next→『む』
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