カカサス50音SSS 『て』


サスケを、怒らせてしまった。
未来への希望を一夜にして断たれた事は、彼の中に『今』への執着を生んでいた。
復讐への焦りも、それを助長させているのだろう。
サスケの部屋は既に暗く、夜の静寂と共に消えそうなほど儚く感じた。

「‥‥何だよ」

勝手に入って来たことを咎めないのは、理由が分かってるからだろう。

「ごめん」
「何が」

謝りに来た。
肩まで薄いタオルケットをかぶって寝ようとしていたサスケに、ただ、謝りたかった。

「サスケの事、ちゃんと考えてなかったね」
「‥‥‥別に」

眉を潜めた、気がした。
本当は暗くて良く見えやしない。

「でも、今を必死に頑張ってるのは、この先への不安があるんだろ」
「‥‥」

否定がないのはつまり肯定と同じだ。
未来に不安になって、今に依存して。
そんなのは、ただ自分自身を追い詰めるだけだ。

「だから、さ」

少しでもサスケが、他者を頼れるように、未来への不安が少なくなるようにと気持ちを込めて。
静寂の暗闇の中に、言葉という名の光を燈した。



『手にしたこの幸せがいつまでも続くように、二人で築いていこうよ』

――未来なら、二人で築いていけばいい。


Fin.『て』
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